1.(斉藤 誠也)
「俺は死んでも働きたくないんだ・・・!!」
俺の名前は斉藤誠也。
自分には相場の才能があったのだろう、FXと株式投資で稼ぎに稼ぎまくり、
かなりの財産を得ることが出来た。
しかし・・・まだだ、まだ足りない。
俺は死んでも働きたくない。労働というのは俺の様な高貴な軍師タイプの人間には向かん。
あれは低レベルな人間の罰・・・そう、聖書にも書かれている通り労働とは
人類に課せられた罰だ。
そんな罰はご免だ・・・
要は一生ニートとして安楽に遊んで暮らしたい…!
しかし、そのためには一生遊んで暮らせるだけのカネが必要だ。
だから俺は投資を学び、底辺労働で嫌々稼いだカネを原資として
トレードの売買ゲームで増やしまくり、とうとう1500万円を昨年末に貯めることが出来た
そして昨今の円安トレンドを正確に掴み、円が1ドル=145円の時に大勝負を仕掛けた。
証拠金1500万円に海外FXで約100倍のレバレッジをかけ、14億5000万円!
ドルを14億5000万円分、つまり1000ロット分(※1ロット=1万枚)、買い建てしたのだ。
俺は円安がこのまま続き155円に達するだろうと予想していた。
たった10円上がった段階で全て売り払えば利益は1億円となり、
これでFireを成し遂げて、一生遊んで暮らせる目論見だった。。
そこまでの読みは良かった。ほぼ読み通りにその後上がっていったのだ。しかしだ・・・
1ドル150円前後に達したころに、よりにもよってFRBが日和やがった!!!
国内のインフレを抑制するために利上げを今後も継続するものと
俺は固く信じて疑わなかったのにッ…!!!
利上げを見直すとか言を翻しやがって、その後円とドルの金利差が縮まるとの予想により
一挙に円安は反転!140円近くにまで暴落してしまった。そのせいで多額の追証が発生してしまい
銀行のクレジットローンやサラ金や果てには闇金、あらゆるところからカネを借りまくり資金をじゃぶじゃぶ追加し、
ポジションを維持しようとしたものの、
その努力も虚しく強制ロスカットされてしまった。その損失は5000万円もに及んだ…
一生遊んで暮らすどころか、何十年も働かないと返せない借金だけが残ってしまったのだ。
投資の損失には自己破産も適用できない。
俺は絶望した。働くのが何より嫌だったのだから。
そして働くくらいなら死んだ方がマシだ!とその時強く思い、そして文字通りそれを実行した。
ビルからの投身自殺や電車への飛び込み自殺は大勢の見物人どもの人目につくのが断固嫌だったので、
俺はとある人気のない山へとひっそり入った。そこから少し奥へ進んだ場所に澄んだ川があっ
た。
川の少し先の流れが進んだところは海に続く急峻な濁流となっている。
川へ溺れて自死する。これが一番マシで、楽に行けそうな死に方だと思った。
「水も滴る」良い男だという皮肉をもって最後を終えたかったという目論見もある。
俺は濁流に飛びこむと首尾よく意識を無くし、逝くことが出来た…
これでもう俺は借金からも労働からも逃れられる!
働くくらいなら死んだほうがマシだ!を言葉通り実行できて満足そうに溺れながら意識をなくしていったのだ。
の、はずだったのに・・・。