泥亀 tortuga de pecho quebrado
血の名誉も、
羊飼いの錫杖も、
樽の上で寝る荒くれ者達のかつての決闘も、
ましてや父の傷にも真実はない。
ヒターノ達が調弦する時の、木の擦れる老いと苦悩の音、
孤独に肺病が悲鳴をあげる音、
真夜中、泥亀が沼地で犇めき合い、
甲羅をぶつけ合うその音だけが
淡々とした呪詛であり、真理なのだ。
墓地に捨てられた聖書の、
土に埋もれ読めない文字の上を這う甲虫に神の事を聞け。
朽木の音を、腐敗する歓喜の歌を聴け。
涙流す女神ではなく、笑う人間の声を聞くのだ!!
陽に照らされ乾いていく川貝の躯に、
ああ、この世の栄光の姿を見よ!!