エロマンガ攻防戦1
俺の中でエロマンガを賭けたゴングがカーンっと鳴った!
先手必勝! 常に俺のターン!! 秘技強奪!!!
頭では冷静沈着に行こうとしたが体は言う事を聞かない。大胆にアグレッシブに友人が手にしているエロマンガに手を伸ばした。
掴んだ!……と思ったのも瞬間、友人はエロマンガを無造作にバッグに詰め込んだ。
「待てーー! それは反則だろっ!? 」
思わず叫ぶ俺。
キョトンとする友人。
「なんで? 持って帰るんじゃないのか?」
持って帰るのは賛成だけど持って帰るのはお前じゃない!この俺だ!!そいつを渡せーー!そいつは俺のものだ!
だが、慌てている姿を見せると俺がエロマンガを心の底から欲しているのを友人に気づかれてしまう。それはあってはならない。常に有利な状況で物事を進めなければならない。
俺はエロマンガに全く興味がないと見せながらエロマンガを手に入れてみせる。
ここは直接攻撃ではなく間接攻撃で様子を伺うことにする。仕舞われてしまったエロマンガを一旦ゴミ捨て場に戻して、最初からやり直す作戦に移る。
「たしか……物ってゴミ捨て場に捨ててあっても所有権は元の持ち主の物だから勝手に持っていったらダメなはずだぞ。」
俺はネットで知った知識を披露した。
「そうかもしれないけどさ、まぁいいだろ。捨ててあるんだしさ。……持って帰るわ。」
「待て待て待て待て。」
ブレない真っ直ぐな心でエロマンガを持ち帰ろうとする友人。それを必死に阻止する俺。法律的には俺の方が正しいはずだが友人の一片の曇りもない宣言で俺の方が悪者に見えてくる。
流れが完全に友人に傾いている。この流れはまずい。なんとしても早く流れを変えなければ。などと考えていると、
「読み終わったあと、貸してやるよ。」
突如、友人自ら流れをこちら側に持ってくるような神のような提案に揺れ動く俺の心。
「まぁ俺が読み終わった後だから俺が遊び終わった女の子達を貸すってことだけどな。」
先程、神と感じたい男は、すでに悪魔にジョブチェンジしていた。
何でそんな考え方出来るんだ? 怖いわ、その考え方。友人のくせに生意気な。常に優位でいたい俺は、そんなこと言われたら何があっても必ずこいつより早くエロマンガを読まなければならなくなるじゃないか。
その為には、エロマンガを手に入れなければならない。
その為には、エロマンガをバッグから出してもらわなければならない。
やる事を確認し、作戦に移る。
「もしかしたら、そのエロマンガ。持っているやつかもしれないから、ちょっと見せて。確認したい。だからバッグから出して。本当に、ちょっと見せて。ちょっとだけだから。」




