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121 仲間 ①

 勝也の体調も無事元に戻り、学校へも行けるようになった。


もういつも通りの生活へと戻った翌週、最近恒例となっている涼子の家での4人女子会へやって来た優奈。


「お姉さんトコの病院に入院してたんだって?」


「そぉ!なのにさぁ、退院する日まで平蔵さんのお姉さんだって教えてくれなくて…挨拶も最後の日まで出来なくてすっごい失礼な事しちゃった」


「アンタ最初はお姉さんの事すっごい目で見てたらしいじゃん(笑)」

「だってぇ……しょっちゅう病室来て楽しそうに話してたんだもん」


「狙われてると思ったんだ?」

「……うん……」


「大体もし狙われてたにしたって勝也がそっち向かないでしょうよ」


「でも…そのちょっと前にアパートから出ていけって言われちゃったから…」


「…え?」


それから先日の事件の詳細を説明する。

最後まで黙って話を聞いたあと


「そりゃアンタが悪いよ」

「…わかってる」


「岳ってあのコでしょ?真面目で気の弱そうな感じの」

「その子のおかげだね」


「うん…ホンットにバカだったあたし」

「勝也はウソとか隠し事とか極端にイヤがるもんね」


「ちゃんとわかってたつもりだったんだけど…」


「そういえばさぁ、勝也がみんなと仲間になれたのってアイツがウソついた時じゃなかったっけ」


「…え?」


「あったあった、まだ中学生で週末だけこっち来てる頃だ」


すると涼子が頭を抱えて


「も~!あの血だらけの顔思い出させるなってば」


「ち…血だらけって……何があったの?」

「え~聞かなくていいよぉ」


「だってぇ…高1の秋までの話全然知らないんだもん。みんなと勝也が初めて会った時の事とか…」


「初めて会ったのってたしか2~3回目のスタジオん時だよね」

「そぉそぉ。中学生をメンバーに入れたとか言うからウチらが『大丈夫なの?』みたいな文句言って、そしたら『1回スタジオ来て聞いてみろ!』って言われて」


「半信半疑で聞きに行った時だね」


「いーなー…そんなに最初から……」



【彼氏のバンドでありながら自分たちにとってもすでにブランカは特別な居場所になっていた3人。

それぞれの彼氏が大絶賛する新しいベーシストといえども、中学生という年齢とその腕前がどんなモノなのか気になっていた。


百聞は一見に如かずとばかりにスタジオに呼び出され、初めて対面する日を迎えた。


「あ…えっと…はじめまして…」

「こんばんは~」


まだ緊張感丸出しの勝也と初めて顔を合わせる。


ブースの中で準備を始める勝也だが、まだアンプのセッティングもよくわからずJunや平蔵が入れ替わり教えている。


「ねぇホントに大丈夫なの?アンプもイジれてないじゃん」

「う~ん、まだムリなんじゃないかなぁ」

「ちょっとブランカに入るには…ねぇ」


ブースの隅に持ち込んだ椅子に座り小声で話し合う。

すると


「そろそろいけそうか?」

「あ、はい…」


「よし、じゃあお前らよぉく聞いとけよ」


涼子たちに声をかけると、Banのカウントで曲が始まった。



1曲終わる頃には3人の目は真ん丸になり


「…凄…ぉ…」

「ホントに中学生??」

「次元が違うよ…」


「どーだよ、まだこれでも歳とか関係あるか?」


「……ごめんなさい」


涼子たちもこの中学生ベーシストはブランカに絶対必要だと確信した。

リハが終わるとミーティングも兼ねて居酒屋へと向かう事になったのだが


「あの…俺、お酒も飲めないし時間も遅いんで…」


「あたし車だから送ってあげるよ」

「あ、えっと…叔母さんが迎えに来てくれるって…」


「そっか、じゃあ今日は仕方ないな。次は付き合えよ」

「…じゃあ…お疲れ様でした…」


勝也が帰った後


「すっごいコだね、あれはテンション上がるわ」


「だから言ったじゃねぇかよ」


「俺達も初めて聞いたとき信じられなかったモンなぁ」

「どんな練習したら中学生であんだけ弾けるようになるんだ?」


「でも確かに腕は間違いなくホンモノだけどちょっと大人し過ぎない?」


「まだ緊張してるだけなんじゃねぇか」

「それだけならいいけど、なんか…人付き合いに慣れてない感じがする」


その次の週もそのまた次もスタジオには必ず来るのだが、練習後のミーティングや飲み会だけは色々な理由をつけて参加しない勝也。


「あんま付き合いとかはしたくないヤツなのかな」


「ベースは弾きたいけどそれ以外はあんま親しくなる気はないとか?」

「どうもそういう感じには見えないけどなぁ、弾いてる時はすっげぇ楽しそうだし」


「あ!財布忘れた!…涼子に持ってきてもらお」


ほどなくして涼子がSyouに財布を届けに来ると


「え…勝也また帰っちゃったの?」


「あぁ、また叔母さんが迎えに来るからって」

「やっぱあの子はムリなんじゃないの?あんたらの『仲間』になれるタイプじゃないよ」


「…う~ん…でもなぁ……」


Syou達はこれから『ミーティング』と称した飲み会があるため涼子はそこで別れる。

そして車を運転しての帰り道、路地の陰からギターケースを抱きしめてフラフラと出てくる人影を見つけた。


「……えっ??」


急ブレーキをかけて車を停めると急いで車から飛び降りその男に駆け寄る。


「ちょっと!…勝也っっ!!!」


服はボロボロになり顔は頭から流れる血や鼻血で真っ赤。

靴も片方しか履いていない。


「どうしたのよっ!何があったのっっ!!」


涼子の顔を見てそのまま意識を失うように倒れそうになる勝也の体を必死に抱きかかえ、引きずるように車に乗せた。


「救急車呼ぶからちょっと待って」


「…呼ば…ないで…」


「えっ?…でもあんたそんなヒドいケガして…」


「…病院なんか行ったら…親とか叔母さんに…余計な心配……」

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」


「…だ…大丈夫…だから…」


迷惑や心配をかけたくないという必死の抵抗を見て


「…わかった、じゃあとりあえずあたしのウチに連れてく。このまま帰らせるわけにはいかないよ。それもイヤって言うなら救急車呼ぶ。どっちがいい?」


「……救急車だけは……」


大急ぎで勝也を自分のマンションに連れて帰った涼子。


肩を貸して部屋まで上がらせ、服を脱がせて血を洗い流し、SyouのTシャツを着せて傷の手当てをした。

幸い骨折などはなさそうだ。


「正直に言いな。何があったの?」


みんなと別れての帰り道、ベースを担いだ勝也に酔っ払いが絡んできた。

『ちょっとそのギター弾いてみろ』だの『貸せ』だのと周りを取り囲まれるもベースを守りたい一心で反撃はせず、抱き抱えたまま一方的にボコボコにやられたそうだ。


「なんで走って逃げなかったのよ、Syou達のトコまで戻ればよかったのに」


「そんな事したらみんなに迷惑が……」

「命に関わるかもしれないんだよ!」


下を向いてヘコんでいる姿を見て涼子が口を開く。


「ねぇ…やっぱりあんなに歳の離れたメンバーの中じゃムリなんじゃない?」


「…えっ?」


「今ならまだ間に合うよ、やっぱりブランカに入るのは…」

「そっ…それだけは…」


「アンタはどうしてブランカにいたいの?みんなと距離置いて…打ち解けようとしてるようには見えないよ」


「…えっと…それは…」

「みんなアンタともっと仲良くなって『仲間』になろうとしてるのに」


「……仲間……俺…も?」


仲間という言葉に反応する勝也。

どうやらこの子には何か事情がありそうだと察知した涼子は


「話してごらん。じゃなかったら今ここでみんな呼ぶよ?」


ここまで言われて仕方なく勝也は自分の想いを話し始めた。


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