13.(討伐へ)
夜になり目を開くと、袋をしょって一目散に町外れの森の入口へと向かう。
さすがにもう何度も往来しているので、迷うことは無い。
すぐさまミリシャの居る木の茂みの箇所へと辿り着いた。
ミリシャがこちらに気付き、不思議そうに視線を向ける。
「どうしたんだ、そんな大きな嚢なんか背負って。差し入れでも大量に持ってきてくれたのか?」
ミリシャの質問を無視し、俺は大声で言った。
「ミリシャ!急いでグリーンドラゴン討伐に向かうぞ。すぐに支度をしろ!」
ミリシャは呆気にとられたような表情をする。
「いきなり、どうした?訳が分からんぞ。」
「詳しく説明している暇はない! とにかく現物差し入れの為に、3日以内にドラゴンを退治して
魔石を手に入れなきゃならん。ドラゴンの出現する北のフォルク山へ今から行く!」
俺は袋の中から、リザードバスターと青銅の盾を取り出すとミリシャへと手渡した。
「これを装備しろ。勿論報酬は後払いだが、相応に支払わせてもらう。」
「現物差し入れの言っている意味がよく分からないが、報酬を貰えるんならいいだろう、引き受けた。
しかしドラゴン退治とはなかなかの大仕事だな。久々に腕がなるな…」
ミリシャは手渡された剣と盾を装備すると両手をバンと合わした。
俺とミリシャは森を抜けて、急ぎ足でフォルク山へと北へ向かう。
とにかく俺は焦っていた。強制決済のタイムリミットまであと3日しかない…
夜が明け、辺りが白み始めたころ、ようやくフォルク山のふもとへと到着した。
「ゼエッ、ハァッ、結構辿り着くまでに時間食っちまったな。」
俺は息を荒げた。
「ドラゴンの出現するこの山の頂上まであと少しだ、頑張ろう。」
ミリシャは腰に差し入れた剣に手を遣って位置を調整しながら言った。
フォルク山の頂上までのルートは舗装が行き届いており、幸いに一本道で登っていけそうだった。
山を登っていく道中で俺はミリシャに話し掛けた。
「実際どうなんだ?グリーンドラゴンはお前の実力で、倒せそうなのか?…どの程度の強さなんだ?」
「強力なモンスターではあるが、ドラゴン族の中でも下級クラスだ。
知能はあまり高くなく行動は読み易い。
騎士団による集団戦ではあるが、もっと強力で知能も高いレッドドラゴンを討伐したこともある。
かなりの死闘にはなると思うが、何とか倒せる筈だ。」
「そ、そうか・・・それを聞いて安心したぜ。」
俺はその言葉を聞いて胸をなで下ろした。
「ああ、だが戦いは水物だ。どうなるか最後まで分からん…
しかしリザードバスターとは締まらないな。折角ドラゴンと戦うんだからドラゴンバスターでビシッと
決めたかったものだ。」
ミリシャは剣の鞘を撫でながらそう零す。
「贅沢言うんじゃねえ!・・・弘法は筆を選ばないって言うだろ?一流の戦士は武器を選ばないもんだ!」
俺は慌ててそう返し、ミリシャは苦笑を浮かべた。
そうこうしているうちに、いよいよフォルク山の頂上へと到達した。
見晴らしは良く、セルヌの町が遠くに一望出来る。
朝日がまさに昇ろうとしており、明け方の時分になっていた。
「ハッ…いやいや展望に見とれている場合じゃねえ。さてドラゴンはどこだ…」
俺は頂上の中央の開けた部分に行くと、辺りを見回した。