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87 親子 ①

 勝也のリハビリが終了した。


後は自分で出来るだけ動かして筋力を戻していけばいいらしい。

プロテクターも外していいと言われ、もし熱を帯びてきたら冷やしてテーピングしろという最終診断だった。

 

リハビリ終了記念として優奈が焼肉に連れて行ってくれるという。

2人で焼肉に行くのは初めてで、お腹いっぱい食べた帰り道


「やっと治ったし約束通りお父さんとお母さんの顔見に行こーよ」


「ん?あぁ、そうだな…」


今まで楽しそうに会話していたが、約束だった臨時帰省の話になった途端に少しだけ表情を曇らせた勝也。


「どうしたの?まさかやっぱりいいとか言い出すんじゃ…」

「そんな事ねぇけど」


「なんか言いたそうじゃん」

「ん?…まぁたオフクロと姉貴とお前3人集まったらうるせぇんだろうなーと思って」


「あ、その辺はガマンしてね(笑)」


今回の帰省は敢えて実家には何も言わず突然顔を見せようという優奈の提案で、何の予定もイベントもない普通の週末を選んだ。

優奈の両親には勝也の全快報告をしに行くと説明して2連泊の許可をもらう。


 金曜日の放課後。


徒歩ではなくバスに乗って急いで帰宅、前日に荷造りしておいたカバンとまたしても優奈の母が用意してくれたお土産を持って家を出る。

駅から電車に乗り、最初の乗り換え駅へと向かう車中で優奈がふと勝也の顔を見るとやはりこの前の焼肉帰りの時のような少し曇った表情をしていた。


「ねぇ、どうかした?」


「ん…何が?」

「やっぱりなんか考えてるじゃん」


するとしばらくの間考えて


「なぁ…俺って間違ってたのかなぁ」


「何が?」

「自分のわがままで勝手に家飛び出て…だからせめてお金の事では迷惑かけたくないって思ってたけど、そのせいでオフクロにあんな思いさせてたとは思わなかった。俺のやり方ってやっぱ違ったのかな…」


やはり勝也はそのことを気にかけていた。

母親が優奈に見せたという涙の意味をずっと考えていたのだった。


「あたしは勝也が間違えてるとは思わないよ。もちろんお母さんが間違えてるとも思わない。勝也はご両親の事を思ってしてきた事だし、ご両親も勝也の事を思って言ってくれた事だし…どっちもが家族の事を考えてした事じゃん」


スッと勝也の頭に手を回して自分の肩に頭を乗せるように抱き寄せ


「あたしもまだ『親』になったことないから本当にわかってるのかどうか自信はないけど…でも親ってやっぱ子供にはいつまでも甘えてきて欲しいんじゃないかな」


優奈の声は心に染みわたるほど優しかった。



窓の外はもう夕暮れが過ぎ夜になり始めている。

乗り換え駅を過ぎて地元の駅に到着した。


「ハラ減ったろ、その辺でなんか食ってから…」


「は?食べるんならお父さんのお店がいい!」

「そ~ですか」


バスに乗っていよいよ目的の停留所へ。

そこから少し歩くとお正月以来の店の灯りが見えてきた。


「びっくりするかなぁ(笑)」

「そりゃ帰るって言ってねぇからな」


「楽しみ過ぎて緊張する~♪」


店の前に着くと勝也にチョイチョイとアゴで促されて優奈が扉を開けた。


「いらっしゃ………??」

「はい、いらっしゃ…………え??」


固まる両親。

入り口からヒョコッと出した優奈の顔を見て真ん丸な目をしている。


「こんばんは~♪席空いてますか~?(笑)」


「ゆ…ゆ…優奈ちゃんっっ?!」

「…え…えええぇぇ~?!」


大笑いしながら優奈とその後ろから勝也も入る。


「びっくりしたろ(笑)ただいま」


「お…おぉ…おかえり…」


ふと見ると母はもう優奈に抱き着いてしまっていた。


「どーしたのっ?!心臓止まるかと思ったじゃないっ!(笑)」

「えへへ♪顔見に来ましたっ」


年末ほどの混みようではなかったもののあの時にも来ていたお客さんもいて


「あ~!あの時の…えっと…勝也の彼女!!」


「だから優奈ちゃんだって言ってるでしょ!!」


「おぅ勝也♪ついさっきもお前の話してたトコだぞ~」

「なんだよ、どーせまた悪口でしょ(笑)」


座敷に荷物を置いてようやく腰かけると、カウンターの客をほったらかしにして両親が寄って来た。


「どうした、なんかあったのか?」

「別に…優奈がオヤジとお袋の顔見たいっていうからフラッと帰ってきてみた」


「あ~!あたしのせいみたいに言う~」

「違ったっけ」


「半分正解だけど(笑)」


もう母はウキウキして優奈の横にチョコンと座っている。


「オヤジ…こないだはありがとう、入院費出してもらっちゃって」


「何言ってんだバカ。で、具合は?」

「もうリハビリも終わったよ」


「そうか、良かったな」


そういうと父は優奈の方を向き


「勝也の世話とか色々面倒見てもらったそうで…ありがとうございました」


そういって頭を下げた。


「ちょ…ちょっとお父さん!!ヤメてください!頭なんて!!」

「一応御礼は言っとかないとね」


顔を上げてニコッと笑う父。


「びっくりしたぁもう…冗談キツいんだから」


するとカウンターの客から


「優奈ちゃ~んビール~♪」

「あ、はーい!」


「おいおいこの子は手伝いに来たんじゃ…」

「いーじゃん、どうせ入れてもらうなら若くて可愛い子の方が」


「なんか言ったぁ?!」


母の突っ込みで店中大爆笑だった。


「お待たせしました~」


「ありがと~、俺の事覚えてたりする?」

「覚えてますよ、年末の時と同じ席ですね(笑)」


「ホントに覚えてくれてる…」


客にも大人気の優奈。


「腹は減ってないのか?」

「減ってるよ。なんか食ってから来ようかって言ったんだけど優奈が親父の作ったモンがいいって」


「そーかそーか」


ご満悦な表情の父だった。

それからまたも大量に晩御飯が用意され


「これ食べたかったぁ~♪いただきますっ!」


父も母も笑顔が止まらない夜だった。


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