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天使猫  作者: 冴條玲
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天使猫

 天使猫。

 それは、幸せに生まれた猫。


 みなさんは、『猫の幸せな生まれ方』って、どういうものだと思いますか?


 保護しなければならないほど、劣悪な環境に生まれた猫(保護猫)は天使猫ではありません。

 ペットショップの猫は不幸だって、みなさん、生体販売には反対だって口を揃えますので、ペットショップの猫も天使猫ではありません。


 猫飼いの多くが猫を保護するか、保護猫をもらうか、ペットショップで購入するかして猫を手に入れたはずですが、いずれも、幸せに生まれていない猫ということになります。


 令和の日本では、猫が幸せに生まれることができなくなっているのです。

 この事態を憂慮し、昭和の当たり前だった天使猫を復活させるべく、猫仙郷が立ち上げたのが『君が代プロジェクト』(天使猫団体)です。


 そう、昭和の猫の多くは幸せに生まれていたのです。

 生き物の幸せとは子孫繁栄であり、とりわけ、猫は食物連鎖ピラミッドの頂点、少数精鋭を運命づけられた肉食獣ですので、繁栄すればこそ殺処分が増えました。

 ここで、猫が生まれないようにして殺処分を減らそうとする保護猫団体が登場し、SNSの普及で多数決教が急激に狂信者を増やした影響もあり、あたかも一神教のごとき保護猫団体の考え方が唯一無二の正義として、大多数に信じられるようになってしまったのです。


 すべての猫の繁殖を禁止して、絶滅に追いやることが保護のはずはない。

 こんな当たり前のツッコミすら許さないところが、保護猫団体の一神教的なところです。


 天使猫団体と保護猫団体の目的は本来、一致しています。


 幸せな猫を増やし、不幸な猫を減らすこと。


 それにも関わらず、保護猫団体の出方によっては、両団体は敵対することになるでしょう。

 目的は同じでも、優先順位(手段)が真逆であるために。


 保護猫派は「幸せな猫まで減るとしても、不幸な猫を減らすことが正義」だと信じて感情的に活動します。

 天使猫派は「不幸な猫まで増えるとしても、幸せな猫を増やすことが猫のため」だと信じて理性的に活動します。


 保護猫派は猫を減らそうとする、天使猫派は猫を増やそうとする。


 天使猫派は『猫の幸せのかたち』の多様性を重視する、多神教的な価値観を持っています。

 ですので、天使猫派が、猫を減らそうとする保護猫派を否定し、潰そうとすることはありません。

 疑似的な自然淘汰のためには、保護猫派が天使猫派の10倍は必要だとさえ考えています。

 

 ですが、保護猫派の方は、自分達が減らそうとしている猫を増やそうとする天使猫派をして「敵だ! 叩き潰せ!」と、憎しみの感情に任せて否定し、潰そうとせずにはいられないのではないでしょうか。

 感情的でも独善的でもない人々が、猫を絶滅させることが保護だなんて極論に行きつくとは思えないのです。


 ただ、これまでは天使猫という考え方、『君が代プロジェクト』が存在しなかったからこそ、違和感を感じつつも猫のためと信じて保護猫活動をしてきた方、いらっしゃいませんか?

 すべての猫の繁殖を禁止するのと、すべての猫の繁殖を推奨するのは、過ぎたるは及ばざるがごとし、どちらも間違いだと理解できる知能と理性を備えた方、いらっしゃいませんか?


 保護猫活動は手段をあまりにも間違えています。

 今のままでは、これから、雨後の筍のように多頭飼育崩壊が増えるでしょう。

 まともな真の猫好きなら、繁殖を禁止するなんて許されない虐待だと気がつかずにはいられない。

 そうした人々が、猫を繁殖する人をバッシングする風潮が出来上がってしまっている令和のSNS社会の中で、どうするかと言ったら。

 誰にも知らせないまま、完全室内飼いが推奨されていることを逆手に取って、密室の中で多頭飼育崩壊を起こすのです。

 やった者勝ち、多頭飼育崩壊を起こしてしまえば、猫に罪はないとか言って、保護猫団体があとはなんとかしてくれるのだから。

 多頭飼育崩壊が増えすぎて、どこもキャパオーバーの現状は、保護猫団体が自ら招いているのです。

 猫を幸せにする(子孫を残す)手段をすべて封鎖しては駄目なのですよ。



 天使猫派は『種の保護』を、保護猫派は『個の保護』を、それぞれ目指しているとも言い換えられます。

 愛猫家のみなさんが、本編で解説する『個の保護の弊害』と『種を保護するために必要なこと』を正しく理解し、忘れ去られた『猫と人が真に共存共栄する世界』に回帰することを、願ってやみません。

 新しい、未知の世界などではありません。

 昭和や戦前の方がよほど、猫と人は真に共存共栄してきたのですから。



 最後に、人による『個の保護の行き過ぎ』がため絶滅の危機に瀕しているのは猫だけではないことを、ここに指摘しておきます。

 令和日本が絶望的な少子高齢化のただなかにあることは、みなさんもご存知の通り。

 『ネズミの楽園実験』(ユニバース25)によって示唆された絶滅の途に、令和日本の猫も人も既に就いているのです。

 あたかも、日本を舞台にしたユニバース25の再現実験、猫を使った動物実験と並行で、日本人を使った壮大な社会実験(人体実験)が既に始まっているかのような、終わりの日の世界の様相です。

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