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202 Family

 大阪でのライブを終えた勝也。


現地近くで軽く夕飯代わりの打ち上げの後、ホテルに到着したのはもう日付も変わりそうな時間だった。


ふとスマホを見ると


『何時になってもいいから電話ください』


と優奈からのLINE。

珍しい文面に何だろうと思いながら電話をかける。


「もしもーし。悪い、今LINE見た」


「あ、忙しいトコごめんね?お疲れ様」

「今ホテル着いたとこだよ。どした?」


「あのね、涼ちゃんから連絡あって近いウチに勝也と2人で来れる日無いかって」


「2人でって…なんで?」

「わかんないの。なんか大事な用事?って聞いたら来た時に話すとしか…」


「お前またなんか怒らすような事したんじゃねぇの」

「勝也だったらわかるけどあたしが怒られるような事するはずないじゃん」


「どういう意味だてめぇ(笑)」


「あたしの方は来週の後半だったら夜空けられるけどそっちは?」

「その辺なら大丈夫だよ、再来週からレコーディングだから来週はちょっと休める」


「じゃあそう言っとく。あ、大阪だったら『りくろーおじさんのチーズケーキ』買ってきて!んじゃおやすみー」


「完全にそっちがメインだなこいつ…」


切れてしまった電話を見つめながらボヤく勝也だった。


どうせなら翌日が休みの方がゆっくり出来ると思い、スケジュールを確認して金曜の夜に地元に戻る事にした。


涼子にもそれを伝えて久々の地元にワクワクしながら当日を迎える。

勝也は休みで夕方頃に優奈がマンションに帰り、それから準備をして部屋を出た。


先に優奈が地下まで降り車の後部座席に乗って待っていると少し時間をずらして勝也が降りてきて運転席に乗り込む。

後部は全ての窓にフィルムが貼ってあるため夜ともなると中が見えることは無い。

そのまま出発してしばらく走った頃ようやく後部座席から優奈が助手席に移動してきた。これが2人で車で出掛ける時のルーティンだ。


「ドコ行けばいーんだ?」

「とりあえずアパート。車で行ってもいいの?って聞いたらお酒用意してあるから車はダメって。涼ちゃんが迎えに来てくれるっていうから待ってればいいみたい」


「それってただの飲み会じゃねぇのか?」

「あたしもそんな気がしてきた(笑)」


道中も2人でコンビニに寄る事さえ出来ず、いつも勝也が優奈の欲しい物を一人で買いに行く事にしている。

優奈に行かせると顔バレして騒動が起こるからだ。


「このコーヒーじゃないぃ!」

「いつものが無かったんだよ、文句言うな」


車で出掛けるのも久しぶりで、こんなやり取りも2人にとっては楽しい時間だった。


アパート前に着くとまず優奈だけを下ろす。

そして優奈がアパートに入ると近所をグルッと廻ってからガレージに車を停め、遅れて勝也が部屋に入るという徹底ぶりだ。


涼子が迎えに来る時間まではまだ少しある。

久しぶりのアパートでの2人っきりの時間にお互いスイッチが入りそうになったものの、予定より少し早く来た涼子の電話によってその先はお預けになってしまった。


また時間差で涼子の車に乗り込むと


「みんな来るんだ?」


「うん、全員揃うよ」

「え~!いつ振りぃ?めっちゃ楽しみになってきたぁ」


「誰のせいで久しぶりだと思ってんのよ」


「あ…ごめんなさい」


涼子のマンションに着いてしまえばもう時間差にする必要はない。

地下の駐車場に車を停めるとそのままエレベーターで高層階まで一気に上がり、そして久しぶりの涼子の部屋へやっと到着した。


「あ~!久しぶりぃ!」


「お、来た来た」

「こっちはテレビとかでお前の顔よく見てるけどな」


「あれ…Kouさん、蘭は?」

「アイツは連れて来ねぇよ、彼女でもねぇし」


「まだ付き合ってないんですかぁ?…辛気くさぁ…」


「…相変わらず遠慮のない発言しやがるな、お前は」


「平蔵んトコとJunは少し遅れるんだってよ。ちょっとぐらい飲んどこうや」


久々のブランカファミリーの集まり。

勝也と優奈が卒業してから2年近くになるが、その間に全員で集まれたのは2回だけ。

だがやはりこのメンバーが揃うとあの頃のように『妹』に戻れる。

芸能人の『安藤優奈』ではなく『安東優奈』に戻れる数少ない場所の一つだ。


早くも盛り上がり始めた頃に平蔵とみぃ、そしてJunも一緒に到着した。


「あー!優奈ぁ!久しぶ…グエッ!!」


優奈に抱きつこうとした途端にみぃに首根っこを引っ張られる平蔵。


「危ない危ない、コイツの優奈大好き病忘れてた」

「みぃちゃぁん!」


逆に優奈に飛び掛かるように抱きつかれるみぃ。


「おー、元気だったかぁ」

「俺にもそれしてほしいなぁ…」


早速大爆笑になるファミリーだった。


「一緒だったのか」

「平蔵も遅れるって聞いてたから電話したらちょうどタクシーの通り道だったから拾ってきた」


今ではそれぞれが相当な知名度になってきているものの、それでもこの『元』メンバー達を見ていると今でも同じ地元で同じバンドをやっているかのような付き合い方である。


やはり久しぶりの飲み会の呼び出しだったのだ、このメンバーでの楽しい集まりを企画してくれただけだったのだと、一安心した優奈。

そこからは何の心配もなく大好きな宴会を楽しんでいたのだが…


そこそこ時間が経った頃


「…で、いい加減そろそろ本題に入ったらどうなんだ?」


「…え?」


たまりかねたようにJunが口を開くと


「ずっと強張った顔しやがってよ、なんか話あんだろ」

「こっちは何言いだすのか最初から気になってんだけど」


男達のその言葉はSyouに向けられている。

優奈、みぃ、紗季にはそれが何の事なのかわからないが


「なんか気持ち悪いんだよなぁ」


「ホント相変わらずわかりやすい男だよ」


いつも通りだと思っていた。

あの頃と何も変わらない楽しい宴会だった。


だがこの男達はSyouの様子がいつもとホンの少しだけ違う事を最初から見抜いていたようだ。

涼子以外の女子達はキョトンとした表情で黙ってしまう。


「怖ぇヤツらだな、ったく…(笑)」


少し笑顔を見せたSyou。

その横で涼子は少し固まっている。


そしてしばらく沈黙があったあと、ついにSyouが口を開いた。


「あのさ……俺、涼子と結婚するわ」


「……っ!!!!」


全員の目が真ん丸になりその視線はSyouと涼子に向いている。

そしてしばらく沈黙した後


「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!?!?!?!」


相当大きな声だっただろう。

みんなが驚きの表情で見ていると


「…という事です♪」


その照れたようなはにかんだような涼子の表情は幸せ満開を表している。


「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「すげぇぇ!!」

「なにもったいつけてんだコノヤロォ!!」


「ヤバぁぁぁぁ!!」

「マジかぁぁぁ!!」


この言葉が全員から同時に発せられた。

どれ一つとしてハッキリ聞き取れなかったもののその喜びはSyou達の想像以上だった。

女子達は涙ぐみ、男達は満面の笑顔だ。


「よぉしよくやった!乾杯だ!」


今日一番の歓喜の声で再び乾杯する。

これほどみんなのテンションが一気に上がるのも久しぶりだ。


そしてそこからまた宴会の盛り上がりは加速したのだが


「で、いつ結婚式?!」


「あぁ…ちょっと先だけど11月の予定だ」

「なんでそんな先…あ、披露宴の準備とか?」


「披露宴はしないの、教会で式挙げるだけ。でもアンタ達だけは来てほしいんだ」


「え…なんで披露宴しないの?」


「確かに涼子の収入使えばすげぇ披露宴は出来ると思うけど俺はまだそこまでは無理だ。やっぱ嫁に金出してもらって披露宴ってのはさすがに…なぁ」


「だって…でもウェディングドレス着せてあげ…」

「だから教会で着るってば」

「そんな…」


「いいの?涼子はそれで…」


「人に見せるために着る訳じゃないもん。あたしはSyouの言う通りにする。この人と結婚出来るだけで充分幸せだから」


今までここにいるみんなの面倒を見て来たと言っても過言ではない涼子。

だが今のその表情はただ純粋に一人の男を愛する女の顔だった。


「いつかちゃんと披露宴はしたいと思ってんだけど、籍入れるのはどうしてもその日がいいって涼子が言うもんだからさ」


「その日?」

「あぁ…11月3日」


「それって…」


11月3日。


それはここにいる誰もが忘れはしない、ブランカが解散した日だ。


「涼子にとって11月3日ってのはどうしても気分が落ち込む日なんだって。だからそこで籍入れて、明るい気持ちになれる日に変えたいんだってよ」


「…あ…」


その気持ちは痛いほどわかった。

優奈達も毎年この日になるとあのFINALを思い出して少しブルーな気持ちになっていたからだ。


「そっかぁ…あの日がやっと嬉しい日に変わるんだ」


みぃのこの言葉は女子達の気持ちを代弁していた。


だが男達の反応は少し違うモノで


「あと半年ちょっとか」

「それだけありゃ大丈夫だろ」


「場所はやっぱあのライブハウスだよね」

「あぁ、あそこしかねぇよな」


「ちょっと…何の話してるの?」


「教会にはもちろん行くよ。けどそれだけで終わりってのは俺達が許さねぇ」


「…え?」


「Syouの事なんかどうでもいい。けど涼子をお披露目する場所だけは必要だ」


「2人は言われた時間に来るだけでいいよ、あとは俺達が作る」

「披露宴ってのは花嫁の為にやるもんだ。新郎は黙ってその横にくっついてりゃいいんだよ」


「お前ら…」


「言っとくけど普通の披露宴になると思うなよ?」



涼子は号泣した。


この仲間はどこまで自分達を大事にしてくれるのだろう。

Syouの気持ちを優先して披露宴は諦めた。

だがこの男達はそれを許さないという。


みぃに肩を抱かれ、大きな声を上げて泣き続ける涼子。


「じゃあ、あたし受付やるっ!」


目に一杯涙を溜めた優奈が張り切って手を上げるが


「バカかお前は。そんな事したら客が来た時点で大騒ぎになるじゃねぇか」

「優奈は大人しく裏方さんやっとけ」


「え~!あたしもちゃんと役欲しいぃぃ!!」


大爆笑が巻き起こる。


ファミリーみんなで作るSyouと涼子の結婚披露宴。


今年一番の大イベントが立ち上がった。


長文読んでいただきありがとうございました。


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