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98 撮影 ②

 殴られたことによって警察沙汰にしようとするマネージャーだが


「ちょっ!ちょっと!…すいませんっ!!」


ようやく口を開いた美緒。

急いで駆け出すと勝也の前に現れ


「ごめんなさいっ!ウチのマネージャーが失礼な言い方…」


「なんで謝るんだっ!こっちは殴られたんだぞ!」

「あんな言い方したら誰だって気分悪いでしょ!こっちがお願いしてるのにっ!」


「ああっ!?誰だテメェはぁっ!!」


「……え??」


この人が西野 美緒だと気づいていない勝也の方が注目を浴びてしまう。


「すいません…さっきトイレの前で体育館の場所を教えてもらった者です。あの…今日は無理を言ってこちらの学校を撮影でお借りする事になって…その…」


「んな事聞いてんじゃねぇんだよ!!そいつの知り合いなのかって聞いてんだ!」

「は…はい…あたしのマネージャーです…」


「どけぇ!そのゴミクズだけは今すぐ殺す!!」


「なんだとぉぉっ!このガキ!」


言い返してきたマネージャーに勝也のリミッターは完全に外れた。

だが次の瞬間


 バッチイイィィィィィン!!!!


突然前に立ちふさがった優奈の張り手が勝也の頬に炸裂する。


「もう終わりぃぃっっ!!」


あまりの驚きに教室内はシーンとした。

そしてなんと勝也の動きまでも止まった。


康太達が3人がかりで抑えきれなかった勝也をビンタ1発で止めた優奈。


「…もういいよ。あたしは大丈夫、なんともない」


口答えする事なくその動きを収めた勝也。


マジギレしたこの男をこんな止め方で抑えられるのはおそらく世界中探しても優奈しかいないだろう。

そしてクルッと美緒の方を向くと


「申し訳ありません。彼はこんな人なのでおそらくあなたの希望に沿う事はできません。どうしてもその役が必要なら他の人を当たってください。それからもしそちらのマネージャーさんが本当に警察を呼ぶとおっしゃるんでしたらご自由にどうぞ。その時は私もその前に腕を掴まれた事に対して被害届を出させてもらいますので」


鋭いまなざしで美緒の目を見つめ冷静に且つ淡々と言葉を続ける優奈。

それは恐ろしい程の威圧感で『勝也を守る』ための言葉だった。


騒ぎを聞きつけてロケ関係者や学校関係者が続々と集まり、美緒やマネージャー、そして勝也と優奈も教室から連れていかれた。


静まり返った教室で乱れに乱れた机や椅子を直しながら


「マジで怖かった……」

「あんなキレ方するんだ…」


「ヤバかったよ、3人がかりでも抑えきれないぐらいすっげぇ力だったもん」


口数も少なくみんな黙ったままで席について待っていた。


結構な長い時間待機させられていたところへガラッと扉が開く。


入ってきたのは担任と、その後ろからは優奈一人。

担任は教壇へと進み優奈はそのまま自分の席で荷物をまとめ、それから勝也の荷物もまとめた。


「え…帰るの?」

「…………」


「どうなったの…勝也は?」

「…………」


ギラッとした視線は誰に向ける事もなく、だが返事をかえす事もない。

ただ黙って荷物をまとめる優奈だったが


「警察沙汰にはしないという事で話はついた。松下は……停学だ」


担任からの報告に驚きのあまり言葉を失う。


「…はああああぁぁぁぁぁぁぁっっ?!?!」


「な…なんで勝也が停学になんだよっ!!」


「先に手ぇ出したのはあっちじゃんっ!!」

「大体元々はあんなエラそうな態度で言ってきた向こうが悪いんだろっ!」


「だが向こうはケガをしてるからな。通報しない代わりにそれが条件だそうだ」


「けどこっちだって優奈が…」


友人達が必死に問い続ける中、両肩に自分と勝也の荷物を持った優奈は無言のままで


 バァァァァン!!!


と、大きな音を立てて扉を開け教室を出ていく。

今度は優奈がマジギレの様子だ。


するとそこへ


「あっ!…あの!!」


その廊下に美緒が立っていた。

恐ろしいほどの冷ややかな視線を向ける優奈。


「…まだ何か?」


「あの…すいません、あたしたちがこちらへお邪魔したばっかりにこんな事に…」

「いえ別に…急ぎますんで失礼します」


「あの!松下さんとお話しさせてもらえないでしょうか…」


「…今は誰とも会話するのは無理だと思います」


「せめて謝罪だけでも…」

「悪いのはあなたじゃないでしょう。余計に怒らせるだけだと思いますよ?」


「それでもどうしても…」


美緒の顔は本気で謝罪しようとしている表情に見えた。


「どうして彼だったんですか」


「…え?」

「わざわざ探し出してまで勝也を出演させたかった理由は何だったんですか?」


「…話すキッカケが欲しかったんです…あの人なら私が芸能人だとか関係なく普通に接してくれる気がしたからです」


「…え?」


それから美緒は撮影前にこの廊下で勝也に会った事、その時に普通の在校生だと思われた事、そして不愛想ながら道を教えてくれた事などを話した。


「もちろん素直にカッコ良かったっていうのもありましたけど…でもなんか『見た目とか先入観とか関係なく本音で話してくれそう』な気がしたんで」


「…凄いですね」


「え?」


「あなたの見る目は間違ってないですよ、その通りの人です。まぁおかげでたまにこんな大変な事とかも起きちゃったりするんですけど」


「…あなたの彼氏さんなんですか?」

「はい」


「やっぱりそうでしたか…そりゃ当然彼女いますよね」


「ごめんなさい、彼だけは誰にも譲れません」


廊下でのこの2人の会話は教室内にも聞こえていた。

あの西野 美緒が勝也に一目惚れしたという。


友人達は顔を見合わせ


「なんなの勝也って…」


「俺達と何が違うってんだよ」

「いや…全然違うと思うけど?」


「そんなハッキリ言わなくても…」


「…確かに勝也は僕達とは違うよ。あいつは余計な事なんか何も考えない。ただひたすらベースと安東さんの事しか頭にない。だから本能のままにあんなに夢中になったりあんなにキレちゃったりするんだ。…素直過ぎるオーラが全身から出てるんだと思う。それが人を惹きつけちゃうんじゃないかな」


呟くような岳の言葉は全員が納得するモノだった。



 その翌日…学校では異常な事態が起こっていた。


なんと全校生徒が誰一人登校してこないのである。

教師たちは慌てて生徒の家に連絡をし始めるも、返ってきた返事はみんな揃って『勝也の停学に対する抗議』だという事だった。


JUNCTIONのメンバーから話を聞いた耕平と沙耶が2年生に、そして芽衣から事情を聞いた樹生が1年生に連絡を廻しそれに賛同する者を募ったところ、全員がそれを表明した。


事態を重く見た学校側は美緒の所属する事務所に連絡を入れて勝也の停学処分を撤回する旨を伝え、納得しないのなら優奈への暴行に対してマネージャーに同等の謹慎を要求した。


結局勝也に登校許可が出たのはその日の夕方だったが…そこから全校生徒への伝達に教師たちは走り回り、夜遅くまでかかってようやく終息したのだった。


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