101 親友 ②
店を出るともう辺りは夕暮れになっていた。
夕飯をどうするか決めていなかった優奈が
「ねぇ晩御飯どうする?どっかで食べてく?」
「ん~、今ちょっと食べたトコだし…それに…」
「ん?」
「優奈はもう帰んな」
「え、どうして?」
「やっぱアンタがいるとすっごく楽しかった。久しぶりに遊べて嬉しかったよ。でももうそろそろ禁断症状出る頃じゃない?」
「…え?」
「お留守番してるんでしょ?旦那さん」
「…あ……」
「勝也のおかげで久しぶりに遊べたんだからもうそろそろ優奈を返さないとね」
「そんな…」
「また行こうよ、勝也も行っていいって言ってんでしょ?」
「うん…そうだけど…」
本当に楽しかった。
まだ一緒に遊びたいという気持ちもあった。
だが勝也に会いたくなってきたのも事実だ。
それをふと考えると
「ねー、だったら呼んじゃう?」
「……え?」
「呼ぶって……勝也を?」
「うん」
「いや…いやいやいや……来ないでしょ」
「なんで?来るかもしんないじゃん」
「いや、でもさすがに呼び出したりしたら怒られ…」
「じゃあもし電話して来るって言ったら呼んでもいい?」
「そりゃもちろんいいけど…」
早速スマホを取り出して電話を掛ける。
「もしもーし。あ、今まだみんなといるんだけど、お迎えついでに一緒にご飯行かない?うん…うん…○○駅…うんわかった。じゃーねー」
「え…マジで?」
「来るって」
「信じらんない…」
「あ、でも『男、俺一人かよ』って言ってたからこうなったら康太と陽平も呼んじゃう?」
「なんか凄い事になってきたね(笑)」
すでにその時には康太に電話をかけていたありさ。そして千夏が陽平に電話する。
2人とも「優奈も一緒で今から勝也も来る」と聞くと即答でOKした。
駅前でブラブラと時間を潰しているとまず陽平が、その後すぐに康太が合流し
「優奈が一緒って珍しいな」
「おぉ最初聞いてびっくりした」
「そんなに責めないでよぉ」
「責めてるわけじゃないよ(笑)」
ワイワイと楽し気に盛り上がっていると遅れて勝也も到着した。
「学校じゃねぇんだから大声でしゃべってんじゃねぇよ」
「あー、おっそーい!」
「わ…ホントに来た」
まだどこに行くかも決めていないと聞くと勝也が自分のバイト先の居酒屋に電話し、あっという間に予約を取った。
そしてその店に着くと個室へ案内されて
「このメンバーでご飯食べにくるなんて初めてじゃない?」
「昔一回勝也んチにみんなで押し掛けたろ」
「あったあった!なんか1年の頃に戻ったみたいだね」
「って事は俺はまた康太に絡まれんのか」
「それ言うなって~…未だに後悔してんだから、俺」
まだ飲み物も届いていないウチから大爆笑だった。
勝也のバイト先という事もあり、未成年で高校生ながら少しはお酒も出してくれるという店長。そして頼んでいないはずの料理もどんどん出てくる中
「こうやってみんなで会えば優奈も来やすかったんじゃん」
「別に普通に誘ってくれればいつでも来るってば(笑)」
「だって優奈は誘っちゃダメみたいな空気あったもんなぁ」
「何気ぃ使ってんだよ気持ち悪りぃ」
「でもさ、こうやって好きに遊べるのもあと1年だもんね」
「そぉだな…卒業しちゃったらなかなか会う事ないかもな」
少し寂しさも漂い始めた頃
「そんなモン気の持ちようだろ」
「…え?」
「会う回数が減ったって関係が途切れる訳じゃねぇよ。ホントに必要な相手ならどれだけ間があいたってそんな空白は一瞬で埋まるモンだ。俺だって、さっきの康太じゃねぇけど1年の最初の半年間お前らとなんにも話してなかったのが後悔でしかない。バカだったなぁって思うもん」
「ホ…ホントに?」
「俺にも…そんな風に思ってくれるの?」
「今考えたら、お前があんだけゴチャゴチャ引っ搔き回してくれたから今があるんだぞ?お前がいなかったら俺も今ここにいねぇかもしれねぇしな」
人目もはばからず康太は泣き出した。
今までずっと後悔してきた事を勝也が綺麗に清算してくれた気分だった。
それからの康太はいつも以上にハイテンションになり、ありさに怒られるほど酔っぱらってしまう。
店を出てからの帰り道、本当なら電車に乗るはずの所だがみんなワイワイ話しながら歩き始めた。
みんなは普段から夜遊びに慣れている。
そして優奈も今日はアパートへ帰る日な上に勝也も一緒とあって時間を気にする必要もなかった。
そして何より今が楽しすぎてまだ帰りたくなかったというのも本音だろう。
しばらく歩いていくとついに康太が気持ち悪いと言い出す。
慌てて近くのコンビニを探し、ありさが水を買ってきて康太を隣の公園で休ませた。
ベンチに横になった康太を世話するありさを見てみんな微笑みながら、いつしか優奈と陽平と千夏はジャングルジムやブランコで遊び始める。
そんな中大きな樹の下にあるベンチに腰かけていた勝也の横へみさがやってきて
「今日はありがとね」
「…何が?」
「勝也が言ってくれたんでしょ?たまにはウチらと遊んで来いって」
「俺はなんにも言ってねぇよ」
「ふ~ん♪」
しらばっくれる勝也に敢えて突っ込まないみさ。勝也の性格はわかっている。
すると
「なぁ、みさ」
「ん~?」
「これからはまた昔みたいにたまには優奈も連れ出してやってくんねぇかな」
「どうして?」
「あいつはいつも俺の世話ばっかりで自分の事なんて全部後回しなんだよ。出かけたと思えば俺の服とかばっか買ってきて自分のモンなんて全然買わねぇし、俺が遅くなる日でもいつもメシ作って帰りを待っててくれる。でもホントならもっとお前らと遊んだりしたいはずだろ?」
「そぉかなぁ」
「…え?」
「やれって言われてやってるんなら確かにそうかもしれないけど、でも優奈は自分がしたいからそうしてるんじゃないの?勝也の世話をするのが優奈の幸せなんだよ。ウチらはね、『どうせ優奈誘っても来ないから』とかそういう意味で声かけなかったんじゃないよ。勝也の為になにかをしている優奈が一番幸せそうだから、いつもその顔でいさせてあげたかったの。確かにウチらも優奈と遊んだりしたかったけど、でもあの子が一番笑顔でいられる場所っていうのはやっぱり勝也の隣なんだよ」
「…………」
「ま、久しぶりに遊んでまた火ぃついちゃったからこれからは誘うけどね」
「朝帰りはダメだぞ」
「はいはい(笑)」
「あ~!!勝也とみさがイチャイチャしてる~!!!」
「え~っ!!ヤだぁぁぁぁぁ!!!!」
急に3人が突進してくると一気に周りがにぎやかになってしまった。
「うるせぇヤツらだな、あっちで遊んで来い!」
「そーだよ、もうちょっとで勝也の事落とせそうだったのに」
「ダメェッ!!絶対あげないっ!!!」
「冗談ですってば…」
そこへ
「ねー、康太ダメだ…本気で寝ちゃったぁ」
「もうその辺に捨ててけよ」
「後からあたしが怒られるじゃん」
「ったくしょーがねぇヤツだな。陽平、行くぞ」
「あいつ勝也んチの帰りもあんなんだったぞぉ」
男2人で康太を抱えるとタクシーに押し込んで家まで連れて帰り、みんなが解散したのはもう明け方近かった。




