表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■ドリカ村にて~墓標からのリスタート■
17/33

涙の倉庫番スペシャル

 商隊は、昼過ぎに山中の小さな村に着いた。ここは、ドリカ村という。

 セスは、この村には覚えがある。まだ父親が存命だったころに、何度か来たことがあった。短期間住んでいたこともある。


 感傷に浸っている間もなく、積み荷の上げ下ろしも賃金のうちだとドヤされる。


「あーあー、エルフさんはいいんですよ、こんな力仕事は野郎連中にさせとけば!」

 この商隊では、シャムはすっかり下にも置かない扱いを受けるようになった。が、本人は

「そーいうのが一番イヤなのよ!」

 と、わざわざ一番大きな荷物を軽々運び、それがまた魔法だ魔法だとはやされる。


 確かに、人気が出すぎるのもうっぜえなあ。

 苦笑いで見ていたセスに、声をかけた者がいた。


「あら、マーティンさんじゃないの!?」

 村のおばちゃんA、といった感じの中年女性だ。見覚えは、あるようなないような。それに。



「“マーティン”は親父の名前だけど、おばちゃん、誰?」



***



「さすがに張り切りすぎたわ! ガス欠ガス欠」

 自分より大きな木箱を地面に下ろし、その陰に座り込んだシャム。ふと、周りに目をやるとなにやら話し込んでいるセスが見えた。

「アイツ、サボってやがるわ」

 と、木箱を押しながらそっと近づいてみた。驚かそうかと思ったのだが、その間にセスの周りに似たような中年女性がもう一人現れた。なにアイツ、熟女キラーか?




「あらミッちゃん、若い子と話し込んじゃっていいわねえ!」

「違うのよー、アタシこの子のお父さんと間違えちゃって!」


 おばちゃんBがあらわれた。

 まわりこまれた!

 にげられない!

 セスは張り付いた笑顔で固まった。どうやら、おばちゃんAは父親の知り合いらしい。遠目で見た自分を父親と間違えたのだそうだ。おばちゃんBも父親に覚えがあるらしく、


「もしかしてマーティンさんとこの? アラ大きくなったわねー立派になって!」

「そうなのよー。ねえ、お父さんの後を継いで商隊にいるの?」

「あ、ええと、たまたま……」

「そうよねえ、お父さん気の毒だったものねえ、志を継ぐのは健気よねえ……」


 あ、ダメだ。聞いちゃいねえ。

「ゴメン、ちょっと俺、商隊長に呼ばれてるから!」

 セスは無理やり走り去る。この話が進むのはちょっと無理。




 しかし、おばちゃんABは結局、勝手に井戸端会議を続行していた。

「気の毒って何かあったの? アタシその頃ここを離れてたからさあ」

「あの子のお父さんね、悪いやつに騙されて、財産を取られちゃったのよ」

「まああ! 酷い話ねえ。で、それからどうしたの?」


「気を落として体も壊しちゃってね、最期は……森の木で、首をね……」




 さすがに潜めた声だったが、木箱の裏にいた大耳女(シャム)にはしっかりと聞こえていた。



***



 商隊は数日ドリカ村に留まる。護衛の中から有志で、昨日襲われた別商隊の生き残りを捜索に行くことになった。報酬もきちんと商隊の組合から出るらしいが、セスたちは断ることにした。


「街まで帰らないと報酬もらえないみたいだからなあ。戻ってどうするよって話だし」

「ダークエルフの件、捜索隊に告げておかなくていいのか?」

「一応、魔法を使う司令塔がいて、そいつはまだ生きてるっぽいとは言っといた。でも俺の見間違いかもしれないし、あのまる焼けの商隊を見たら、もう目的は果たしてるんじゃないかと思うんだよなあ」


 思いたい、だけかもしれないが。



 3人が今後について相談していると、そこに1人の男が近づいてきた。朝、ランスとマルコが助けた男だった。右目の所に目立つ傷跡があったが、今回のケガではなかったようだ。


「本当に、ありがとうございます。うちは護衛が薄かったみたいなんです。こちらみたいに魔法を使える人が沢山いたなら…」


 うちにも沢山はいなかったんだよな、実は。


「まあ、命あっての物種だし、生きててよかったじゃん」

「そうですね。でも、持ち出せなかった荷物の中に大事にしてるものがあったんですよね……それが残念で。あ、別に金目のものじゃないですよ?」

「それなら、運が良ければ捜索隊が見つけてくれるかもよ?」

「ただ、不思議とあきらめがついたというか、変な感じなんですよね。とにかく、ありがとうございました!」


 生き残りとしての事情を聴かれたりと、村には少し滞在する必要があるらしい。お礼を山ほど言って、男は去っていった。



***



「さて、俺らは動くかあ。まずはシャムの村で墓参りだ」


「お墓参りなら、ここでもしておく必要があるんじゃないの?」



 ギョッとして、セスはシャムの顔を見る。しばしの間泳いだ目をしていたが、やがてあきらめたように大きく息をついた。



「その耳はマジでなんでも聞こえる耳だな」

「勝手に聞こえてきちゃうのよ」

「嘘つけ。でかい木箱が勝手に動いてくるか」


 あら気づかれてた。

 本当は首を突っ込むような案件じゃないけど、一人で向き合いたくないなら付き合ってやろうと思った。人生の先輩(パイセン)として。



「少し歩くけど、いいか?」

サブタイは特に気にしないでください。


最後の方、ランス会話から置いてけぼり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ