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71 17歳

 一緒に祝う優奈の2回目の誕生日。


今年は一日中2人っきりではなく、夜は優奈の家での誕生日パーティーに勝也も招かれた。

という訳で2人で過ごす夜はその前日となり


「あ~あ…誕生日の夜に2人でいたかったなぁ~」


「何言ってんだ、この年でまだ家族が一緒に祝ってくれるなんて大事にされてる証拠だろーが。祝ってもらえないヤツだってたくさんいるんだぞ」


「…あ…ごめん…」

「俺の事じゃねぇよバカ(笑)それに去年はしっかりお前に祝ってもらったろ」


確かに今の勝也は誕生日を家族で祝ってもらう事は出来ない。


高校1年の時の誕生日はもうすでに付き合っていたにも関わらず教えてもらっていなかったこともあって祝えず、去年ようやく彼氏の誕生日を2人っきりで過ごしたのが初めてだった。


今年の優奈の誕生日は平日のためアパートへ泊まることは許してもらえず、相当粘ってようやく『日が変わるまで』居てもいいという事にしてもらえた。

下準備はしていたものの学校から帰ってからバタバタの用意ではあったが、優奈にとっては幸せなパーティーになった。


日が変わっていよいよ当日を迎えると


「はいよ、プレゼント」

「え~、一緒にいてくれるだけで良かったのにぃ」


ムクッと体を起こし、貰った可愛い袋を嬉しそうに開けていくと、その途中で


「あ、一個は俺のなんだよね」


「え?…一個って?」


キョトンとしながら中身を出す。


どうみてもジュエリーケースだ。


「…え?…え?」


箱を開けると中にはペアリングが並んで入っていた。


優奈の目に一瞬にして涙が溜まる。

胸元には仙台で買ったお揃いのネックレス。

耳には去年の誕生日に貰ったピアス。

そして今年はついにその指にはめる指輪だった。


おもむろに覆いかぶさるように勝也に抱き着くと


「ふ…ふええぇぇぇぇぇぇん…」


「あ~あ、また泣きやがる」

「…だってぇぇぇ~……」


「ホレ、手ぇ出してみ」


2人とも体を起こすと、そのケースからまずは小さいほうの指輪を取り出す。

左手を出そうとした優奈に


「右」


「え、なんで?…左がいい」

「左は『まだ』つけさせない」


「……あ……」


優奈にはそれが「いつかその時が来るから」と聞こえた。

止まりかけていた涙がまたもやポロポロと流れ落ちていく中、生まれて初めてその右手の薬指に彼氏から指輪を通された。


「うわ…ピッタリ♪」


「あ~良かった、サイズ違ったらカッコ悪いトコだった」


何度も天にかざすようにその手を見上げ自分の指に光る指輪を見つめていると


「あんま可愛くないけどな」

「ううん、世界一可愛い」


指輪は細くて可愛い感じではなく少し太めで様々な角度にカットされたメタル調だったが、優奈にとってはこれ以上ない嬉しいモノだ。


「ねぇ、勝也のはあたしにつけさせて?」


「いいよ自分でするよ。こっ恥ずかしい…」

「ダメ!貸して!」


そのケースを取り上げ、大きい方を取り出して勝也の右手の薬指にはめる。


「なんか結婚式みたい♪」


「2人とも全裸でかよ」

「…誰も呼べないね(笑)」


ついに2人の指にお揃いの指輪が光った。

今までもファッションとして指輪をすることも多かった優奈だがこれだけは意味合いの違うモノになった。

 

ブランカのメンバー達はみんなお洒落でカッコ良く、服装もアクセサリーもセンスの塊のような男達ばかり。

その中にいて勝也も例にもれず服装などはいつも優奈の好みど真ん中だったのだが


「そういえば勝也が指輪してるトコって今まで見た事なかったような気が…」

「だって生まれて初めてだもん」


「…え?」


「チョーカーとかはしてたけどこんなネックレスとかも初めてだったし」


「…ウ…ウソでしょ…」

「今までは別にあんま興味無かったけどお前とお揃いだったらネックレスも指輪もしてみてもいいかなぁ…ってな」


結局また優奈の号泣が始まり、ようやく泣き止んだと思った途端に押し倒される。


泊まる許可は得ていないため終わった途端に大慌てでシャワーを浴び、ドタバタと優奈を送っていくという最後はなんとも落ち着きのない誕生日だった。


翌日、学校に着くなり


「おーう!誕生日おめでとー」

「ありがとー♪」


それを皮切りに友人たちから怒涛のプレゼントラッシュが始まる。

気づけば見知らぬ男子や後輩、女子達からも集まり


「どうやって持って帰ろ…」


と悩まなければいけないほどだった。


「勝也には何貰ったの?」


「…あ、えっと…その…昨日…ペアリングなど……」

「きゃ~!つ、ついに…」

「うっそぉぉ!」


「…えへ♪」

「えへ♪じゃねぇよっ!!」


学校にいる間は指にはつけないという約束で毎日アパートで外してから登校する事にした。学校で傷がつくのがイヤなのと、選んだはずの勝也が恥ずかしさのあまり頑なに拒否したのである。

そのため帰宅するとまず何よりも先にその指輪をつけるのが最優先事項となり、アパートに帰るとまたお互いにつけ合うという儀式のようになっていた。


「じゃあ先に帰って手伝いとかしとくから6時ごろ来てね」

「わかった」


クリスマスの時と同様ケーキは勝也が用意するという条件でパーティー参加を受け入れた。

一旦別れると予約していたケーキ屋に向かい、それを持って指定の時間に優奈の家に着く。


ケーキを優奈に預け、そして母にはなぜか花束を渡した。


「お邪魔します」


「いつまでそんな挨拶してんの?『ただいまー!』でいいじゃない」

「そーだそーだ♪」


「いや…あの…はは…(汗)」


母にまでそう言われるほど受け入れられている勝也。


ほどなくして父が帰宅した。

それからパーティーが始まり、家族の温かさを感じる宴が続く。

勝也と酒を飲むのが楽しみにもなっている父もテンション高めで、あっという間に時間は過ぎていった。


「はい優奈。プレゼント」

「えーなぁに?」


渡されたのは1枚の封筒。

17歳にもなったのだから好きに使えと現金でも入っているのかと思いながら開けて見ると


「え…コレ…チケット?」

「そう♪ディズニーランドとディズニーランドホテルの宿泊券でした~」


「…え?…え?」


「もうすぐ春休みだろ。2人で行ってきなさい」


「きゃあぁぁぁ~!ウソォ!いいの?!」


「え……ぼ、僕もですか」

「当たり前でしょ、他に誰と行くの?」


「君のキャラからしてディズニーランドは苦痛かもなぁ…ま、私達から優奈を奪った罰とでもしておこうか。しっかり付き添ってきてくれ」


「はい…ありがとうございます」


両親からの宿泊許可に妙にテンションの上がった優奈。

勝也の用意したケーキはろうそくが17本ではなく1と7の数字型になっていて、それを吹き消すとニッコリと笑いながらそれを持った写メまで要求するほどだった。


ケーキも食べ終わり少し経った頃


「じゃあそろそろ僕は…」


帰り支度を始めようとすると


「…泊まっていかないか」


なんと父からの驚きの言葉。


「え、いやそれは…家も近いですし」

「今日はそうしてほしいんだ」


「…え?」


お酒のせいで少し顔を赤くした父が語り始める。


「今日は悪かったね、本当なら2人っきりの方が良かっただろ」


「いえ、そんな事ありません。すごく楽しいパーティーでした」

「本当は悩んだんだ。2人にさせてあげた方がいいんじゃないかとも思った。でもね…」


「…………」


「来年の誕生日と言えばもう優奈も18歳…立派な大人として扱われる年だ。そうなれば誕生日だからといって家でのパーティーなんかよりも君との時間を優先するだろう。そうなったら…今日が家族で祝える最後になるかもしれない。もう優奈の誕生日は私達のモノではなくなるかもしれない。だからどうしても今日は一緒に祝いたかった」


「……え…」

「今日は楽しかったよ、来年からは2人で祝うといい」


「そんな…お父さん…」


優奈は泣き出し、母もまた嬉しそうでありながらも寂しそうにも見える顔で涙をこぼしていた。


「あたしは…ずっとずっとこれからもお父さんとお母さんの娘じゃない…」


その言葉に笑顔だけ向けると、


「何度かウチに夕飯を食べに来てくれたろ?でも夜になって君が帰った後、優奈が凄く寂しそうな顔をするんだ。今の今まで一緒にいたのに、いなくなった途端にもう寂しいようだ。今日君が帰ってしまったらおそらくまた優奈のあの顔を見なきゃならない。最後の誕生日ぐらいずっと笑顔のままの優奈でいてほしい。だから泊まっていってくれないか?」


父の言葉は優奈の目からどんどん涙をあふれさせた。

これが最後の誕生日…両親がそんな想いで今日を過ごしていたことなど微塵も感じなかった。


勝也のことを認めてくれている嬉しさはありながらも言いようのない寂しさに襲われていると


「来年は…来ちゃダメなんですか?」


「…え?」


両親と優奈が勝也を見る。


「確かに誕生日と言えば生まれてきた本人を祝う日です。でも僕はそれだけじゃないと思います」


「…他に何が…?」


「今日は生まれてきた優奈には『おめでとう』を。でもそれと同時に17年前の今日優奈を産んでくれたお母さんに『ありがとう』を言う日でしょう」


「…え?」


「僕は男だから子供を産む苦しみっていうのを経験する事は一生出来ません。でも女性にしかわからないその痛みに耐えて苦しい思いをして命懸けで優奈をこの世に誕生させてくれたお母さんにこそ、僕は2月17日に逢いに来たいんです…『ありがとう』を言いに」


「だからあなたは…私に花束を…?」

「ちょっと照れ臭くて言葉に出しては言えませんでしたけど(笑)」


ボロボロと涙をこぼす優奈の横で母は声を上げて号泣した。

そして父の目からも涙がこぼれた。


「だから来年の今日もここに来ていいですか?」


「君という男は…」


それだけ言うのが精いっぱいだった父。

そして優奈は自分の母親にまでこれだけの想いを持ってくれていた勝也が愛しくてたまらなかった。


「…君を選んだ優奈を私は誇りに思うよ」

「いえ、僕の方こそ感謝してます。こんな僕を選んでくれた事に」


母と優奈の号泣は収まらず、犬や猫達のキョトンとした視線が集まる中


「…改めて今日は泊まっていきなさい。まだまだ君と話し足りない気分だ」


「ありがとうございます」


「母さん、家中の酒が無くなっても文句言わないようにな」

「…はいっ!」


「優奈、何か作ってくれ。…そうだな、いつも彼の為に作ってるモノがいい」


「はいっ!」


結局明け方まで宴は続き、父も勝也もそして優奈と母までも全員が二日酔いでダウンし、会社や学校を休んでしまうという結果になった。


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