3話 託された希望
ようやく気持ちが落ち着いてきた。。。
いまだに広がる鉄の匂いと死体に吐き出しそうになるが、もう出せるものがないので嗚咽するだけになってしまった。
普通だったら住民が叫んで警察が来てもおかしくないがここは工業団地で既に22時を過ぎた今は誰もいないゴーストタウンのような様相を呈していた。
僕は立ち上がりリムジンへと近づき、誰か生きているのではないかと一握りの希望をもって倒れている人たちに寄った。
やはり脈は無く、SPの人達は誰一人生き残っている人はいなかった。
「うっ...なんで僕がこんなことをしているんだろう...バイトから帰ってるだけだったのに・・・」
誰にも聞こえる訳もなくただ一人愚痴ったその時、
「・・・す、すまねぇ。誰かは..ごほっ..わからねぇが巻き込んでしまったみてぇだな...」
僕は声が聞こえた事で飛び上がり声がする方へ駆け寄って確認した。
声の主は先程最後に撃たれた御老公と呼ばれる人物だった。
「大丈夫ですか!?生きてるんですか!?だって・・・さっき眉間を撃たれるのを見ましたよ!」
「・・・大丈夫かと言われると駄目としかいえねぇなぁ。今は我社の特効機のおかげである程度話すことは出来るが生命維持は無理だろう・・・」
「救急車を呼びます!がんばってください!」
そう言いスマホを取り出すと、
「よい、先程も言ったがもう無理だぁ、あと数分で俺は仏さんになっちまう。本当に巻き込んですまんかった。。」
御老公は目を閉じ申し訳なさそうに謝罪してきた。
「謝るのはわかりますがそれどころじゃない!生きているなら助けないと!」
僕は叫ぶように言うが、御老公は首を微かに横に振り話してきた。
「冥土の土産に頼まれてくれねぇだろうか、儂の懐に手を入れて印籠を取り出してくれねぇか」
言われるまま、印籠?と呼ばれる小さな漆塗りされ立派な紐がつけられたものをとりだした。
「お主にこれを話すことはまっこと申し訳ねぇ、この話を聞いたらお主を巻き込んでしまうかもしれねぇが、それでも聞いてほしい。。。。」
御老公の鋭い目から一滴の涙が流れるのを見て受け入れようとしたが、僕はさっきの光景を思い出し逃げたい気持ちで一杯だった。
しかし、ここで逃げ出したら本当に大丈夫なのか。先程の敵が実は僕を見つけていて後で殺されるんじゃないか、家族を巻き込むんじゃないか、妹を・・・・・
とネガティブな思考がどんどん出てきてしまう。
「やっぱり僕には無理です...大切な家族を巻き込めません。力になれずごめんなさい。」
そう伝えると好々爺のような微笑みをして
「そりゃそうだな...すまねぇ。お主のような若者に大人の業を背負わせるってのはいけねぇなぁ」
「ごめんなさい。。。」
「良いよい、もとより俺たちの事情に巻き込んでしまった。。。せめてこれだけは頼まれてくんねぇか。この印籠をある人物に渡して貰いたい、連絡先は印籠を開けたら入っておる・・・先程の奴らが戻ってきて奪われることだけは絶対起こしてはいけねぇ。。。唯一の救いは奴らが儂が持っていたということに気づいてねぇ阿呆ってことくらいだな。。。」
リスクはあるが、さすがにそれくらいは聞いても良いんじゃないかと思い首を縦にふった。
「ありがとう。。。お主のような少年に出会えたことが儂の人生の唯一の救いになったわ・・・
その人物に連絡したらこう伝えてくれ、鷹司 勝嘉から託されたと・・・」
御老公はそう言い印籠を僕に渡した時、
「無償で頼むってのはいけねえや、、、対価を儂は今持っていないからお主に一つおまじないをあげよう。指を儂の額に持ってきて指に血を付けて貰えねぇか。」
僕は恐る恐る打ち抜かれたはずの眉間の穴からあふれている血を指につけた。
「そしたら抵抗があるかもしれないが其れを舐めろ。必ずお主を守ってくれる」
余りにも衝撃的な事を言いただすので思わず指を拭きそうになったが真剣な眼差しで言われてしまい覚悟を決めてそれを舐めた。
「よろしい、それでは儂の手を握ってくれねぇか。」
そう言われるまま御老公の手を握った時。
「鷹司専用特効機権限移譲」
そう言うと、先程血を舐めた舌から何かが広がるような感覚があった。
「・・・何をしたんですか?」
そう質問すると
「言うたじゃろ、お主を守る為のおまじないみてぇなもんだ。。。印籠の事頼んだぞ。。。少年よ。。。」
そう言うと御老公は静かに息を引き取った。
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