第十三公演 依頼
12月15日 投稿
俺たちは依頼を受けて、ルルの待つ馬車へと向かう。
「フン!貴様ら!精々私の為に働くのだな!」
「んだと?このガキンチョは生意気だなぁ」
「うお!きっ貴様!離せ!髪がぐちゃぐちゃになってしまうぅ…」
アリスのなんか偉そうな発言に、レオンが反応してぐちゃぐちゃと乱暴に頭を撫でている。
何だろう。これが生意気可愛いって奴?というか俺がレオンと同じことしたら通報されそう。
するとシエルが俺の服を摘んできた。
「どうしたの?シエル?」
「あの…団長さん?先程は助けて頂きありがとうございました。」
ギルドでのあの騒ぎの事か…。あんま俺かっこよくなかったよなぁ…。結構吃っちゃったし…
「いいよ?お礼なんて…、俺は一応は団長だしさ?団員を助けるのは当たり前だろ?
と言うかその…俺の助け方かっこ悪くてダサかったし…。あはは」
ああいう時に颯爽と助けるのがかっこいいんだろうなぁとか思ったり…。俺が苦笑を浮かべるとシエルがブンブンと首を横に振った。
「そんな事ありません!団長さん。人と話すの苦手なのに…素顔のまま助けてくれましたよね?急いできてくれたんでしょ?仮面を付ける余裕がないくらいに…
それだけで嬉しいです!カッコ悪くないですよ!寧ろカッコよかったです!」
シエルは俺に力強く、力説した。するとシエルは直ぐに顔をボンっと赤くした。
「すっすみません!変な事言って…。あっでも本当の事ですよ!嘘じゃないです!」
俺はそう言ってワタワタと言い訳しようとするシエルが面白くて吹き出した。
「わっ笑わないで下さい!」
「いやあの…ゴメン!でも…そっか…俺の行動は正しかったんだ。」
なんかかっこよさだのダサさだのどうでもよくなってきた。
その様子をぐちゃぐちゃにされた髪を手櫛で直しながらジト目で見てくるアリス。
「おい…貴様らまさか…恋仲なのか?」
まさかの爆弾発言に俺は否定した。よく考えてもみろ!こんな美少女に俺なんか当てがうべきではないのだ!
「ち…違うよ…。た…ただの…なか…ま。」
するとアリスは俺の声を聞き取り、納得した様だ。あれ?俺の小さい声を聞き取ってくれるは聞き分けいいわ。この子本当は良い子なのでは?
「…なんか、ルルさんの気持ち分かるなぁ」
ボソっというシエルの台詞にレオンは
「三角関係…」
ルルのユーリへの溺愛ぶりを知るレオンは一人白目になっていた。
「あ!おかえりー!ってあら?その子は?」
馬車に戻るとルルが笑顔で俺らを迎えた。この笑顔見るとなんか和む。
ルルはアリスの存在に気づく。
「ふん!私はアリス!孤独を愛する者なり!此奴らがどうしても私の下につきたいというのでな!パーティを組んでやった所存!」
「そっかぁ。宜しくね?アリスちゃん!」
決めポーズをしながら自己紹介するアリスに、笑顔で返すルル。
何だろう。アリスのファッションや台詞を聞くと、なんか黒歴史を思い出しそうになる。
恐らくアリスも数年後くらいに悶え苦しむことになるだろう。なんとなく想像できる。
そしてそれをスルーするルルもルルですげぇなぁと思う。
「所でアリスさん?どんな依頼を受けたのですか?」
シエルが問う。実はというと俺もよく内容がわからない。あの時はアリスの様子が気になって内容確認せずにパーティ組んだからな。
「これだ!」
バンとアリスが依頼書を置いた。内容は"ドラゴナ遺跡の調査とそれを守護するゴーレムの核の納品"、
報酬は現金と"四次元モンスター牧場"である。
「ア…アリスの…目的は…これ?」
俺は四次元モンスター牧場を指さした。するとアリスはコクっとうなづいた。
魔物使いは魔物を使役して戦う。しかしそれは周りに使役可能な魔物がいなければ意味がないということだ。
魔物使い本人は戦闘能力が低い。魔物がいなければ詰む。
そんか魔物使いが喉から手が出るくらい欲しがるのが…名前長いから略してモン牧は、制限なく入る道具袋や装備袋を作る技術を応用して作られたものだ。
見た目は鞄のようだが、その中は魔物達の楽園の様な空間が広がってる。入ったことはないが、なんでも木々が生い茂っていて餌も豊富とか…。何だこのすげぇ技術。魔物使いは使役魔物を鞄に入れて持ち歩ける。
いつでも何処でもバトル可能になるのだ。
しかしそんなチート性能故にかなりの高額であり、買える人はなかなかいない。
だからこういう依頼は貴重なのである。
「皆…私を恐れ慄き、折角誘ってやってもついて来んのだ。全く、私は魔物を連れて歩けるのだから関係ないというに…」
と何処か寂しそうに言うアリス。あのギルドの様子を見るに、余り他のやつから良い目で見られてない様子だった。だけど、
「そ…それでも…諦めずにいったんだろ?」
俺も分かる。つい最近追放されて、ギルドで冷たい目で見られた経験が。人というのは残酷で自身のイメージや単なる噂を鵜呑みにする輩も大勢いる。
そして一度悪いイメージ・噂が広まれば、人々は手のひらを返して、冷たく接してくる。
俺はあの視線が怖くて、仲間作りを直ぐに諦めた。ギルドに一秒だっていたくなかった。
しかしこの少女は、確かに仲間作りは諦めたかもしれない。けど、それでも例え冷たい目で見られても通い続けたのだ。例え一人でも受けてやる!そんな強い気持ちを持ちながら。
人によっては貪欲という人もいるかもしれないけど、俺にとっては輝いてみえる。
「お…俺は凄いと思う…。アリスは強い…。勇気も度胸も…俺より…ずっとあるよ?」
するとアリスは泣きそうな顔になり
「ふっふん!当たり前だ!貴様らと一緒にするな!…まぁだが…明日からよろしく…」
だけどギルドで見た悲壮感はなくて…寧ろ、嬉しそうな顔をした。
明日から久しぶりの冒険だ。