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122 仲間 ②

 勝也が話し始めた本音を聞いて涼子は全てを理解した。


友達と同じ遊びを出来なかった小学校の頃から独りぼっちになった事。

ベースを買ってもらった時の事。

それからベースだけが唯一の友達だった事。

中学に上がった頃からこの街に来るようになり、その分地元で友達と遊ぶ事もあまり無かった事。


そしてブランカに誘われ、初めて自分の居場所が出来ると感じた事。


勝也は打ち解ける気が無かったのではなく打ち解け方を知らなかったのだ。


「もし俺が言った言葉で誰かの気に障るような事があったりしたら…あんなに優しくていい人ばかりなのに、『お前なんかいらない』って言われたりしたら…そんな事ばっかり考えちゃって、それなら音で会話出来るスタジオだけにした方がとか…」


「あいつら見ててまだわかんない?」


「…いえ…わかるんです。最初から分かってるんです…。今は…毎週毎週土曜日にこっちに来てスタジオに入るのが楽しみで…それだけが楽しみなんです。ここに来ればみんなに会える。あの人たちに会える。自分が会話に参加してなくてもあの人達を見てるだけであったかい気持ちになれる。でも…そこにどうやって入っていけばいいのかわからなくて…」


「それでみんなに『叔母さんが迎えに来る』ってウソついて歩いて帰ってたんだ」


「……ごめんなさい……」

「バカだねアンタは」


そういうと涼子がスマホを取り出し電話をかけ始めた。


「もしもーしあたし。あのねー、今からウチで勝也とご飯でも食べようかな~と思ってんだけど来る~?」


「…えっ??」


突然勝手な話を始めた涼子に驚きの目を向けると、そのスマホの向こうから大声で叫んでいる声が聞こえた。


「うるさいなー!そんな大きな声出さなくたって聞こえるよっ!来るの?来ないのっ?」


その後すぐに電話は切れ


「来るって」


「…あの…誰が…」

「アンタの大好きなヤツら」


「そんな…」


「大丈夫、あいつらはアンタが思ってる通りのヤツらだよ」


あっという間にメンバー全員が駆け付け、みぃと紗季も呼ばれた。


そして涼子の口から全てが話されると


「…バッカだなお前は」


「大体ウチはバンド以外のトコの方がおもしれぇんだぞ」

「そうそう、お前は俺達とおんなじ匂いがするし」


「それは褒め言葉ではねぇな」

「まぁ褒めるトコでもねぇけどな」


今となっては当たり前の大宴会。

それを初めて経験した勝也は今まで気にしていた自分がバカだったと改めて気づいたのだった】



「すごーい………いいなぁぁ~……」


「それから今みたいな関係になるのは一瞬だったけどね」

「次の週ぐらいには平蔵にお酒飲まされてベロベロにされてたし」


「中学生なのに?」

「だってあいつらバカだもん」


「あたしもその頃に知り合いたかったなぁ~」

「まだアンタとは接点無かった頃だもんね」


同じ街にいながら勝也もブランカも涼子達も知らずに過ごしていた時間が以前からずっと悔しくて仕方なかった優奈。

話を聞いているだけでも楽しそうでたまらない空気だ。


「あのアパートに引っ越す時も大騒ぎだったもんねぇ」

「そうそう!あいつベースと普通のスポーツバッグ一つで越してきたんだよ?」


「え~っ?!」


「せっかくみんなで運び込むの手伝おうって集まってやったのに『何しに来たの?』みたいな感じだったよね」

「テーブルとテレビとベッドだけ先に置いてあって、あとはホントにカバンだけ」


「信じらんない……」

「平蔵なんて『余ってるんだったら一部屋寄こせ』って本気で言ってたし」


「今は2人分だからだいぶモノ増えたでしょ」

「うん、でもほとんどあたしのモノばっかり(笑)」


「あの2人掛けのソファはまだあんの?」


「え、あるよ?」


「まだあるんだぁ」

「あれね、ホントになんにもない部屋だったからみんなで買ってあげたの」


「…えっ?」


「いつか好きなコが出来たら2人で座れ…ってね」


思い出した。

初めて部屋に上がらせてもらった時、勝也と一緒にあのソファに座った事を。


目に涙をため始める優奈を見て


「あ~、なんか思い出しやがったぁ」


「…だってぇぇぇ~……」


学校では独りぼっちだったがこんなにあたたかくて最高の仲間に囲まれていた勝也。

今ならあの時ブレイズやBeastRushの誘いを断った理由も少し分かる気がする。


「あの後に『樹』の事とかもあったし色々あったけど…やっぱ優奈が現れてから全てが変わったよね」


「そりゃ間違いない」

「もうこれで勝也の面倒は見なくて済むみたいな」


「そんな…あたしなんか…」


「出た!得意の『なんか』攻撃」


あれほどブランカと仲間を大事にしていた勝也の気持ちが痛いほど伝わって来た。

そして自分にとって『姉』と呼べるこの3人と出会えたのも、全ては勝也を好きになったことから始まったのだ。


そんな話で楽しく盛り上がっていた時、優奈のスマホが鳴った。


「あれ?…Junさんだ」


そう言いながら出てみると


「もしもーし」


「おーい優奈~。勝也がグニャグニャになっちまってよぉ~」


「えっ??」

「手に負えねぇから来てくれ~」


急いでタクシーを呼び4人で向かう。


「もぉぉぉ~~いっつもみんなに迷惑ばっかり…」


「あいつらまた内緒で集まってやがったね」


「なんかヤな予感はしたんだ。素直に『行ってらっしゃーい』とか言うから」

「Banクンなんて『家でテレビでも見とく』って言ってたクセに」


Junに言われた店に到着し店内に駆け込むと、座敷で勝也が泥酔状態で転がっていた。


頭のそばに両膝をついて座りユサユサと体を揺らして


「ちょっと勝也!」


「ん~~……ん?…あ~…優奈だぁ♪」


モソモソ這いつくばるように前進して優奈のヒザに頭を乗せてくる。


「優奈だぁ♪じゃないでしょっ!!病み上がりのクセに何こんなに飲んでんのよっ!!」


「えへへ」

「笑い事じゃない!」


優奈が介抱しているその後ろでは


「で、また内緒の宴会ですか?」


「いや、その…内緒って訳じゃ…」

「そ、そうそう!たまたまBanが酒でも飲もうって…」


「はあぁぁ??平蔵が言い出したんじゃねぇかっ!!」


「Banクン?家でテレビ見てるんじゃなかったっけ」

「いや…あの…」


「わはは!だからいつもちゃんと言ってから来いっつってんのによぉぉ」


「アンタらも毎回同罪だっつってんでしょ」

「…あ……はい……」


その頃すでに勝也は優奈に抱き着き、膝枕で目を閉じていた。


「本気で寝ちゃったら起きないからもう連れて帰るね」


肩を貸して連れ出す優奈の後をゾロゾロと全員がついて出る。

タクシーを止めて乗り込み去っていく2人を見送りながら


「もう勝也は完全に優奈のモンだね」


「涼子は可愛い弟を取られちゃってちょっと寂しいんじゃない?」

「はぁ?やっと肩の荷が下りて清々してるっての!」


するとこの男達に目を向け


「ホンットあんたらっていつまでたってもバカみたいに仲いいんだね」

「ここまで来たらもう気持ち悪いんですけど」


「…ごめんなさい……」


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