表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■山越え商隊~夜襲■
15/33

さわって・変わって

「変わった色の目だな」

 盗賊ギルドの新入りに、セスはそう言った。白髪、褐色の肌の男でなにも喋らない。ただ、いつも何かの本を隠すように読んでいた。

 その目は金色で、瞳孔が細い。

「あ、気にしてたら悪い。ただカッコいいなと思ってさ。色んなヤツを見てきたけどそんなの初めてだ」

「これは……魔法で」

「へーっ、魔法でそんなことできるんだあ! 俺もそんなカッコいい目になりてえなあ」



***



「セス、おいセス起きろ」

「ん……なんだ、もう交代か?」


 毛布をかぶって、座った格好で眠っていたセスを、交代で夜番をしていたランスが起こしてきた。

 そろそろ夜明けが近づいていて、うっすらと明るくなり始めている。


「いや、いいからちょっと来い」

「ちょっとって、え、なんだこのニオイ!?」


 商隊が通る山道は1本ではない。すれ違うのが難しいため、整備されているとは言い難いが数本のルートがある。セスたちが見下ろす先にも別の道があるのだが、そこにあったのは――焼け焦げた数台の馬車の残骸と、どう見ても無事ではない、倒れている人間の姿だった。

 木材や鉄が焼ける匂いと、生き物が燃える臭いがセスたちのいる場所まで漂ってきていた。


 痛ましい表情をしながら、ランスが呟く。

「襲われたのは俺たちだけじゃなかったんだな」

「いや、むしろあっちが本命だったんじゃねえかな。俺らが手助けできないよう別動隊でかき回したんだ」

「確かに、俺たちは囲まれてた割に被害はほとんど受けてないからな」


 黒髪をかきむしりながらセスも呟く。

「そこまでしたからには、よほど欲しいモンがあったのか」


「本体に報せてくるわ。こんなとことっとと離れた方がいいだろ」

 バンダナを巻きなおしながらセスがその場を離れていく。


 自分も荷物をまとめようかと、振り返ったランスの前に、一人のずんぐりした男が気まずそうに立っていた。マルコだ。

 目を合わさないよう視線を逸らし、移動しようとしたランスにマルコがなにかがなり立てている。昨日の文句の続きか、と立ち去ろうとしたあたりで、どうもそうではないことに気付いた。大声と緊張でわかりにくいが、どうやら悪い内容ではないらしい。


「き、き、昨日はちょっと言いすぎだったかなと思って〇×▽■×▽」

「ちょ、ちょっと落ち着けって」


「わーっ! 喋ってる!」

「喋るよ」

「人間語?」

「ニンゲン語。」


というかここの地方語だ。



***



 商隊長に報告を終え、自分も準備をするため移動しているセス。その足取りはなんとなく重かった。さっき見た夢と、昨日のダークエルフの姿がオーバーラップする。



 商人だった父親が言っていた。色々な種族がいるけれど、話が通じればそれは商売相手になる。

 ただし人間に似ていても魔物というものは存在するし、そこは気をつけなきゃいけない。

 まあ、人間にしたって信用できるやつとできないやつがいる。迷ったときには――



 ぶらん、とセスの前に突然足がぶら下がってきた。

「〇×▽■×▽×▽■!!」

 言葉にならない叫びをあげて飛び退る。木の枝につかまっていたのはシャムだ。そのまま飛び降りてくる。

「俺の前で突然ぶら下がんのやめてくれるか?」

「アンタこそこっちがビビるような驚き方しないでくれる?」

「ちょっと考え事してたから……大体なんでそんなところに?」

「なんか、夕べのゴブリン退治から人気出ちゃってねー。キリがないから逃げてたのよ」


「え?」

「アンタ、昨日は商隊の連中にあたしたちについて色々フォローしてたんだって?」

「あ、ああ。命令伝達の時にいちいち俺挟むの不便だろ」

「それで手のひら返したヤツが興味津々で色々訊いてくんのよ。もうめんどくさいったら」

「果ては『どうして耳が長いんですか?』『お前の声がよく聞こえるように』、よ。童話か! っつうの」


「まあ……そりゃ、良かったじゃん」


「さっきから目、合わせないね」

「んなことないだろ」

「首いじるの、アンタが曇ってるときのクセでしょ」

 確かに、セスが手をやっているのは首のレザーリングだ。


「なんか、色々ありすぎて」

「そうね、あたしたちもだけど、特にアンタは」

「?」

「重ねちゃった? 昨日のダークエルフと、他のいろいろと。あたしたちも含めて」


 セスは何も言えなかった。シャムも何も言わず、その場を離れていった。



 惹きつけられた結果があなたたち、なんじゃないかしら。



 ノルトの言葉が脳裏をよぎる。



 こんな時どうすんだっけなあ。俺、難しいこと考えないようにしてやってきたのになあ。こいつのせいか、とプレートを取り出した。シャムに持っていてもらおうと思ったが、アンタが()ってきたものはアンタが責任を持て、と断られた。

 俺が死んだら、とか言っちまったなあ。柄にもない、と言いたいところだけれど、親父が死んでからずっと、いい加減に生きてた気がする。それこそいつ死んでもいいような。そんなところが“惹きつけられた(つけこまれた)”原因かもしれない。


 一瞬、この森の中に投げ捨てようかとも思った。が、思い直して懐にしまいなおす。


 タダの運び役で終わるのは、流石にねえんじゃないかな。

副題変えちゃいました。


いつも通り、挿絵と内容には関連ございません。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ