第十二公演 アリス
2月14日 投稿
俺達は次の町へと向かい突き進む。いやぁ、しかしルルと二人きりのサーカス団は、今では二人増えて四人だ。
正直めっちゃ嬉しい。よし!まずは順調、順調…
なんて思ってた時期が俺らにもありました。
「金がない……」
他のメンバーも黙って俺の話を聞いていた。
というかいつかは起こるとは思ってはいた。
確かにパフォーマンスするとお金を払ってくれちゃう太っ腹な人達はいるけども、そもそも値段設定もしていないし、入れてくれても小銭とか。まぁ中には紙幣を入れてくれる神様もいるけど…。それでも雀の涙である。
正直、もっと早く尽きてもおかしくなかったが、そこはルルが安い食材や日用品を品定めしたり、俺たちで道具が壊れないようにメンテナンスをこまめにしてここまで持ってきた。
これからの旅の事とか考えて食材を買いだめしたりしたけど、今の金銭状況では難しい。
「うーん…。確かにこのままだとお金が底尽きて旅とかサーカス団をする余裕はなくなってくるかも…」
ルルは困り顔で首を傾げている。
「どっかに宝箱でも落ちててくんねーかな…」
そう言うレオンの様子を見るにおそらく近くにお宝はないだろう…。盗賊はお宝を探し当てる力に長けてる職業だしな…。
というかんな都合いい事は起こるわけがない。
するとシエルがあっ!となにやら閃いた様子である。すると手をおずおずと上げる。
「あの〜何なら私達で冒険者パーティを組みませんか?」
俺たちはえ?とシエルを一斉に見つめた。
「ギルドの依頼を受けて、報酬を頂くんですよ!そしてそのお金をサーカスの運営費用に回すんです!」
確かにその手もあるにはある。しかし
「あれ?でもパーティって四人が原則でしょ?この団で戦えるのって三人しか…。」
この団は確かに四人いるが、ルルは非戦闘要員である。まぁその代わり、メシ作りとか金管理とか色々裏方をしてくれてるけど。
「そこがミソなのですよ!三人しかいないのなら!もう一人をギルドでスカウトするのです!そして上手くいけば…」
するとレオンがハッとして
「サーカス団に引き入れられる!」
「そうです!どうでしょうか!このアイデア!?」
するとシエルがドヤ顔をする。うん可愛い。
「確かに…そうだな…」
パフォーマンスをして団員を増やすのは大事ではあるが、やはり活動資金も必要だし俺達には活動資金を提供してくれるようなコネもない。ルルの親父さんに頼むのも忍びないし、引退の際に活動資金もパーっと使って、売り上げもパーっと団員達で使ったようである。
何より俺は団長だ。団員の生活を守る義務がある。ギルドの依頼を受けて報酬を貰う方が確実だ。…
「わかった…それじゃあ次の町に着いたら、ギルドに行ってみよう。」
「はい!行ってみましょう!」
「ごめんね?私も戦えれば良いんだけど…。というか私会計なのに…うぅ」
責任を感じてるルルは落ち込んでいるので、皆んなでフォローした。
いやいやもっと早く尽きそうな資金をここまで持たせてくれたじゃん!と。そもそも金だっていつかは無くなるのだから気にするなと。
そしてなんか知らんが、ユーリの頭を撫でろと…。いやなんで?そして何故かそれにピクッと反応したルルが目をギラつかせている。
いや待って?目怖い。手ワキワキさせんな!えっちょ
「ぎゃああああああああああああああ!」
「よし!次の街に到着だね!」
すごくスッキリした顔をするルル。対して俺
「ウン、ソウダネ。」
ゲッソリしていた。美少女に撫でられる。それは普通はご褒美。だが俺の想像してた甘っちょろい撫で撫でではなかった。
いややりすぎじゃない?体削れるんじゃないってぐらい撫でてきた。恐ろしい事この上ない。
取り敢えず、俺達(ルルは道具の手入れをしながらお留守番)はギルドへいき誰かパーティに入ってくれそうな人を探す。
「あ…あの…」
「何?」
「あ…何でもないでしゅ…」
…俺団長なのになぁ…。コミュ障が災いして喋れない。俺の馬鹿!ミジンコ!
一方レオンの方はコミュ力は問題ないのだが…
「なあ?俺のパーティに….」
「え〜♡私はあなたと二人きりがいい♡」
何やら女に纏わりつかれてる。これだからイケメンは全く。あ…振り解いた。そして俺の隣に立つと、
「わりぃ。女がしつこくt….いった!?脇腹やめろや!地味に痛い!」
「お前は俺を怒らせた…」
腹立ったから脇腹にデュクシした。俺は悪くない!そういえば…シエルは?
「やめて下さい!離してください!」
叫び声が聞こえた。シエルのようだ。
「良いじゃん!?俺らと一緒に行こうよ」
「そうそう!ついでにもっと楽しいこともしてやるぜ?」
どうやら男どもに纏わりつかれてるようだ。
くっ美少女の弊害!
「やっやめろ!!」
俺はすぐに走りだしシエルと男を引き剥がす。そしてシエルを俺の後ろに隠した。レオンも追いついてきたようだ。
「あぁ?んだテメェ?」
「ひっ!」
怖い….めっちゃ怖い…。嫌悪感に満ちた視線がただ怖い。仮面なんか付ける余裕なんかなかった。だってそれよりも体が勝手に動いてしまったのだ。
「こ…この子は…お…俺の仲間だ!手をだ….出すな!!」
「.…団長さん…」
あぁ…俺かっこ悪い…こういうのはビシッと決めるべきとこなのに…
「てんめぇ!「俺らのリーダーに手出すな…」
すると男達の一人が俺を殴ろうとするのをレオンが止めた。やだかっこいい。
そしてそんな事をしてたら、ギルドはお祭り騒ぎになってきた。
いやぁぁぁ!悪目立ちしてるぅ!怖いよ!!あっやばい気持ち悪…。
「ハッ!愚民共めが!何を騒いでおるのだ!」
シーン。あれ?静かになった?
ギルドに入ってきたある少女の出現に何故かギルドの中が静かになった。
しかし…ツインテール、オッドアイ、フリフリゴスロリ衣装。凄い格好だ。
「可愛い…」
シエルはお気に召したようである。
「おい…見ろよ。またきたぞ?アリスだ」
「うわぁ…どうせ依頼なんて受けれるわけないのにさ?誰もあいつをパーティに入れないだろ?」
と何やらざわざわと今度は少女の陰口が聞こえてきた。
…すげぇやな雰囲気。すると少女は泣きそうな顔をしてスタスタと依頼書を受付に持って行った。
「私はこの依頼を「四人が原則だと昨日もお話しましたよね?」しっしかし!私は何度も言ってるが"魔物使い"なのだ!魔物を使役すればそんなの!」
「何度も申し上げておりますが規則ですので」
するとしょんぼりする少女。俺は…
「そ…その依頼…一緒に…受けてもいい…?」
「へ?」
俺は少女にそう申し出た。俺達は三人。だけどこの子を入れれば四人。胸を張って依頼を受けれる。
「だ…だが…。良いのか?わっ私の悪口を聞いただろ?魔物使いなんだぞ?誰も私なんかとパーティ組んでくんなかったのに…。」
少女は涙目である。魔物使いは確かに悪いイメージを持たれやすい。けど、それでも立派な職業なのだ。何より、こんな幼い女の子が寂しそうにしてるのを黙って見てられる訳がない。
「うん…君と…パ…パーティ…組みたいんだ…?……あ!ごめん!シエル!レオン!」
そういえば他の二人の意見を聞いてなかった。すると二人は
「私は賛成ですよ?それにその可愛いお洋服のお話も聞きたいですしね?」
「俺も団長がいいんなら…つーか俺も盗賊で悪いイメージ持たれるし、反対する立場でもねーよ。」
やだぁ。俺のサーカス団員。温もりに溢れてるぅ。サイッコーだぜ。お前ら!
「…えっと…じゃあ…いいかな?…俺達と…その依頼受けよ?」
すると少女は涙目で
「ふん!精々私の足を引っ張るでないぞ!。
…わっ私の名は"アリス・ファンドル"だ。…えっとだな…?れっ礼を言わせてもらう。ありがと…」
するとアリスはもじもじして長いツインテールで顔を隠しながらお礼を言う。
うん。可愛いね?俺はロリコンじゃないよ?
「えっと…よ…よろしく…アリス…。」
「フン!精々頑張れよ」
そして俺達はパーティを組んだ。