3.(卵)
「このままじゃ、その日暮らしで一生が終わってしまう。何とかしなくては・・・」
ランプの明かりが薄暗い室内でどかっとあぐらをかき、パンにチーズを載せて、生のままばくばくと頬張るとそう独り言つ。
俺は何か良い考えを頭から捻り出すために、夜の町を散歩でもして涼しい風に当たって頭を冷やし、
頭を回転させようと思い立った。
「異世界といえど、ここじゃあ俺が住んでいた世界と同じように投資の場がある。
それを活かさない手はない…しかし何か仕掛けようにもあまりにも持ち金の資産が少ないしどうしたものか」
そうぶつぶつ呟きながら、あてどなくすっかり暗闇に包まれた外の世界を徘徊して行った。
そうこう夢中で考え、歩を進めているうちにいつの間にか町の外れの森の奥まで足を踏み入れてしまっていた。
「ま、マズイ・・・いつの間にかこんなところにまで…
この一帯は確かモンスターの出現レベルが高い筈・・・俺じゃ太刀打ちできん…早くもと来た道に戻らないと。」
冷や汗を額に浮かべ、慌てて足を翻そうとする。
しかしその直後、森のとある一本の樹木の根元に生い茂る低木から沢山の白い「あるもの」が見え隠れするのに気付き、
そっと葉を掻き分けた。
そして白いものの正体の視認が出来ると、閃光のようにある考えがひらめいた…
「これだ…!!!」
俺は欣喜雀躍して、モンスターに遭遇する恐れすら忘却し、急いで住まいへと走って帰っていった。
翌朝、公国図書館の開館時間が迫ると、駆け足で向かう。
急いで図書館の一角のコーナーに向かい、立ったままとある図鑑の一冊を手に取り
パラパラと頁を捲った。
お目当てのページを探し出すと視線を落として、ニヤリと大きく不敵な笑みを浮かべた。
「やはり俺の記憶に間違いは無かった…あの卵は間違いなくグリーンドラゴンの卵だ…!!」
俺はこの世界の知識を得る為、足しげく図書館に通い書物で情報収集もしていた。
その時にモンスター図鑑でちらと見たグリーンドラゴンの卵と
昨日の夜に森の木の茂みで発見した大量の卵が符合したのである。
グリーンドラゴンは、ドラゴン族の中では最下級といえど、腐ってもドラゴンであり
出現率も低くその魔石は貴重で、かなりの相場の値段を誇っている。
現在確か一つにつき1000万ほどだ…
しかし、だ…
もしグリーンドラゴンの卵が大量に存在していることが明るみになれば、その相場は一変する。
希少価値は下がり、相場の値段が暴落することは明らかだ…
この事実を知っている者は数少ないことだろう…もしかすると俺だけかもしれない。
何故ならば、本当に明るみに知れ渡っているのならば今の相場の値段を保てるわけもないからだ。
しかし…このヤマは一人で行うには規模がデカすぎる。
協力者が必要だ…。
俺は図鑑を棚に戻すと、早足で図書館を後にし、街から少し外れの広い河原へと向かった…