第十五公演 遺跡
二月十七日 投稿
俺たちは遺跡に入った。中はなんとなくカビ臭くて湿っぽい。そして冷たい空気に満たされている。
「ふおぉ♡こっこれが遺跡!ザ・冒険って感じでドキドキしますね!」
シエルは目をキラキラさせてはしゃぐ。
「シエル?嬉しいのは分かったけど。静かにな?結構遺跡の中は声響くから。」
俺は静かに注意した。遺跡や洞窟などの音が反響する場所で大きい音を出すのは御法度である。シエルはすぐにハッとし手で口を押さえる。素直で可愛いはズルいよね。
「しっかしシエルって遺跡初心者なんだな?冒険者は大概知ってるぞ?その基本」
「ふ!私も当然知っておるぞ!」
と疑問を抱くレオンとドヤ顔を連発するアリス。アリスって俺らのパーティ入って一日なのにドヤ顔の回数俺らの中で一番多いな。
するとシエルが少し困った顔をして
「えっと…私確かに賢者なのですが….冒険者として活動した事ないんです。」
「え?そうなのか?」
「はい…賢者と言っても、私の家族に無理やり勧められてなっただけなんです。
本来は賢者となった後は、魔法学校教師か魔法省に入る事を親に決められてたし…」
賢者という職業は魔法のエキスパートである。そのため冒険者としてだけではなく、魔法を学ばせる養成学校の教師へ進んだり、魔法省や国家魔導士として城勤めなどの道に入る人たちがいる。
「でも…私どうしても…旅芸人さんの芸が忘れられなくて…家出したんです。もしかしたら私も旅芸人さんに出会えると思って…ふふふ。
夢が叶って良かったです!」
そう言って花が綻ぶ様に笑うシエル。俺もこの子を誘って良かったと改めて思った。
「まぁ…その…冒険者初心者だから…加減が上手くできないですけど」
確かに初っ端から最上級魔法をバカスカ打ってるもんな…。
取り敢えず俺たちは遺跡での注意点等をシエルに指導しながら進んでいく。
「良いか!このようにだ!遺跡に刻まれた紋様や凸凹したとこは危険だぞ!トラップかもしれん!」
「はい!先生!」
特にアリスが張り切ってる。シエルもノリノリ。なんか和む〜。んで着いてきた魔物達もノリノリでアリスの説明を聞いている。
「大所帯すぎんだろこれ…」
レオンがボソッと呟く。
「そしてもう一つ!そういう分かりやすいトラップならいいが、見るだけでは分からんトラップも「!バカ!待て!」ふぇ?」
カチっ
すると何やらスイッチの入った音が聞こえた。すると俺たちの立ってる場所の床に穴が開いて。
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」」
「ごめんなさぁぁぁい!」
「わ〜♡初トラップです!」
俺達は落下して行った。
「うぅごめんなさい〜」
メソメソと泣き出しているアリス。
「いや!大丈夫だって!な?俺もあるよ?そういう経験!」
俺も前のパーティでやらかして、その日はパーティのメンバーから無視されたっけ…
あれ?頑張ってたつもりだけど…追放される理由もしかして…やっぱ俺が悪いんじゃん…
「うぅ…」
「だぁぁ!めんどくせぇからテメェまで泣くな!アリス困ってんだろ?」
困惑した顔をするアリスと泣き出した俺の頭をわしゃわしゃ撫で始めるレオン。
こいつのたまに発揮するお兄ちゃん力なんなの?!
「初遺跡に初トラップに初冒険に初パーティに初依頼!!きゃあ♡初めての事が一杯で、楽しいです!」
キャッキャとはしゃぐシエル。この状況ではしゃげる精神がスゲェよ。
他の二人+魔物達も同じ事を考えてるらしい。
….取り敢えずここから脱出しないとな…
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