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FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■いびつなパーティ■
4/33

たしかな偶然

 白い光は、カタールの更に背後から放たれていた。


 ド、という音でカタールの体が傾ぎ、その手に集まっていた光は霧散していく。


「抵抗するなよ……今度は手加減しない」

 カタールの後方にいたのは一人のハーフエルフ。衝撃波の魔法を飛ばしたらしい。セリフは勇ましいが声が震えている。

 どうやら3対1になっている不利を悟り、カタールは素早く森の中に姿を消す。チラリとセスの方を見たような気がした。


 セスは何とも言えない表情で、もう誰の姿も見えなくなった森をしばらく見ていた。



***



「ありがと。さっきのお店にいた人ね。あららら」

 ランスは緊張感に耐えられず座り込んでしまっていた。それを見たシャムは得心したように、

「もしかして人間相手に攻撃するの、初めて?」

 図星です、と表情が語っているランス。そういえばさっきの攻撃も、傷つけるような威力のものではなかったように見えた。軽く微笑んでいるシャムを見て、ああ、これは相当人生の先輩だな、とセスは思った。


 ふと、思い出したようにランスがシャムに尋ねる。

「な、なああんた。さっき聞こえたんだけど、魔法使ったこと……ないっていうのは……」

「そうよ。アンタだって剣で戦うことはできないでしょ」

 はぐらかす気もなくキッパリ言われる。自分が見たかった「エルフ」ではない気がする、けれど。


「ええと……なんていうか、助けてくれてサンキュー。俺はセス」

「あたしはシャム。別に助けたわけじゃないのよ? 墓荒らしがアンタだったら直接あたしが殺すつもりだったから」

 悪い笑顔でシャムが言う。どうにも、敵わない気がする。


「ち、違うって! あれは俺がギルドから持ち出した(モン)で……、あ、そうだ、元々はどっかの金持ちから巻き上げたって」

「――そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。それを確かめるために、ちょっと付き合ってもらおうかしら」

「その墓へ行くのか?」

「もしかしたら同じものがいくつかあるのかも、と思って。その辺の道具屋じゃわかんないんじゃないの?」



 足の手当てをしながら何やら盛り上がってる二人を見ながら、ランスは一人猜疑心に囚われていた。あれ(プレート)ってそんな大層な代物なのか? 結局ガラクタで、ガッカリするんじゃないのか?

 自分には、あの小さなプレートから拓けていく世界が見えない。



「とりあえず、飯でも食いながら相談しない? あんた名前は?」

 ポン、とセスがランスの肩を叩いた。

 え? 俺もか!?

「ランスだ。……俺は一緒に行くとは言っていない」

「それも含めて決めようや。あ、ランスはまず俺らの荷物回収して来てくれる?」

「俺がか?」

「いやー、さすがにあたしらあの店に戻れないもの。お願いね」

「――まあ、いいけど…」

「今度の店はアンタの奢りね、セス」

「しゃあねえな。んじゃ、隣町の宿場で待ってるから」



***



「よっ、お帰り」

「お疲れー」

 軽く指定された隣町の宿場で、セスとシャムはすでに食事の真っ最中だった。

 二人がいる場所がある程度わかる魔法を使っておいてよかった。さっきの森でも役に立ったが、なんてアバウトな連中なんだ。


 大体、お帰り、などと言われる筋合いはない気がする。考えつつランスは荷物をテーブルに乗せる。


「もうあの店にはこれしかなかった。あとは知らん」

「ん、1個足んねえけど別にいいや、金は持ってるし」

「――礼は?」

「ありがと。じゃなくて、お金取るワケ?」

「組むなんて言った覚えはない」

 一応、釘は刺してみる。

「そーいうのはね、初めに言っとかないと無効よ」


 どうにもペースに乗せられそうだ。この出会いの良し悪しを判断するのは、まだランスにはできなかった。


「で? これから一体どうするつもりだ?」

「おやあ? 気になっちゃう? 一緒に来ちゃう?」

「それを訊いてから決めるんだ!」

 イジメだ。セスは思った。人生の先輩(パイセン)怖いなー。歳聞いたら殺されるかな。


「ええと、西の端にボルトーノって港街があるんだ。そこに“古書館”みたいなのがあるんだってさ。そこに行けば何かわかるんじゃないかな、と」

「ここからだとかなり遠いな」

「そんなとこまで行く余裕あるの?」


 セスは少し黙ってから、ポツリと呟いた。

「どうせこの国から出る前に、顔見せとく必要があるだろうしな…」


「必要? それは危険を冒してまでか?」

 ランスが身を乗り出すと、シャムが止める。

「いいじゃない」

「――ああ、“仲間じゃない”からな」

「そういうこと」

 あまりツッコむと、そのまま仲間入り、か。一応、気を遣ってるのか。


「それにしても、ちょーっと遠いわね。これじゃアンタ命がいくつあっても足りないわねえ」

 一つの町で1回死ぬとして、5、6、7回……とシャムが縁起でもない計算を始める。苦笑いでセスが答える。

「生憎1つしか持ってないんでねぇ。できるだけ近道するさ」

 と、セスが地図を指でなぞる。それは海沿いの整備された街道ではなく、山を通るルートだった。

「山越えの商隊がいるだろ。護衛の不足してるヤツがさ」

「護衛かあ……あんまりいい思い出ないわねえ」

 シャムもランスも、少々苦い表情をした。


 剣しか使わないエルフ。

 そもそも存在を軽くみられる上に、荒事に慣れていないハーフエルフ。

 一般的には事故物件だろう。


 腕を組んでセスは少し考えた。なんとかうまく使えればいいんだが……。

「ちょっとそこは考える。シャム、あんたの剣の腕、さっき見損ねたけど堪能させてくれるんだよな」

「そんなに信用しちゃっていいのー?」

 からかうようにシャムは言うが、セスは真面目に答えた。

「あんた自身は信用してるんだろ?」

 あら驚いた。ちょっとは人を見る目があるのかしら。


 そんなやり取りを見ながら、ランスは席を立つ。

「一晩考えてくれや。また明日な」

平日は更新できないかもなので、なるべく投げてしまいます。

まだパーティ組めてない件。

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