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58 文化祭 ⑥

 この文化祭最後のイベントとして開催されるライブ。


毎年盛り上がるのだが今年は特に異様といえる雰囲気になっていた。


クラスや部活単位で出していた出店は夕方近くになると閉店し始め外部からの客もそれと同時に増え始める。

気づくとほぼ全校生徒全員と客、そして教職員までが集まりだし体育館は超満員になっていた。

そしていつもの友人達も


「なんかすごい事になってない?」


「なんせあのメンバーだもんなぁ」

「あのJUNCTIONのポスター全部盗まれたんだってな」


「あたしも探しに行ったけどどこにも無かったぁ…」


JUNCTIONの出番まではもう少しあるものの客席にはもうすでに隙間もなくなっていた。


今日の出演バンドがほぼ終わり、残るはJUNCTIONだけとなると徐々に熱気が上がり始める。

緞帳が閉められしばらく時間が経った頃、照明をつけないままで緞帳が静かに開いた。


大きな歓声が起こり人影ぐらいしか確認できない暗さの中で耕平の声が響く。


「JUNCTIONだぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


同時にツーカウントでのスタート。

その音圧は今まで出ていたバンド達のそれをはるかに超え、圧倒的な存在感でライブがスタートする。


真っ暗な中でイントロを終えると、耕平の入りと共にようやく照明が照らされた。


髪型、衣装、メイク、どれをとっても今日の出演者達とは一線を画した本物のミュージシャン達の演奏。

そして一番驚きだったのは、メンバー全員で寄ってたかって衣装を着せ、メイクを施し髪を立てた耕平の姿が本物のhideにそっくりだった事だった。


耕平の歌声や歌唱力は一瞬にしてこのバンドにふさわしいボーカリストである事を観客 全員に納得させ、新たな一面をアピールした。

安定感がありながら攻撃的な演奏。

まるでゲストにメジャーバンドでも呼んできたのかと思えるほどに盛り上がり始める。


今まで耕平の存在さえ知らなかった女子達は急に目の色を変え、自分達の学年にこんなにカッコ良くて歌の上手い男子がいた事に驚きを隠せないでいる。

そんな中


「…やっぱ勝也はちょっと別格かな」


「比べてあげるのは可哀想じゃない?」

「だって勝也だもんな(笑)」


「さすがにちょっと違うね」


元ブランカのメンバーからすれば客席から勝也を見るのは初めてである。

だが予想通り…いや予想以上にベーシスト・KATSUYAは凄まじいミュージシャンだった。


Syouのアドバイスのおかげで耕平が下を向くことは一度も無く、堂々とした振る舞いで1曲目を終える。

会場内の熱気は凄く、その勢いは耕平のMCをかき消すほどのモノだった。

2曲目はピンクスパイダー。1曲目とまた雰囲気も変わり、攻撃的でありながらそれぞれのメンバーの個人技も光る。

そして徐々にステージアクションに慣れ始めた耕平のノリは後ろから見ていても初めてのライブとは思えないモノになっていた。

さらに会場内が盛り上がる中で2曲目を終えると耕平がMCで話す間に蘭が動き出す。

 

ショルダーキーボードに持ち替え、なんとフロントに出てきたのだ。

その妖艶な衣装とカッコ良さに大歓声が起こる。

今までキーボードに隠れていた蘭の露出度は全ての男の視線を釘付けにした。


初めてのライブでありながら、教科書となったのはこのバックにいるそうそうたる顔ぶれのバンド達のDVDであった耕平。

最後のMCでは立派に観客を煽るまでの成長ぶりを見せ、そして最後のEver freeへと突入する。

最後の曲という事もあり観客は今日一番の大盛り上がりを見せ、フロントへ移動してきた蘭もさすがのパフォーマンスで観客を煽る。


KATSUYAと絡み始めた蘭は優奈が少しヤキモチを妬くほどの密着や顔の近さでステージを楽しんでいる。

最後にはこのメンバーと比べても引けを取らないほどの大シャウトを見せた耕平のジャンプで全3曲をやり終えた。


だがここで終わりのはずのライブに変化が起こる。

観客席から他のバンドにはなかった今日初めてのアンコールが沸き起こった。

戸惑うメンバー達だが


「…あれ行っとく?」


という言葉で蘭が元のキーボードの位置へ戻ると…


ただ曲調がかわいいというだけの理由で遊びがてらに合わせていたHalley-go-aroundが始まった。

小気味よいテンポでその曲が進んでいくのだがサビのリピート辺りでメンバー達が勝也に注目し始める。


表情だけで「ヤだ!」と拒否する勝也だがこの盛り上がりの中でついに断り切れず…なんと耕平のボーカルとハモりはじめたのだ。


ブランカのライブを見たことがあるみさ達や他の生徒の驚きも相当なものだったが


「なんだ!あいつコーラスやってるじゃん!」

「あんだけ言ってもやらなかったクセに…ひっでぇ~」


「でも何気にウマくない?」


一番驚いていたのはブランカの彼らだった。


今日一番を更新するほどの盛り上がりの中で、寄せ集めのユニットバンドでありながら今までの学園祭ライブイベントの動員記録を塗り替えたJUNCTIONのfirst&finalライブは幕を閉じた。


機材をはけて楽屋代わりの教室へ戻ると、先に戻っていた対バン達から拍手喝采を浴びる。


「いやぁ、耕平があそこまでやるとは予想以上だったな」

「確かに(笑)」


メンバー達も耕平の立派なステージに驚きを隠せなかった。


「勝也が絡みに行くぐらいだもんなぁ?」

「あれはびっくりしたね」


すると背中を向けてベースをケースにしまいながら


「そぉか?だってこのバンド楽しかったんだもん」


思わずみんながグッときた。


最初は弾いてもらえるはずないと思っていた勝也が引き受けてくれた。

甘かった耕平のボーカルに激怒し中途半端ならやらないとさすがのプロ意識も見せ、やるからには真剣にというバンド内での意識も高めてくれた。


当然技術的には叶うはずのない元ブランカのKATSUYAが自分達との演奏を楽しかったと言ってくれた。


「確かにあたしも楽しかったよ。耕平のおかげかもね~」


そういうと蘭がスッと耕平に近づき、その頬にチュッと軽くキスをする。


「えええええ~~~~!!!!!」


突然の行動に驚くメンバーに向かって


「何よ、あんたらが言ったんでしょ?ちゃんと出来たらキスしてやれって」


「うっそぉ!マジだったのかよ…俺も言っとけば良かった…」


大爆笑となる。

結局最終的には「ユニット」ではなく団結力のある完全な「バンド」としてその完璧な活動を無事に終えたJUNCTION。


ただ一つだけ…


ステージ上での蘭とのあまりの妖艶な密着に後から勝也が優奈に怒られた事を除いては。


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