2 浮き沈み
翌日、またもや朝の挨拶だけ声を掛けるも全くの無視で一日が始まった。
優奈の周りも徐々に気づき気を使い始めている。
そんな中での昼休み、優奈たちと仲のいい男子グループの一人である康太が優奈に声を掛けてきた。
「ちょっと話あんだけどいい?」
「何?」
「ちょっと来て」
そう言って呼びだすと廊下の端へ連れ出し
「ちょっと耳に挟んだんだけど、松下の事追いかけてるってホント?」
「は?…別に追いかけてないって。同じクラスなんだから話したっておかしくないでしょ」
「けど毎日帰りにアイツの後ついてって一緒に帰ってんだろ?」
「帰り道一緒なんだから別にいいじゃん」
「…お、俺だって方向一緒じゃんか」
「何なの?あたしが誰と帰ろうがあんたに関係なくない?」
「…そうだけど…だったら別に俺と一緒に帰ったって問題ないんじゃないの?」
「問題はないけど、なんで一緒に帰る理由があんの?」
「…それは…えっと…」
優奈と一緒に帰りたい男子生徒は星の数ほどいる。しかし今まで数えきれないほどの男が声を掛け、玉砕していった。
仲のいい女友達とばかり一緒にいて男が近寄れる状態ではなかったはずだがその優奈が自ら一人の男を追いかけているという事実は男子生徒にとっては衝撃的なニュースである。
その日の帰り道
「優奈、今日一緒に帰ろーよ」
「ごめんパス!」
康太の誘いをあっさり断るとまたもや小走りで学校を出ていく。
そしていつものように追いつき
「あの…昨日はごめんなさい。…一緒に歩いていい?」
ちゃんと謝ろうという気持ちで声を掛けたが
「いい加減にしろよ!今はブランカのKATSUYAじゃないって言ってるだろ!ただの高校生でいる時はほっといてくれっつってんだよ!」
やはり勝也は自分を『ブランカのKATSUYAに近づいてきただけの女』としか見ていない。
それがようやく優奈にも伝わった。
そんなつもりじゃない…そう思っていても勝也にはそういう目で見られていた。
そしてそれが自分に対する冷たい態度の原因だったのだと理解した。
だがそれに対して何も言い返せずただ立ち止まり、去っていく背中を涙をためた目で見つめるしかできなかった。
自分で調べろと言われた次のライブ。
本当にネット等を駆使して日程は判ったもののライブハウスに連絡してもチケットは売り切れでどうしても手に入らない。以前連れて行ってくれた先輩に泣きつくと先輩自身は仕事で行けないものの事務所に相談してはどうかと言われた。
プロモーターもついていないただのインディーズバンドのライブチケットなど業界繋がりも何も関係はないが、知り合いづてでなんとかようやく一枚だけは手に入れてもらえた。
それからの数日間、朝に声を掛けても返事はなく帰り道についていっても全くの無視。
突き放すような言葉だけ浴びせられ何度か心が折れそうにもなったが、ライブ当日まで耐えれば何かが変わるかもしれないという一縷の望みで持ちこたえようやくその日を迎える。
やはり前回同様圧巻のステージで、超満員の観客によって汗だくの熱気に包まれてライブが終了した。
初めてきたときは先輩と一緒だったため終了後はすぐにライブハウスを後にしたが今回のメインはその後である。
大勢のファンと同様に裏口に廻ると出待ちの集団の少し外に立つ。
ファンはみんなそれぞれメンバーに渡すためのプレゼントや花束を手にしており、自分のカバンだけを持って立っているのは優奈一人だった。
しばらくの時間が経って裏口のドアが開く。
ハッと顔を上げるがスタッフが機材を搬出し始めただけ。おそらくこの大量の機材の中には勝也のものも含まれているだろう。そう思うと黒い機材箱一つ一つを眺めては想像を膨らませていた。
すると大きな歓声が沸き起こりメンバーが出てきた。
ボーカルのSyouやギターの平蔵がもみくちゃにされながらファンからの贈り物を受け取っている。
そしてギターのJunとドラムのBanも出てきていたがまだ勝也の姿はない。
騒然とする円陣の外で入口付近を見ていると、またもや大きな歓声と共にようやく勝也が現れる。
他のメンバーと同様に大量のプレゼントや花束を受け取りながら優奈には向けたことのない笑顔で応対している姿を見て
(とても自分が入っていける場所じゃない…)
現実を目の当たりにした優奈は、話しかけることも出来ずにただ突っ立っていた。
これほどとは思わなかった。
人気があるとは聞いていたものの想像をはるかに超えていた。
普段学校で見るボサボサ頭でヨレヨレ制服の面影は微塵もなく、後ろで束ねられた髪やステージにいた時とはまた別の黒尽くめの服装はブランカの中でも特にカッコ良く見える。
気づけば優奈の目には涙が溜まっていた。
(もう帰ろ…)
もみくちゃにされている勝也に笑顔を向けるとそのままその場所を離れる。
後ろで歓声が聞こえる中トボトボと下を向いて歩く優奈。
するといきなりパン!と肩を叩かれた。
「おう、一人で来たのか」
振り返ると声をかけてきたのは勝也だった。
「…わっ!…え?…あ、うん…」
勝也越しに向こうを見るとファンたちが一斉にこちらを見ている。
みんな「誰、あの子?」と苛立ったような目つきだ。
「…あ、えっと…ダメだよ、みんな来てくれてるのに…戻らなきゃ」
そんな言葉には耳も貸さない勝也。
笑顔こそ浮かべていないが学校や帰り道で見る冷たい視線ではなかった。
「ライブの日ならちゃんと話すって約束しちゃったからな、まさかホントに来るとは思わなかったけど。もう帰んのか?」
「…あ、うん…帰る。別にそんな事気にしなくていーよ、じゃあね」
無理に作った笑顔を向けて帰ろうとするがもう一度引き止められた。そして
「ちょっとここで待ってろ。まだ帰んなよ」
そういって小走りにメンバーのところへ駆けていく。
ほどなくして戻ってくると
「ほら、いくぞ」
優奈の進行方向に向かって歩き始めた。
「え?…行くって…どこに」
「は?帰るんだろ?打ち上げあるから家までって訳にはいかねぇけど駅まで送っていくよ。この辺は飲み屋も多いし治安もあんまりだから女の子一人で歩くのはちょっと危ないしな」
「え!…ちょ…そんないいって!あたしが勝手に来ただけだしファンの人達もいっぱいいるし!あたしだけそんな…」
必死に断ろうとする優奈に向かってクルッと振り返り
「俺の言う事が聞けねぇのか?」
頭ごなしのたった一言で従うしかなかった。
それでもまだ気を使い少し離れて後ろを歩き始めると、グイッと腕を掴まれて強引に引き寄せられ隣を歩かされる。
当然ながら今までライブに来ていた観客もまだそこら中にいて、KATSUYAが女の子を連れて歩いている事に相当な注目が集まる中…
「ほら…やっぱりみんな見てるじゃん。あたしだけ特別扱いとかしたらみんなあんまり気分良くないんじゃない?」
「ふぅん…お前はホントにちょっと違うのかな」
小さな声で呟く。
本当ならついさっきまであの圧巻のステージに立っていたメンバーとその直後にこうして二人っきりで歩くなどファンからすれば天にも昇る気持ちなはず。
もっとみんなに見せびらかしたい状況のはずだが優奈は他のファンの方を気遣った。
「え、何か言った?」
「いや、別に」
その後初めても言っていいほど『普通に』『気さくに』会話をしているとあっという間に駅に着いてしまった。
改札前まで一緒に行き
「んじゃな、見に来てくれてありがとな」
「そんな…あたしこそわざわざ送ってもらってごめんね」
その会話で勝也が踵を返し戻っていこうとしたところを呼び止める優奈。
「あ、あの!…あのさぁ…また来週その…帰りに一緒に歩いちゃダメ?」
目も合わせず下を向いたままで言いにくそうにモジモジしながらようやく伝えた言葉。
少しだけ優奈に対しての見方が変わりかけていたのもあり、少し考えてクスッと笑うと
「早く来ねぇと置いてくからな」
それだけ伝えて去っていく。
だがその一言で優奈は笑顔になり心の中が明るい気持ちでいっぱいになっていった。
翌日の日曜日をウキウキした気分で過ごすとそのままのテンションで月曜日の朝を迎える。
いつものように教室に入り、わざわざ勝也の席の横を通って
「おはよ」
と小さく声を掛ける。
今までなら顔だけ上げる時もあれば無視の時もあったこの一方通行の挨拶だが今日は少し顔を上げた勝也から
「…おう」
たった一言だけだが初めて朝の返事が返ってきた。
驚いて思わず立ち止まると
「…えっ?…あ、あぁ…うん…」
びっくりして中途半端な返事をしてしまった。
この事が機嫌をさらに良くしたのは間違いなく、友達たちが違和感を感じるほど朝からテンションの高い優奈だった。
だがそれを見ていて面白くない表情をしている男がいる。
康太だ。
周りの女友達はもうすでに優奈が勝也を追いかけている事は理由は判らないものの暗黙に認めている。
だが男友達の中では一番優奈のグループに近い存在の康太と陽平。中でも康太はずっと優奈に好意を持っていたのだった。
勝也との朝の挨拶も毎日舌打ちをしながら見ていたが、初めて挨拶を返した勝也とそれから明らかに嬉しそうな態度の優奈を見てついに我慢も限界になったようだ。
「優奈、今日ちょっと付き合ってほしいトコあんだけど一緒に帰らない?」
「あ、あたし帰りは無理。ごめんねー」
笑顔で断ってきた優奈についにイライラした声を出しはじめた康太。
「じゃあ明日。それがだめならあさって。いつでもいいから付き合えよ」
「は?だから帰りはダメだって言ってんじゃん、しつこいな」
「じゃあ土曜は?日曜は?帰りじゃなきゃいいんだろ、いつならいい?」
「いい加減にしてよ!アンタと2人で出掛ける気はないって言ってんの!」
その言葉でついにキレる康太。
ツカツカと一番後ろの席まで歩いていくと勝也の席にバァン!と手を突き
「てめぇがダメだとか言ってやがんのか?ちょっと最近優奈に話してもらえるからって調子に乗りやがって!ちょっとこいよてめぇ!」
寝ている勝也をいきなりガバッと掴んで強引に立ち上がらせた。
「ちょっと!何してんの!」
勝也に食って掛かった康太を見て猛ダッシュで駆け寄り止めに入ろうとした瞬間…胸ぐらを掴んでいた手を勝也によって外側にひねられ、痛さで顔をゆがめる康太。
「…いきなりなんなんだ、お前」
眉一つ動かさずに康太を抑え込んだ勝也。
にらみ合いが続いているところに優奈が飛んできて康太の頭を思いっきり叩くと
「何なのよ!この人は関係ないでしょ!迷惑かけないでよ!」
ものすごい剣幕で勝也を守ろうとする優奈に周りのクラスメイトも面食らった顔をしている。
優奈に睨みつけられてようやく勝也の服から手を離した康太。
だがまだその目は勝也を睨みつけたままで
「てめぇは絶対許さねぇ…」
小さく呟くと一旦その場は収まったように見えた。
このままではクラス内は崩壊するかもしれない。
教室の中にそんな空気が漂い始めると、ついにみさ達が動き始めた。
昼休み、いつものように4人で集まっている時
「ねぇ優奈。朝の事だけどさ…康太の言ってることは確かに訳わかんないけどアンタが松下の事急に追いかけ始めたのってなんでなの?いい加減ウチらにぐらい教えてくれたっていいんじゃない?」
「そーだよ。ただクラスメイトだからって理由じゃないのは誰が見たってわかるし、別にアンタがアイツの事好きになったんならそれはそれでいい事なんだしさ。黙って隠されてる方がなんか感じ悪いよ」
「…別に隠してるわけじゃないけど…でもなんていうか…」
「このままだと康太のやつホントに松下に何かしかけるかもよ?アイツ喧嘩強いって話だし…」
「そ、そんな!」
もうこれ以上隠し続けるのは無理かもしれない。だがそれは勝也との約束を破るという事に直結する。
どうすればいいのか分からず途方に暮れていると…
「そんなにウチら信用できない?」
「そうじゃない!そういう事じゃないの…ホントはあたしも話したい。…けどそれは「あの人」が一番イヤがることだから…」
「あの人?その言い方って…」
ポロッと発した表現の仕方で優奈にとって勝也が特別な存在になりつつあるのが伝わってしまった。
みんなの視線が徐々に鋭くなってきたのを感じると…
「あのさ…みんなって口固いよね?絶対約束守ってくれるよね?」
観念したような表情で念を押す優奈に黙って何度も頷く3人。
そしてようやく重い口を開き
「…ブランカってバンド…知ってる?」
「は?誰でも知ってるでしょ」
「あ、あたしライブ行ったことある。ちょっと前だけど」
「え?みさ行ったことあるの?…ホントに?」
「うん、ホントだよ?…って……え?………え?」
3人の目が一気に真ん丸になる。
そしてついに
「あの人が…ブランカのベースの『KATSUYA』なんだ」
同時にポカンと口を開けて呆然とする3人。
そしてしばらくして少し大きめの声で
「…はぁぁぁ??いや…いやいやいや!そ、それは…ないでしょぉ!いや…だってあたし実際に見てんだよ?もしそうなら気づいて…」
「みさは松下の顔ちゃんと覚えてたんだっけ」
「…そ、それは…えっと…」
「でも!それがホントならすっごいじゃん!このクラスにそんな人いたなんて…すっごいじゃん!」
「だよねぇ!ヤッバー!」
「ちょ、声が大きいってば!」
慌てて3人を制止する。そしてそのまま続けざまに
「でもね、本人はそれを学校では隠したいって言うの。騒ぎになるのがイヤなのと、急にその肩書を聞いた途端にみんなの態度が変わって扱いが変わるのがイヤなんだって。そういうのを今までいっぱい見てきてイヤな思いもたくさんしてきたんだと思うんだ…。別にあたしは一人だけそれを独占しようとしてたんじゃないよ?ただ…誰にも言わないでくれって言うから…」
「だったらそのブランカの部分は言わないでアイツの事好きになったって事だけ言えばよかったんじゃないの?」
「あ!…ホントだ」
途端にバカ笑いが起こる。
「アンタってそういうトコ抜けてるよねぇ、っていうか自分から好きになるのに慣れてなさすぎ」
「でもなんかまだわかんないんだ。あの人の事好きなのかただ興味持ってるだけなのか…気になるのは確かなんだけどね」
「ねぇねぇ、んじゃブランカのライブってよく見に行ってんの?」
「まだ2回だけ。でもバンドの時はまったくの別人だから近寄りがたいんだよね。ライブ中はもちろんだけど終わって外出てきてもすっごいたくさんのファンに一瞬で囲まれちゃうし…」
「えー!想像つかなぁい…あんなボサボサのヨレヨレなのに」
「バンドの時はまったく別人だよ?髪型も服もめちゃくちゃお洒落でカッコいいしライブ中なんてすっごく楽しそうだし、それにちゃんと普通にしゃべってくれるし」
勝也の事を話す優奈は今まで見たことないぐらいに目がキラキラしていて楽しそうだった。その表情だけで完全に勝也に心を奪われていることが3人にはすぐに伝わった。
「ねぇ、すぐじゃなくてもいいからいつかウチらもライブに連れてってね」
「でもそれはあたしが決める事じゃないし…もしいいって言われたらね」
これでようやく親友たちには話すことが出来た。
だが今度はそれを勝也に伝えなければならない。
約束を破った事は事実であり、これを伝えればまた怒らせてしまうのかもしれない。
しかしこれ以外に手段がなかったのも事実であり…モヤモヤとしたまま放課後を迎える。
理由を知ったみさ達から帰りの誘いは無くただ黙って笑顔で手を振ってくれた。
それに笑顔を返すといつものように勝也を追いかける。
早くしないと置いていかれる…だが一緒に歩くことはライブの帰りに許可してくれた。
必死に階段を駆け下りるが、そこで走って追いかけてきた千夏に呼び止められる。
「優奈!康太が松下の事呼び出したって…ヤバい!」
「…え?」
千夏と2人全速力で探し回る。気づけばみさとありさも一緒に探してくれていた。
そして校舎裏の方で大きな声が聞こえると一目散にそこへ向かって走り出す。
「大体目障りなんだよ!今まで俺たちはみんな仲良くやってきたんだ!それを今頃になっていきなり存在感出して来やがって…優奈の事どうやってそそのかしたのか知らねぇけどてめぇの出る幕なんかねぇんだよ!」
康太の怒鳴り声だけが響いていた。
そこに4人が駆け付けると陽平を後ろに従えた康太が勝也の胸ぐらをつかみ、食って掛かっている。
「優奈の事は俺の方がよく知ってんだ!ずっと近くで見てきたんだ!そんなボサボサ頭でヨレヨレの制服着たお前なんかより俺の方がずっと優奈に似合ってんだよ!」
一触即発の状況で止めに入ろうと走り出す優奈。それより早く康太が拳を振り上げた。
(…殴られる)
そう誰もが察知し女子が全員目を瞑る…が殴られる音は聞こえず、目を開けてみると康太の拳は勝也によって片手で受け止められていた。
その瞬間に二人の間に割って入り勝也を守るように立ちはだかると
「何してんの!いい加減にしてよ!なんでそんなにこの人に絡むの?何が気に入らないのよ!」
「お前が急にこいつの事追いかけ始めるからだろ!他の男選んだりしやがって…俺はどうすりゃいいんだよ!」
「…は?なんで優奈が人を好きになるのに康太が関係あんの」
「お…俺だってずっと優奈の事…」
「はぁ?あんた今までそんな事言ってたっけ」
「それは…なんか今じゃないっていうか…なんか関係ギクシャクしたらとか…色々気ぃ使って…」
「はは~ん。今までビビって言い出せなかったけど優奈に好きな人が出来たかもって思ったら慌てて急に言い出したんだ。それってズルくない?」
「…それは…」
言い返せずに言葉を失う康太をずっと睨みつけている優奈。
すると今まで黙っていた陽平が…
「今がみんな一番楽しいからってずっと黙ってたんだよこいつは。まさか優奈が急に男の事好きになるなんて思ってもいなかったから。でもこいつはずっと優奈の事見てたぞ?ずっと前から好きだって言ってた。だからそう簡単に受け入れられねぇんだよ、わかってやれよ」
「それと本人にケンカ売るのと何の関係があんの?言っとくけどまだちょっかい出すなら二度と口きかないよ」
その言葉で全員が黙る。確かに理不尽な言い分である。
そして沈黙が続いた後…
「おい…どうでもいいけど話終わったんなら俺帰ってもいいか?」
今まで黙っていた勝也が口を開く。
みんな康太の勢いに押されて黙っていたのだと思っていたが平然とした表情で
「あとはそっちで揉めてくれ。それから安東、もう俺には近づくな。お前の周りにまで迷惑かけんのはゴメンだから。んじゃな」
それだけ言うと立ち去っていく勝也。
ようやく優奈にだけは心を開きかけていたようにも思えた矢先…誰も引き止めることはできないまま勝也の姿が消えると、その瞬間崩れるように両膝をつく優奈。
「…やっと…やっと話してくれるようになったのに…やっとここまで…」
そういって泣き出した。その姿をみて女子達が駆け寄る。
康太と陽平を残し、優奈の肩を抱いてその場を立ち去った。
それからの優奈の憔悴振りは誰も声を掛けられないほどだった。
学校へは何とか来るもののうつろな目線で一点を見つめることが多く、そして何よりもその表情からは完全に笑顔が消えていた。
みさ達が声を掛けても心ここにあらずな返事しか返ってこない。
だが康太だけは、多少の罪悪感は感じながらも勝也と優奈を引き離すことに成功したと一安心している様子だった。
長文読んでいただきありがとうございました。
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