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108 信用 ②

 廊下を一気に駆け抜けちょうど開いたエレベーターに飛び込むと1階を押した。


そしてスマホを取り出し勝也に電話を掛ける。


「ホントに殺してやりたい、あいつ」


「いるんだね、あんなドラマに出てくるようなクズって」

「あの時なんでみんな勝也を止めたんだろ…ヤッちゃえばよかったのに」


周りが口々に文句を言う中、ただ無言でスマホを耳に当てている優奈。


「なんで出ないの…」


1階に到着すると開いた扉からまた勢いよく走り出した。


ゲートのバーを弾き飛ばすほどの勢いで駆け抜けると一目散に駅を目指す。

その間も電話をかけ続けるが、呼び出しては切れ、またかけ直して呼び出しては電話が切れる。


「大丈夫だって、勝也が落とされる訳…」


するとスマホを耳に当てたまま


「あの人はあの時たった2、3言会話しただけで勝也っていう人間を見抜いた。ブランカの事も何も知らないのにたったそれだけで勝也の事を好きになったって言ってた。外見にもなんにもとらわれずにただその中身だけに気付いて好きになったとしたら…」


「で、でも優奈がいるんだし…」

「欲しいものはどんな手を使ってもって言ってた。…イヤな予感がするの」


何度かけても勝也の電話はつながらない。

駅に着くと急いで地元までの切符を買い電車に飛び乗った。


 もう何十回かけただろう。

電車に乗っている間もずっと何度もかけ直すがそれでも電話がつながることは無かった。もどかしいぐらいに電車が遅く感じる。


ありさも康太に電話をかけ、みさや千夏も手当たり次第にいつもの仲間に電話を掛けるが誰一人出ない。

本当に優奈がついた嘘のように学校が大騒ぎになっているのか…勝也は美緒に連れ去られてしまったのか…最悪の事ばかりが頭をめぐる。


いつもの駅に着いて改札を抜けたところでまた電話をかける。

もう優奈のスマホの充電はほぼ無くなりかけられるのはこれが最後かもしれない。


するとようやく


「…もしもし」


「あっ!!…なんで電話出ないの!何回かけたと思ってんのよっ!!」

「ご、ごめん……」


「今どこ!誰と居るのっ!!」


「あ、いや…その…」


ハッキリと答えない勝也。

するとその電話の向こうから


「だーれー?」


明らかに男の声ではない。

そしてそれは勝也に対して向けられた言葉だという事は確実だ。


「誰と…いるの?」


「いや、ホントにたまたま誘われて…偶然お前がいない日でその…」

「どうして…」


優奈の目に一気に涙が溢れる。


やはり勝也は美緒のところに行ってしまった。

イヤな予感はやはり的中した。


その優奈の表情でみさ達もそれを知る。


「なんで…」


「…ふたりでいるの?」

「え?いや、みんないるよ」


「……みんな?」


「うん、みんなで遊んでた」


「遊んでた?…今ドコにいるの?」

「だからその…芽衣ちゃんの店」


「え…ねぇ、誰といるの?」

「だから…ミキちゃん」


「は?『ミキ』ちゃん…『ミオ』ちゃんじゃなくて?」

「ミキちゃんだよ、岳の妹の」


「……え?」


そこまでで優奈のスマホの充電が切れた。

ここからなら芽衣のバイト先である喫茶店はそう遠くない。

4人がダッシュでそこを目指し、息を切らせながらその扉を開けて駆け込む。


「…あ!」


一緒に入ってきたありさを見て康太もバツが悪そうな表情になる。

真剣な表情の優奈達にいきなり


「ちっ、違うんだよ!今日、急に岳がミキちゃん迎えに行った後時間が空くって言って…そしたらミキちゃんがみんなに会ってみたいって言いだしたらしくて…」

「たまたまお前らがいない日だったけど…みんなミキちゃんに会いたいって事に…」


「ぼ、僕が悪いんだ!たまたま今日だったから…あの…」


口々に言い訳を始める男子達だが、そんな事など耳に入っていない。


「…誰か来なかった?」


「誰かって?」

「女の人…この前学校に来た芸能人の」


「芸能人?いや、来てないけど」

「…え?」


「なんで?」


「じゃあ西野って女の人から電話とかなかった?」

「お~、そういえば変な女から電話あった。…なんで知ってんの?」


「…なんて?」


「え…『今、時間ありますか』っていうから『無い!』っつって切った」


「切ったぁ?」


「うん、だってかくれんぼしてる最中だったから居場所バレるし…」

「かくれんぼって…」


「その後何回もかかってくるからメンドくさくて音切ってたんだ。だからお前の電話も…」


美緒のアタックはどうやら会話さえもしてもらえないまま砕け散ったようだ。

すると


「…はああああぁぁぁぁぁ~~っ……………」


大きなため息と共に体中の力が抜けたようにその場にあった椅子にへたり込む優奈。


「な…なんなんだよ……」


「電話出てくれないからこんなメンドくさい事になるんじゃんかっっ!!」

「…だって……」


そこで蘭が


「ところでなんでそんなに慌ててんの。今日取材だったんでしょ?」

「それが…」


みさやありさの口から今日の出来事が話される。

そして西野 美緒の狙いが勝也であった事も。

すると


「あのさぁ、俺ってそんなに信用ねぇのか?」


「…え?」


「こないだも知らねぇ女と俺がラブホ入ってくトコ見たとかなんとか…俺ってそういう事するようなヤツに見られてんの?」

「いやそういう訳じゃ…」


「なんだっけ、その…石野?だっけ」


「…西野でしょ?」


横から蘭に突っ込まれながらも徐々にボルテージが上がり始め


「おぉ、それ。そんな顔も覚えてねぇ様なヤツにいきなり声かけられたって」

「だって欲しいモノはどんなことしても手に入れるって…」


「俺はモノじゃねぇよ!いくらその……石野?」


「に・し・の!!」


「おぉ、その『岸野』ってのが…」

「もう好きに呼びなさい……」


「何言ってこようが俺が誘いに乗るか乗らないかぐらいわかんねぇのかよ!」


「…ごめんなさい……」

「大体なぁ!お前が俺の事信用してねぇからこんな事に…」


徐々に勝也が怒り始める。

周りが『ヤバい…』と感じ始めた頃


「ねーねー、このおねーちゃんだーれ?」


さっき優奈が電話越しに聞いたのはこの声だった。


「勝也君の彼女だよ」


「えー?ちがうよー!かつやのかのじょはミキだもんっ!!」

「………え?」


「ねーかつやー。まえにプールいったときかのじょいないからミキがかのじょになったげるっていったもんねー」


「ん?あー、なんかそんな事言ってたなぁ」


「こら、ミキ!『かつや君』って呼べって何回も言ってるだろ!」

「かのじょだからいーんだもん!」


どうやらミキは一緒に行ったプール以来勝也が大のお気に入りだったらしい。


「まったく…安東さんごめんね?」


「…あ、いや…全然そんな…」


ミキと遊べると聞いてみんな集合し、かくれんぼや鬼ごっこなどをして遊んでから最終的に芽衣の喫茶店でジュースを飲んでいただけのようだ。


ミキにベッタリくっつかれて上がりかけていた勝也のボルテージも冷め、優奈達も含めてワイワイと楽しく盛り上がる中


「ミキ。そろそろ母さんの仕事終わるから迎えに行くぞ」


「えーまだあそびたいぃ!」

「それはまた今度な。みんな今日は遊んでもらってありがとう。安東さん達も…心配かけたみたいでごめんね?」


「あ、そんな…あたしの勘違いだっただけだから。こっちこそごめんなさい」


渋々岳に連れられて席を立った時


「おねーちゃん、なまえなんていうの?」

「ん?おねーちゃんは『あんどう ゆうな』っていうの。よろしくね」


「じゃあ、ゆーなちゃん。しかたないからミキがいないときだけかつやのよこにいてもいーよ」


「…え?あ、あぁ…ありがとう…」


「でもねー、かつやのおよめさんになるのはミキだからわすれないでね?」

「…あ、そうなんだ…」


それだけ言うと芽衣に抱き着き、名残を惜しんでから帰っていったミキ。


呆然とする優奈の横からは蘭が笑いながら


「ライバルはこっちだったねぇ、ゆーなちゃん♪」


「…うん。しかもかなりの強敵だ(笑)」


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