第十八公演 旅の女神の贈り物
12月20日 投稿
俺たちはゴーレムの核を手に入れた。だがまだもう一つ。遺跡の調査が残っている。
「この扉か…。しっかし重そうだなこれ…」
前にそびえ立つのは苔むした岩でできた扉だ。どう見ても重そうである。
試しに扉を全員で押してみた。ギギギギ。
あれ?意外とアッサリ開いた?
「もしかして…ゴーレムさんを倒すのが条件なのでは?」
とシエルが言う。真実は分からないが開いたのでよしとしよう。開いた扉からは今まで俺たちがいた空間よりも冷たい空気が流れ込む。
俺たちはドキドキしながら扉の奥へ入った。
「…なんにもない…」
しかし扉の奥には何も無かった。あるのは何に使ったか分からない祭壇のみ。すると、シエルが何かに気づいた。
「ここへ訪れし者に祝福を…。祭壇に手を翳せ。さすれば祝福を授けん。」
「むむ!な…なんだそれは!滅茶苦茶気になるではないか!」
「落ち着け。落ち着け。流石賢者様、古代文字も読めんのな。」
シエルが言う言葉にやはりなんか刺激されたらしいアリスは興奮している。それを嗜めるレオン。
「祝福ってなんだ?全員で手を翳してみるか?」
取り敢えず依頼達成のためには必要だろう。何もないならそれでいい。つーか何もないでくれ!頼むから!
「お宝じゃねーのか…。」
「ふっふっふっ!私も遂に伝説のダークエンジェルに!」
「ダークエンジェル?そんな方がいらっしゃるんですね!は!わ…私もダークエンジェルに?!」
宝物じゃない事に落胆するレオン。そして何やら謎の生命体になろうとするアリスに、それを突っ込まず自分もその謎の生命体になると思いこみ始めるシエル。…シエルさん?もしや天然ってやつか?
だが全員手を翳してくれる。そんな素直なお前らが好きだぜ!!
俺たちが祭壇に手を翳した。次の瞬間…。祭壇がパァァァと光始めた。すると
「ふわぁ。よく寝たぁ。あれ?アンタら誰?」
祭壇に何やら謎の生命体が座っている。白い髪の毛に真っ赤な目をしている。小さな女の子。しかも結構可愛い。あと背中に白い蝶々みたいな羽が生えてる。
「こ…これが!ダークエンジェル!?」
「凄いです!ダークエンジェルさん可愛いですね!」
…俺らはもう突っ込まない。俺とレオンはそう誓った。
「誰が!ダークエンジェルよ!私はメロディアよ!"旅の女神"!」
そうダークエンジェルもといメロディアが名乗った。"旅の女神"…認めた冒険者に力を授けると言われる存在。いや…え?
「はぁぁぁぁ?!た…旅の女神ってマジでいたの?!」
「うっさいわね!この悪人面!」
グサっ。俺はドサっと崩れ落ちた。女神様って怖いんですね。真実だからなぁ…でも。
「ご…ごめんなさい…。そ…その…てっきり伝説かと…」
俺が謝ると、メロディアは慌てた。
「ちょっと…。そんな怯えないでよ?悪かったわよ。いきなり怒鳴っちゃって。」
「い…いやその俺元々…こういう性格なんで」
「マジか…アンタ苦労してんのね。」
なんか同情してくれた。だがお前が俺の気にしてる悪人面を指摘したのは許さんぞ!
「それより!女神様はどうしてここに?」
するとズイッとメロディアと俺の間にシエルが割り込み始めた。
「意外とヤキモチ焼きなのか?」
「ルルに見せらんねーぞこれ?血の雨が降る」
なにやらレオンとアリスがヒソヒソしている。何かあったのだろうか?
「この神殿元々私を祀るための神殿なのよ。いやぁ人が来てくれるの何千年ぶりかしら。」
「ふむ…静寂と孤独か…。くくく私の最も欲する空間だな!」
「…この子何言ってんの?」
「いや気にすんな。こういうやつだ。」
話の腰を折るアリスに怪訝な顔をするメロディア。察してください。13歳から14歳くらいがよくなる奴だから。レオンもほぼ諦めムードで雑にそう告げた。
「まぁいいや!アンタらスキル持ってる?取り敢えずステータスオープンしてみ?」
"スキル"…ステータスや職業毎の能力とは違う。特別な能力。かなり珍しいらしく、俺たちの中で持ってる奴はいない。
「あぁいない感じね?んじゃま!ちちんぷいぷいと!」
メロディアが手を上に上げると俺たちの体が光出した。
「ほらほら!自分たちのステータス見てみ?」
俺たちはステータスをオープンした。するとスキルの項目が増えている。
「俺のは"隠密"と"視線保有"か…」
ざっと説明を見ると"隠密"は完璧なまでに気配を完全に消せる。"視線保有"は真逆で寧ろ周りが見えないくらいに自分に視線を集中させるものらしい。俺らしい地味な能力だが、旅芸人としてはピッタリである。
「お!二つ持ち?珍しい。一度に二つ受け取れる人ってなかなかいないんだけど。まぁなんか地味なスキルだけど」
どうやらレアらしい。やったね。でもボソッと地味って言ったの聞こえたぞ?
他の皆んなも自分のステータスを確認している。取り敢えず確認終わるまで待とうかな…
ルル何してっかな…
用語説明
旅の女神
絵本や物語などに登場する冒険者を導くとされる女神。その存在は冒険者達の間で伝説とされている。