138 復活 ⑧
一緒にいながら2週間なにも無しという試練を乗り越えた優奈の希望通りに相当激しい攻撃を仕掛けてきた勝也。
それを迎え撃ち、それ以上の反撃を繰り広げて2人とも気を失うように眠りについた翌朝…
窓から差し込む朝日で優奈が目覚めると目の前には大好きな顔があった。
昨日の夜にはライブハウスのステージに立ち大勢の観客の前でスポットライトを浴びて復活を果たした天才ベーシスト。
だが今目の前でスヤスヤと眠るその寝顔はあれだけ多くのファンでさえも見ることのできないこの世で優奈だけのものだ。
しばらく寝顔を見ているとどうしても起こしたくなった。
勝也の鼻をチョンチョンとつついてみるがそんな生易しい起こし方で起きる男ではないのも分かっている。
すると優奈の手が布団の中へと入っていき…いきなり力強く握りしめたのだった。
ギュ~~~~~!!!!!!!
「わああぁぁぁぁっっっっ!!!!!いってええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
あまりの衝撃に飛び起きる勝也。
そして慌てて布団をはねのけるようにめくると…しっかりと優奈の手によって握られているのが見えた。
「てっ!てめえぇぇぇぇぇ…………ちぎれるかと思ったじゃねぇかよ!!!」
「だって起きてくれないんだもぉん」
「まだ早いだろぉ!」
結局この騒動で強制的に叩き起こされた勝也。
「あー、そういえば昨日洗濯機回してる途中で襲われちゃったんだったぁ」
「そのまま干せばいいんじゃないの?」
「生乾きの匂いついちゃうじゃん。もっかい洗おっと」
昨日勝也がステージで着た衣装。
優奈がプレゼントした黒のシャツだがみんなに大好評でどこに売ってるのかとしつこく聞かれるほど勝也に似合っていた。
もう一度洗濯し直すと今度はちゃんとベランダに干すのだが外はもう明るくていくら何でも裸と言う訳にもいかず、勝也のTシャツを着て下には勝也のハーパンだけを履き家事をこなしていく。
服を取られてしまった勝也は文句も言わずにパンツ一枚でソファに座り、チョコマカとよく動く優奈を眺めつつコーヒーを飲んでいた。
「なんかさぁ、ライブの次の日にバーベキューが無いのってなんかヘンな感じだね」
「ん?あぁそういえば無いんだな」
「なんかついJunさんトコ行かなきゃいけないような気になっちゃう」
洗濯物を干し終えると勝也の隣に腰を下ろしてピッタリくっつく。
「そんなくっつかなくたってドコにも行かねーよ」
「いーじゃんくっついたって」
これほど密着してくるとほぼ素肌と変わらない柔らかさを感じる。
そしてこっちはパンツ一枚である。
自然に優奈のジャブが始まり、自ら火をつけてしまったように覆いかぶさってくる。
「さっきしたトコだろーが」
「それはさっきの話でしょ?」
完全に上から主導権を握って来た辺りで勝也のスマホが鳴る。
この着信音はブランカファミリーではないため
「…電話なんだけど」
「あとでね~」
全く手を緩めないどころか手を伸ばして勝也のスマホを手探りで見つけると勝手にマナーモードに切り替えてしまった。
そしてそのまま続けていくと今度は優奈のスマホが鳴る。
「もぉぉ……電話ヘシ折ってやろーかな」
「だからそういう事を真顔で言うなってば」
結局自分のスマホもマナーモードに切り替えるとようやく安心して集中し始める。
ここしばらくはほったらかしにしてしまっていたという気持ちもありあえて優奈に体を任せていたが、跨ったままTシャツを脱ぎ捨てて優奈が本気モードに入りかけた途端
『ピンポオオォォォォン!!』
「…えっ?!」
いきなり鳴ったインターホンに二人の動きはピタッと止まり見つめ合う。
このままジッと気配を殺していればやり過ごせるかもしれないという優奈の目力による命令でしばらく固まっていたものの…
『ピンポオオォォォォン!!』
2回目が鳴ってしまってはもう観念せざるを得なかった。
ムクッと優奈もろとも上半身を起こしていくと小声で
「ちょっとぉ…出るのぉ?」
「しょーがねぇだろ、早く終わらせた方がよくない?」
そう言ってパンツ一枚で立ち上がるとインターホンの通話ボタンを押し
「はい」
「あーごめん!俺、勇太!」
「ゆ…勇太ぁ?」
「……えっっ?!」
突然の訪問に固まる2人。
「さっき電話したんだけどずっと繋がらねぇし優奈にもかけてみたんだけど出ねぇしさ。昨日のライブのDVDをライブハウスからメンバー分貰って来たから届けに来ただけなんだぁ」
「お…おぉ!…ちょ、ちょっとだけ待って!あ…ちなみにお前一人?」
「いや、一応みんないるけど」
「バッ…バカ、お前…そういうのは前もって…」
「だから電話したのに出ねぇからじゃんか」
「とにかくちょっとだけ時間くれ!」
大慌てになる。
まず優奈は上半身裸な上に化粧もしていない。
勝也のハーパンを履いただけの完全アウト状態だ。
「ちょ…そのハーパン貸せ」
「…あ…う…うん!」
優奈が脱ぎ捨てたTシャツを拾って着ながらそのハーパンをも取り上げる。
完全な全裸になった優奈はそのまま寝室へと駆け込んだ。
優奈の姿が消えたことを確認すると息を整えてから玄関へと向かう。
そしてカギを開けて
「お、お~…おはよ(笑)」
「おはよ~…っていうかなんで息切れしてんの?」
「いや別に…。まぁ上がんなよ」
部屋へ招き入れる。
この時点で寝室に隠れている優奈は服を着終わっていたものの
(家に上げちゃったら長くなるじゃんかっ!)
ゾロゾロと部屋に上がってくるメンバー達。
勇太以外はもちろん初めて入るため
「へぇ~、なんかちゃんとしてるんだぁ」
「男の一人暮らしって感じじゃないよな」
「そっか?」
「勝也一人じゃこんな部屋になってないだろーよ(笑)」
すると
「勝也っ!…ちょ、ちょっと…あれ…」
小声の勇太が指さした方を見てみるとベランダには洗濯物。
外から見えないようにバスタオルで目隠し状態にしてあるのだが部屋の中からはバッチリ優奈の下着が見える状態で干してある。
「わっ!!…ちょっと!」
慌てて窓を開けて優奈の下着を洗濯ばさみからブチブチッと引き剥がし、それを持って寝室へ行き
「丸見えだってば!」
ポイッと放り投げてまたリビングへ戻る。
「あ、優奈起きてんだ?」
「…いや、まだ寝てる…よ」
「えっ!優奈ちゃんいるの?」
「そりゃいるけど…」
「寝てるって……泊まってたって事?」
「泊まるっていうか一緒に住んでるみたいなモンだよなぁ」
「えええぇぇぇぇぇ!!!!…い…一緒にぃっっ?!」
「え…あぁ、まぁ…うん」
最近は詳しい説明も面倒になってきたため人に聞かれても一緒に住んでいると普通に答えている。
「うっそぉ…高校生だろぉ?しかもあんな可愛い子と……いいなぁ~…」
「家も近いからさ」
「あ、あの…挨拶とかさせてもらったり…」
「あ~ごめん。あいつまだ寝起きだから無理だわ」
「会いたかったぁ…」
「スッピン見たらびっくりするからヤメといた方がいいよ」
(あのヤロー、あとでコロす!)
寝室で化粧を始めていた優奈にまでバッチリ聞こえてしまっていた。
昨日のライブの話を少ししたあと
「さて、あんま長居すると明日の優奈が怖いからそろそろ行くわ」
「名残惜しいけど…」
「お前はどうしても勝也じゃなくて優奈ちゃんに会いたかったみたいだな」
「またライブ見に連れてくよ」
全員が立ち上がり
「今回はホントにありがとう。ライブが出来ただけじゃなくて勝也とヤレたおかげでなんかが変わったような気がするよ」
「それは間違いないな。自分でもいつもと違うってハッキリわかった」
「俺はすっげぇプレッシャーになっちゃったけど…でもなんかもっと上を目指したくなった」
「オーバーだって(笑)もともとメサイア自体そんだけのポテンシャル持ってたってだけの話だろ」
そんな話をしていると、メサイア念願の優奈が化粧を終えて寝室から出てきた。
「わっ!き…来てくれたじゃん!!」
「スッピンはびっくりされるみたいだから化粧してきた」
「ありゃ、聞こえちゃってたりとか…」
「あとで話あるからね」
そんなやり取りで大爆笑しながら
「今回は勝也をステージに上げてくれてありがとうございました。またライブ見に行かせていただきます。お疲れ様でした」
ペコッと頭を下げる優奈。
その姿はベーシストとしての勝也の姿をずっと待ち望んでいた甲斐甲斐しい彼女の姿で、あまりの可愛さにメンバーもドキッとさせられたのだった。
メサイアを見送った後
「で、あたしのスッピンがなんだって?」
「あ、いや…別にそんな…はは」
「笑い事じゃないんですけど」
「バーカ、スッピンの可愛さにびっくりするぞって意味じゃんか」
「そんな風には聞こえませんでしたねぇ」
さっき途中まで進んでいただけにグイグイと迫ってくる。
「と、とりあえずなんか食べない?」
「あとでね」
結局続きが始まってしまう日曜日なのだった。




