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96 濡れ衣

 ある月曜日、コソコソと千夏が教室をのぞき込み何かを確認してから入ってきた。


「…みさ!……みさってば!」


囁くような声で呼んでくる。


「ん?あぁおはよ。…何、忍者の真似?」

「んなわけないでしょ!ちょっと…いいからちょっと!」


周りに気づかれないようにみさを呼び出し廊下の端っこまで手を引いて連れていく。


「なんなのよ」


「今日ってまだ優奈達来てないよね」

「まだみたいだけど…どうしたの?」


「あの…さ、多分なんかの間違いだと思うんだけど」


「なに?はっきり言いなよ」

「ん~…えっとその…3組のコから聞かれたんだけど…あの…」


「だからなにっ!!」


「優奈と勝也って別れたの?って」


「は?なんで」

「それが…あのね」


みさの耳元でコソコソと囁く千夏。

それを聞いて


「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ????????」


「いや、そんなはずないと思うんだけど…絶対勝也だったって…」

「そ…そんな訳ないでしょぉ?!勝也がそんな…」


「わかってる!あたしだって…でも…」

「大体別れてもないのにいくらなんでも…」


「……うん…」


驚いた表情が直せないみさ。

千夏から聞いた言葉はそれほど突拍子もない事だった。


呆然としたみさと悩んだ顔の千夏がトボトボと教室へ戻る。

二人とも口を開かないまま続々とクラスメイトが登校してきた。


そしてついに優奈が教室へと入ってきたのだが…

その顔は明らかに怒っており眉間にしわまで寄せている。


「お…おはよぉ…」

「…おはよ(怒)」


「どーしたの?」

「…別に!」


「勝也は?」


その質問を投げかけた康太に向かい急にいらだったような表情で


「は?なんであたしに聞くの?どうせモタモタその辺歩いてんじゃない?!」


完全に怒りの矛先は勝也へと向いているようだ。

周りは『また夫婦ゲンカか…』とあきれた顔をしている中、みさと千夏は顔を見合わせ


「ねぇ、ひょっとしてやっぱり…」

「…まだそうと決まったわけじゃないよ」


その直後勝也も教室へ入ってきた。

あからさまに優奈とは目も合わせずにそのまま自分の席へ座るが、その表情は怒っているというよりは怒られてイジけているような雰囲気で


「なに、またなんかしたの?」

「…別になんにも」


蘭との小さな声での会話を聞いて


「なんにも?へ~、あんだけの事しといてなんにも?あっきれた…」


「なんだようるせぇな。口挟んでくんじゃねぇよ」


一触即発の雰囲気が周りにもヒシヒシと伝わってくる。

そのせいで辺りは会話さえも無くなりシーンとした空気になった。


そのままHRが始まり、その後一日の授業が始まる。

各休み時間も2人が目を合わせることは無く当然会話もないままで周りの空気を凍り付かせていた。

勝也に怒られて優奈がヘコむというシーンは今まで数えきれないほど見てきた友人達だが、今回は優奈の方が相当キレているらしく明らかに不機嫌である。


昼休みになると周りもさすがに心配し始めてきたがそんな中でも優奈は勝也に弁当を渡すそぶりもなく、勝也もまた何も食べないまま机に突っ伏して寝始めようとしている。


何があったのかもわからない友人たち。

そこへみさと千夏が動く。


「ね、ねぇ…なにがあったの?」


「ん?」

「よっぽどの事があったとかでしょ」


「今回ばかりは絶っっ対許さない」


「だから何があったのよ」


みさと千夏はもう今朝の自分達の話が本当だったのだと信じ始めてはいるが…それでもまだこっちからその話題に触れる勇気はない。

何も知らないフリをして聞いてみたのだが


「だから何回も謝ったじゃねぇかよ、しつけぇな…」

「はあぁ?!しつこいって何?あんなの謝ったって許せる話じゃないでしょぉ?!」


(やっぱり…)


「大体今までそんな事した事無かったクセになんで急に…」

「ちょっと興味沸いたからだって言ったろーが」


その言葉に驚いたみさと千夏。

優奈を差し置いて勝也と話し始めた。


「…き…興味だけ?」

「俺だってたまにはそんな気分になることだってあるだろうよ」


「気分で…そんな事出来るの?」

「だってこんなに怒ると思わなかったんだもん」


「怒るに決まってんでしょぉぉ!!」

「それはちょっと勝也が悪いよ…」


「だから何回も謝ってんのによぉ、ちょっとつまみ食いしたぐらいで」


「ちょっと…つまみ食いって言い方ひどくない?」

「なんで?食べたって言えばいいの?」


「そういう事じゃなくて!…なんか勝也の口からそんな言葉聞くとは思わなかった」


「…そういう人だったの?」


「そうだよ!こういう人だったの!」


「信じらんない…」


「なんでこんなに怒られなきゃいけねぇんだよ」


「当たり前でしょ!!優奈の事裏切って…」


「は?こんなんで裏切ったとか言われんの?」

「完全に裏切ってるじゃん!今まで優奈がどれだけアンタの為に尽くしてきたのよ!」


「そうだよ!なのにこんな…」


もっと大きな声で怒り始めるみさと千夏。

それをみて少し優奈も落ち着き始め


「あのさ…なんでみさと千夏が知ってんの?」


「3組のコが見てたんだよ」


「見てたって何を?」


すると少し言いにくそうに小さな声で


「勝也がその…そこに入ってくトコ」

「そこって…俺どこに入った?」


「まだしらばっくれんの?アンタが女の子とラブホ入ってくトコに決まってんじゃん!!」


思いっきりシーンとした中でのみさの言葉にさらに静寂が流れ、そして


「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ??????????」


だがそれと同時に勝也と優奈も


「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ??????????」


その後もクラス全員が目を真ん丸にした状態での静寂が続く。


「お…俺?…が?……いつ?」

「ちょっと……」


一番驚いた表情なのは勝也と優奈だった。

すると


「え…アンタそれで怒ってんでしょ?」


「は?そんなの今初めて聞いたんだけど…。ねぇ勝也!どういう事っ?!」


「いや…俺に聞かれたって何の事やら…」


「でも見たって人がいるじゃん!!」

「だから知らねぇってば!」


違う問題でケンカし始める2人。

その光景を見て


「ちょっとちょっと!じゃあ優奈は何でそんなに怒ってたの?」


「この男が昨日あたしが大事に残しといたシャインマスカットチーズケーキのマスカットのとこだけ勝手に黙って食べちゃったの!!!」


「……は?」


「せっかく実家で貰ってきてお風呂上りに食べようと思って楽しみにしてたのに冷蔵庫開けたらただのチーズケーキになっちゃってたんだもん!!」


「…そ…それだけ??」


「普段甘いモノとか食べないクセに…だから2つくれたのを1つだけでいいって言って大事に持って帰ったのにこんな時に限って!!」


「だから謝ったじゃねぇかよ!!」

「謝ったって許さないって言ったでしょぉ!許してほしかったら長野まで行って同じの買ってきてよ!!」


「あ~うるせ…そんなに大事なら名前書いとけってんだ!」


「こんのヤロ…反省の色が…」



「あのねぇ!そんな事ぐらいで周りにまでとばっちり撒かないでくんないっ?!」


この言い争いの最中、蘭の大きな大きな怒声が教室に鳴り響く。


「……え?」


「アンタらが揉めたりケンカすると周りが気ぃ使うの!大体そんな痴話ゲンカ家で終わらせてから来なさいよっ!!」


「…ご…ごめんなさい…」


蘭に怒られシュンとする2人だった。

すると陽平が


「…ところでその勝也がラブホってのは?」


「え?」


「あー!それ!どういう事?!」

「だからそれは知らねぇってば!いつの話だよ!!」


「土曜の夜…10時頃に勝也を見たって」

「マジで?」


すると2人で顔を見合わせ色々と思い出し始める。


「土曜の夜?」


「10時?」


「土曜って家でメシ食って…」

「それからテレビ見て…」


「あのドラマ終わった頃だから…一緒に風呂入ってたよなぁ?」

「うん、確かそれぐら……って、ちょっとぉ!!」


時すでに遅し、2人で一緒に風呂に入っていた事を暴露してしまう。


「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇ??????????」


しまった…という顔をしたもののもうクラス全員からの視線を感じていた。


「もぉぉぉ!!!ちがっ…ちょっと……もぉぉぉぉ!!!」


真っ赤な顔をして怒り勝也に向かって手を振り上げる優奈。


「わ…悪かったってば!…つ、つい…」


「ついじゃなぁいっ!!!」


しかしこれで人違いだったことがわかり勝也の濡れ衣は晴れた。


「やっぱこの2人に限ってその心配だけは無いでしょ♪」

「そうだよね(笑)」


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