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113 過ち ④

 勝也と優奈が出て行った教室では


「さすがに今回はダメかと思ったぁ…」


安心した途端ボロボロ泣き出すみさ。


「岳ちゃんのおかげだね」

「うん、ありがとう岳ちゃん」


「いやそんな…僕は…」


1年の頃、周りからイジメられていたとは思えないほどみんなの頼りになる男になった岳。


「俺だって親友のつもりだったけどやっぱ岳には勝てねぇや」

「勝也をぶん殴って言う事聞かせるって岳がこの学校で『最強』って事じゃん」


「そんな…からかわないでよ…」

「でもある意味間違ってはないよね」



その頃、学校を出てアパートに向かっていた勝也と優奈。

勝也が前を歩き、その後ろを優奈が黙って着いて行く。


家まで半分ほどの距離を無言で歩いたころ


「優奈ぁ」


「……はい」


「俺と付き合う前と今で変わった事ってなんだ」


「…変わった事?」

「前なら平気でしてたけど今は俺に怒られるからしなくなった事」


「…え……えっと……」


「夜遊びと朝帰りと…他には?」

「それはそうだけど…でも他にはないかな…」


「その夜遊びの時とかは他に男も一緒にいたりしたんだろ?」

「…その頃はまだ勝也と知り合ってなかったから……ごめんなさい…」


「またそうやって前みたいに遊んでいいよ」


「……え?」


「これからはもうお前のする事制限したりしねぇから好きに遊べ」


「…なんでそんな事言うの?」

「そしたら約束破ったことにもならないしお前も我慢しなくて済むだろ」


「ガマンなんてしてないもん」


「このままじゃいつか後悔するよ、若いウチにもっと遊んどけばよかったって。せっかく高校生でいるのに俺の事ばっかりで全然遊んだりしてねぇじゃん。これからはもっといっぱい遊んで、もし俺よりもっとお前に似合うヤツが見つかったらそん時は俺の事捨ててそいつと一緒に…」


「やめてよっ!!」


立ち止まり、大きな声で勝也の言葉を遮る。


「…どうしてそんな事言うの?あたしは幸せになりたいから勝也と一緒にいるの。勝也とじゃなきゃ幸せになれないってわかってるから傍にいるの。

夜遊びするより勝也のご飯作って待ってる方が楽しいの。朝帰りなんてするより勝也の腕枕で目覚める方が何倍も幸せなの。勝也にやれって言われてやってるんじゃない…あたしが傍にいたいから自分で選んだの!…そんな冷たい事言わないで……」


勝也の背中に向けて泣きながらぶつけた言葉。

それは紛れもなく本心で


「勝也があたしのことイヤになったとしても…どれだけ嫌われたとしても…あたしは絶対勝也から離れない」


それからアパートに着くまで勝也が口を開くことは無かった。


いつもよりも長く感じた道のり。

そしてようやくこのアパートに勝也と共に帰ってこれた。

心の中では喜んでいたものの、あれ以来口を開かない勝也の前では笑顔を見せる事さえためらう状況だった。


カギを開けて中に入る。

リビングはガランとしているものの寝室の扉を開けると


「…はぁぁ……」


ため息が出るほど荷物が積まれている。


「ごめん、ちょっとあたしのモノ置き過ぎだったね…」


「こうなりゃいっその事思いっきり模様替えしちまうか」


「…え?」

「ここまでモノを移動させることも滅多にねぇだろ、色々試してみよーぜ」


「…い…いいの?」

「早くしねぇと勝手に置き場所決めちまうぞ」


「あ!ダメーッ!!」


それから2人でさっきまでのぎこちなさをかき消すようにあぁでもないこうでもないと置いては動かし、また一からやり直してみたりしてようやく片付けがひと段落した。


「なんか広くなったような気が…」


「ホントだ。置き場所によってこんなに変わるんだな」

「これでまた新しい家具とか置ける♪」


「…まだ増えんのかよ」

「ダメ?」


「お前のやりたいようにしていいよ」


ふと気づくとまだ制服のままだった2人。

それを着替えようとした優奈に


「あ、ちょっとお前ンチ行こ」


「なんで?」

「どうせまたこの世の終わりみたいな顔してお父さんたちに心配かけたんだろ?俺が顔見せとかないと安心してくれないだろうし」


「…そういうトコ好き♪」


相変わらず全てお見通しだった。

それから2人でアパートを出て優奈の家へと向かいながら


「今日はこのままあたしはアパートには戻れないんだよね」

「そりゃそうだろ」


「うん…わかった…」


さすがにここでわがままは言えない。


家に着くと玄関まで両親が飛んできて


「おぉ…よく来たね。あがりなさい」

「遅くにすいません、お邪魔します」


リビングへ通されると母がお茶を用意しようとし始めたが


「あ、お母さん…すぐ帰るんで話だけ聞いてください」


それから今回の一連の話を勝也の口から包み隠さず説明した。

一度は別れたつもりの状態だった事や優奈に出ていけと言ってしまった事。

そしてまたやり直そうと決心した事まで。

それと同時に優奈の無断外泊が遊び歩いていた訳ではなくアパートで荷物をまとめていたのが理由だった事も伝わった。

だが連絡なしに帰ってこなかったのは事実であり、そこはもう一度怒られた。

そして


「いいか優奈。私は相手が勝也君だから交際を許したんだ。その勝也君のいう事を聞けないのなら彼女でいる資格はない。この先他の誰かを連れてきたとしても私が認めることは無いという事だけは肝に銘じなさい」


「…はい」


「で、片づけはもう済んだのか」


「もう後は細かいモノぐらいなんで僕一人で大丈夫です」

「そうか、じゃあこのまま優奈には償いをしてもらおうか」


「え……償い?」


「今回の騒ぎの罰として今からその残りの細かいモノをキッチリと自分で片付けてきなさい。自分の荷物なんだろ?勝也君の手を煩わすな」

「……え?」


相当こたえた上に相当反省したはずの優奈に対する父の思いやりに口元を緩める勝也。


久しぶりに安心した笑顔を見せる両親に見送られてまたアパートへと歩く。


「そういえば俺達はいつになったらメシ食えるんだ?」

「あ!そういえば何にも食べてない…おなか減ったぁ!」


あの日以来ほとんど何も口に入れていなかった優奈も急に空腹に襲われる。


「なんか作る」

「今日はコンビニかなんかでいーんじゃね?」


もう結構な時間のためこのままコンビニへと行き先を変えた。


買い物をした帰り、アパートの前まで戻ってくると一台の車が止まっている。

階段の上を見上げると男が2人玄関の前にいた。


優奈はイヤな予感に襲われるが勝也は構わずその階段を上がっていき


「…何か用か?」


キレる訳でもなく冷静な声でその男達に問いかけた。


「えっ…あ、ここって優奈ちゃんの家じゃ…」

「あ?それも間違いじゃないぞ、一緒に住んでっから」


「…一緒にって…ど…同棲?」


階段の下を見ると俯いた優奈が立っている。


「で、何か用かって聞いてんだ。優奈に用があるなら俺が聞く」


「…いや…ちょっと心配だったから様子見に…」

「女の家にこんな遅くに来て『心配』だぁ?てめぇら優奈が一人暮らしだと思って来たんだろうが。下心見え見えなんだよ!」


徐々に声を荒げる。


「…いや…別にそんな…」


「こいつは俺の女だ。俺以外の男と遊ぶ事も連絡取る事もない。わかったら帰れ」


俺の女…乱暴な言い方ではあるが勝也にそう呼ばれるのは嬉しかった。


玄関前では完全にビビりまくっている浩明だが、隣にいた雄一が


「あの……ひょっとして元ブランカのKATSUYA…さん?」


「あ?」

「…え?」


少し驚いた顔で固まる。


「…だったらどうした」


すると


「はああぁぁぁぁぁ~~…そりゃダメだぁ……」


「え?ブランカって…お前がよく聞いてるあのCDの?」

「なんか見た事ある顔だなぁと思ったんだ。ダメだよ、こんな人相手にして勝てる訳ない。やっぱさすが優奈ちゃんだね、すっごい彼氏いるんじゃん」


「…あ…はい」


「ごめんなさい。正直…何とか優奈ちゃんと仲良くなりたいって思ってた。でもこんな凄い彼氏いたんじゃ100%勝ち目無いから潔く諦めます(笑)」


「…はい、ごめんなさい」

「謝る事じゃないよ。ごめんね、俺達のせいで怒られちゃったんでしょ?」


「いえ、それは…」


「KATSUYAさんごめんなさい。悪いのは俺達なんで…優奈ちゃんは悪くないんです」


「…あ…あぁ、いや…別に…」

「じゃっ!もうここにも来ないって約束します。お騒がせしました!」


名残惜しそうな浩明を連れて帰っていった雄一。


「なんなんだまったく…。っていうかなんでここの場所知ってんだ?」


「…あ…こないだ…あの後つけられてたみたいで…」

「はぁ?…ったく…無防備過ぎんだよお前はぁ!」


「ごめんなさい…」


せっかく元に戻れた矢先にまた空気が悪くなりかける。

そのまま黙って部屋に入り、買ってきた遅めの夕飯を食べ終わると残りの片づけを続ける優奈。

模様替えしている時のような楽しい会話も無くただ黙って整理を終えると…


「…終わった」


「あぁ」


「…ごめんなさい」

「ったく…もうちょっと気ぃつけろよ!いつでも俺が横にいるとは限らねぇんだから。もしもの事があったらどうすんだよ!」


「はい…」


「今日という今日は朝まで寝かしてやんねぇからな」


「……え?」

「その前に風呂沸かして来い。一緒に入るぞ」


「…あ……うんっっ!」


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