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俺とヒロインとエロマンガ

 ヒロインは、こちらから見えないよう、上手い具合に後方へエロマンガを隠した。街灯の下だが深夜で周囲は暗いから見えないと思っているのだろう。……だが!ヒロインが何を隠しているのかは、俺にはすでにバレバレだっ!!

 俺はエロマンガを隠しているのを知っている。だが、ヒロインは知らないと思って必死に隠している。

 ……これは、少し優越感があるな。

 試しに俺はヒロインの周りをぐるぐる回ってみる。

 ヒロインも俺を正面に捉えるように、その場でぐるぐる回る。

 ……これは、少し面白いな。

 次は反復横跳びだ!!

 俺は左右に横跳びしだす。

 右へ!左へ!右へ!左へ!右へ!左へ!

 素早く!そして激しく!!

 その動きに合わせ、ヒロインも後方にあるエロマンガを俺に見せないよう激しく動かす。

 左へ!右へ!左へ!右へ!左へ!右へ!

 やるじゃないか!うまく動かして俺から一度も見えなかった。……合格だっ!!

 では、レベルを一段階あげようか!

 右へ!左へ!左へ!右へ!右へ!右へ!

 俺は先程までの左右交互の横飛びの動きからランダムの動きへ変えた。ヒロインは、その動きに動揺し、エロマンガを隠す動きが徐々に乱れてきた。

 おーっと!エロマンガがチラチラチラチラ見えてきてるぜ!!

 だがっ!……だがっ!!俺はスピードを落としたりはしない!むしろ、さらにスピードを上げるぜっ!

「だーーーーっ!もう、やってらんないわよ!!!くらえっ!!」

 突然ヒロインは後方に隠していたエロマンガを大きく振り上げて俺に向かって全身全霊で投げた。

 バシーンっ!!

 予想だにせず飛んできたエロマンガを避けるなんて考える間もなく、俺の鼻にクリーンヒットした。想像を超える一撃に俺はクラっとしながらも痛みを和らげようと鼻をさする。

「痛っーーー!!何するんだ!?一体全体なんで、さっきから俺ばっかり痛い思いばかりしなきゃならないんだ!俺は、ただ……」

 さすった俺の指にヌルッとした違和感がある。街灯の光に照らされた指には赤い液体が付いている。……鼻血だ。思った以上の一撃に俺の鼻は、すでにKOされていた。

 ぽたぽたぽたぽた鼻血がたれている。ティッシュを持っていない俺は慌てて鼻を腕で拭いながらヒロインをジロ目で見つめる。

 さすがにこれは謝ってくるだろ。だが、俺が許すとは限らないぜっ!俺が悪いヤツだったらエッチなお願いを聞いてもらうって手だって使えるんだ!どうするかはヒロインの謝り方次第だな。

 きちんと謝ってきたら……許そう。

 可愛いらしく謝ってきたら……許そう。

 ふざけて謝ってきたら……絶対に許さないっ!絶対にだっ!!

 俺のテレパシーを感じてか、ヒロインはハッとした顔を見せると同時に慌ててスッと立ち、スタスタ歩いてきた。

 さてと、どんな風に謝ってくるのかな?などと待ち構えていたがヒロインは俺の足元に転がっているエロマンガを拾うと元いた位置にスタスタ戻っていった。

 そして、何事もなかったように座り、エロマンガを後ろに隠した。ヒロインの表情には一点の迷いもない。つまりエロマンガを投げる前の状態に戻ったわけである。

 ……なにぃぃぃぃぃ!?謝らないつもりなのか!?ビックリだよ!!

 いや、いや、いや、いや!ってか、分かってるからね!こちとら、それがエロマンガだって!!このまま何もなかったようにするつもりなのか!?すげぇダメージくらってますけど!それは、さすがに通用しないだろ!?何もなかった事にはさせない!

「あのさぁ、鼻血でてるんだけど。……どう思う?」

「……みたいね。……そういう事もあるよ。」

 ……ねぇよ!ヒロインが投げたエロマンガが原因だよ!?

「なぁ。今、投げた雑誌、大事な物じゃなかったらくれないか?ページ破って鼻ふきたいんだよ。」

 鼻を一度拭きたいのは本当だ。一ページぐらいなら破っても影響ないだろう。そして、あわよくばエロマンガを手に入れたい。俺は最優先事項を実行することにした。ここにはエロマンガを手に入れる為に来た。まずはエロマンガを手に入れる。ヒロインとの事はその後、流れに任せよう。

 だがヒロインが素直に渡すとは思えない。なぜならエロマンガだからだ。恥ずかしくて渡せないだろう。さて、どうしたもんかな。

「………………いいわよ。」

 急にヒロインから了承の回答が出た。

 まさかっ!?驚いてヒロインの顔を見ようとしたがヒロインはすでに後ろを向いている。

「……一ページで良いわよね?二ページは必要ないわよね?あと、こっち見ないでね。」

 ヒロインは本をパラパラめくりながら破るページを選択しているみたいだ。時折うーん……と呟きながら長い長い長考に入った。俺はヒロインの行動を見逃さないように、じっと見ているが……長くなりそうだ。

「決めたっ!!」

 ヒロインが決定の掛け声をするとともにページをビリビリ破った。その頃には俺の鼻血は、すでに乾いていたがヒロインは、そんな事に気づかず破ったページをこちらに持ってきた。

 ヒロインが持ってきたページには、そのページを読んでもエロマンガとは分からない物ばかり載っていた。

 ……なるほど。時間かけただけあってやるじゃないか!!ストーリーの途中のページを破られて話の前後が繋がらなくなるのなら問題だが、これなら問題ない。とりあえず一回鼻をかむか。

 俺は鼻をかもうと破ったページを顔の前に持っていき……。

「あっ!!!」

 突然ヒロインが叫んだ。

 うぉっ!ビックリしたぁ。何だいきなり!?

 俺は驚きながらヒロインの顔を伺うと、ヒロインは顔を真っ赤にし、プルプルしている。

 何だと思い、何の気なしにページを翻すと、そこには……エッチなお姉さん達がエッチなポーズをしているのがたくさん描かれていた。

 なんでだよっ!?なんであれだけ長考してて裏のページ確かめないんだよ!?これは、きちんと確認しなきゃダメだろっ!おっちょこちょいにも程がある!

 ただ、エロマンガに関わる事なので、どうツッコもうかチラってヒロインを見つめると……ん?

 ヒロインは鼻から血をぽたぽたたらしていた。

 なんでだよっ!?なんでヒロインが鼻血ながしてるんだよっ!?


 ……エロマンガ……鼻血……。

 ……………………え?

 …………まさか、コイツ……エロマンガを見て鼻血を流しているのか!?

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