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123 SNS

 タクシーの中で勝也が寝てしまわないように必死に意識を保たせようと


「ちょっとまだだよ?まだ寝ないでよ?」

「ん~……」


何度も優奈の肩に頭を預けてはすぐに起こされるものの徐々に体の力が抜けたように体ごともたれかかってしまう。


ようやくアパートの前に着くと


「ほら!着いたよ、起きて!ねぇ起きてってば!」

「……………」


完全に目を閉じたままの勝也。

四苦八苦して運転手さんにも手伝ってもらいようやくタクシーから降ろす。

そしてまた階段を上がらせるのに苦労しながらようやく部屋へとたどりついた。


倒れ込むようにベッドに転がせる。

それから完全に力の抜けきった勝也の服を脱がせて着替えさせ、また風邪をひかないようにちゃんと布団を掛けた。


「…はあぁぁぁ~………疲れた……」


涼子の家で飲んでいた酒もすっかり抜けてしまっていた。

脱がせた服と自分の着ていた服を洗濯機に入れてシャワーでも浴びようと思った矢先


「…優奈ぁ~……」


寝室から声が聞こえてくる。

そのドアを開け


「どした~?」


声を掛けると、目は閉じたまま布団の片側をめくって『ここに来い』と手招きしている。

以前にはなかった事だが最近は酔っぱらうと甘えてくるときがある。


「もぉ…はいはい」


サッとパジャマに着替えて添い寝すると、やっと安心したのか一瞬で寝息を立て始めた。



 翌朝、優奈がすでに目覚めて昨日の服の洗濯や片づけをしていると


「…優奈ぁ~……」


またもや寝室から勝也の声。


「はいよ~、起きたの?」

「…ん~……頭痛ぇぇ~……」


まだ目は開いていないがどうやら二日酔いのようだ。


「病み上がりのクセにあんなに酔っぱらうまで飲むからでしょ?今日は大人しくしてなさい」


「…ん~~……どうやって帰ってきたんだ俺…」

「そりゃ覚えてないでしょ、グニャグニャだったもん。お腹減ったら何か作るからもっかい寝て?」


そういうと勝也を残してリビングへ戻る。


前回優奈が二日酔いになった時に勝也が作ってくれたうどんが一番おいしかった記憶から、一人で買い物に行きその準備をする。

いつでも作れる状態にして寝室へ様子を見に行くとまだぐっすりと眠っていた。


「…ヒマだなぁ~……」


掃除も洗濯もご飯の準備さえも終えた優奈。テレビを見ても面白くない。


みんなが買ってくれたと知ったソファに腰を下ろしスマホをイジり始める。

インスタやTiktokに投稿してみたりフォロワーへ返信してみたりSNSで時間を紛らわしていると勝也のスマホにメール着信があった。


普段から優奈やメンバー、友人との連絡にしかスマホを使わない勝也。

迷惑メールや広告メールなども見もしないまま放置していて、時折優奈が勝手に開いてその余計なメールなどを削除する。

彼氏の携帯を盗み見しているわけでもなくただ単に整理しているだけで勝也も普通に優奈にスマホを預けている。


「まぁたこんなにためてる」


一気に余計なメールなどを削除した後、優奈が勝手にインストールしておいたインスタとTiktokを開いてみるもこのアプリを開いた形跡は全くなかった。

待ち受けも優奈が設定したままでアドレスも本当に仲がいい人間と家族しか入っていない。


その後しばらく自分のスマホで色々遊んでいたところ


「…水~……」


かすかに聞こえた声で寝室へ水を持っていく。


「どぉ、復活しそう?」

「…まだ頭痛ぇ……」


ようやく目は開くようになったようだが起き上がるのはまだ無理そうだ。


「今日は無理そうだね」


上半身だけ起こして水を飲ませるとまたそのまま寝かせ寝室を出た。


「あたしもあんな感じだったんだ…こりゃ大変だ」


自分も二度と泥酔はしないようにしようと決心した。



 夕方近くになってようやく起き上がれるようになった勝也。

リビングへ出てくると


「…お腹減った」

「はいはい、すぐ出来るよ」


準備しておいたうどんを作る。

目の前で勝也が食べるところを見ながら


「今度からはもうちょっと控えめに飲んでね」

「…はぁい……」


結局、昨日また内緒でみんなと飲んでいた事に関しては咎められなかった勝也。

そしてやっと会話できるようになると、昨夜の醜態を聞いて


「…うっそぉ…全然覚えてない」

「そりゃそうでしょ」


せっかくの休みだというのに買い物以外一歩も外には出ていないがこの部屋にいる事自体が幸せな優奈。

2人でなんでもない話をしている中


「そういえばさぁ、勝也ってインスタとかTiktokとかには興味…」

「ない」


「早っ……」


 食い気味に返ってきた返事。


「あたしのとか見た事…は?」

「ない」


「やっぱり」


「なんで?」

「いや、せめてあたしのとかぐらいは見てくれてたりとか…と思って」


「ヤだ」

「なんで~?」


「だってさぁ、お前は設定上彼氏いないって事にしてるじゃん?べつにそこに文句はないんだけど…っていう事はその…インスタ?とかの中にいるお前は俺の横にいる優奈じゃないって事だろ?俺は俺の横にいるお前しか見てないの」


「…え?」


「お前は俺にしか見せない顔で傍にいればいーんだよ」


二日酔いのクセに…

寝起きでうどんを食べた直後のクセに…


こんな事をサラッと言ってのけるこの男。

昨日大変な思いをしてこの部屋に連れて帰った苦労など一瞬で吹き飛んだ。

やはりこの人が大好きだ、とあったかい気持ちになると


「昨日の分も今日頑張ってね」


「え?…俺二日酔いなんですけど…」

「昨日連れて帰るの大変だったんだからね」


「…あ……はい…」


早速、寝室に連行されるのだった。


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