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FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■いびつなパーティ■
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ひとりぼっちの3人

盗賊ギルドから「謎のプレート」を盗んで出奔したシーフ・セス。

戦士に育てられ、魔法を使えないエルフ・シャム。

生まれと育ちが原因で成功体験を持たないハーフエルフ・ランス。


3人が出会って、プレートをめぐる「何か」に巻き込まれていく話です。

 国の東側にある街道沿いの宿場町、その中の酒場の一つ。


 ここにいる3人は、赤の他人だ。



***



 男の名前はセス。20代半ばくらいで中肉中背。黒髪は顔にかかるくらいに伸びて、バンダナで視界を作っている。

 特徴といえば、左頬に1本、右頬に2本目立つ傷がある。右頬の1本は鼻まで達している。

 そんな傷がつくのは戦士に多いが、前線に立って戦うようには見えないし、実際先日まではギルドで盗賊(シーフ)をして()()

 指輪が入るくらいの大きさの箱を手で弄びつつ、椅子を意味なく揺らしながら、面白くもなさそうにエールを舐めるように飲んでいる。



 女の名前はシャム。向日葵の色をした金髪を長く伸ばし、三つ編みで一つにまとめている。10代の少女のように見えるが、実際の年齢はわからない。尖った耳と、青空のような瞳の色が特徴の長寿の種族・エルフである。

 この国ではエルフは非常に珍しい。人間よりも魔力を豊富に持ち、魔法使いとして重用・保護されることが多いのでこんな酒場に一人でいるのはもっと珍しい。

 ベスト、腕のガード、ニーハイブーツをレザーで揃え、軽戦士のようにも見える。細い体に似合わないブロードソードまで腰から下げている。



 男の名前はランス。黄緑がかった、褪せた金髪を肩まで伸ばしている。木製の長い杖を持ち、こちらは一目で魔法使いとわかる。

 長身痩躯で顔立ちは整っているが、その姿をよく見ると違和感を感じる者もいる。彼はハーフエルフで、数だけで言えばエルフよりも更に珍しい。

 地方にもよるが概ね忌避の対象とされ、特徴である耳を隠してひっそりと生活する者が多いが、どうやら冒険者のパーティに参加し、帰ってきたところらしい。



***



 ここにいるのは勿論この3人だけではなく、旅人や地元の若者でやや込み合ってきた。


 セスはだらしなく足をテーブルの端にかけて、更に椅子を後ろに倒した。普段ならバランスが取れるのだろうが、酔いが回っていたのか当然のように後ろにひっくり返る。


 ガターン!という音と周りの笑い声が耳につき、チラリとそちらを睨んでシャムは「うるっさいなあ」とつぶやく。もともと機嫌が悪そうだ。

 どうやら仕事の実入りがよくなかったらしい。魔法を期待されていた仕事に、それをする気のないエルフが来ればそれはそうなるだろう。


 シャムの呟きが聞こえたのか、ランスが彼女の姿を認める。

「あれ…エルフ、か? 初めて見た…」

 ランスはエルフである父親を知らない。人間の母親と、山中の村でひっそりと生きてきた。暮らしは楽ではなかったが、母親の死をきっかけに出てきた村の外は、やはり厳しいものだった。

 低級の魔物討伐パーティの一員として働いてみたが、取り分はほかのメンバーに対して明らかに少なかった。「半端者」に払う金は少なくとも良いという理屈だ。

 八つ当たりのようにシャムに非難めいた視線を向ける。「半分(ハーフ)」である自分より、どれだけ偉いのか見せてみろよ、という気持ちだった。




「あははは! 大丈夫ぅ~?」

 床で頭をしたたか打ち付け、半分涙目のセスに、化粧をして、脚の露出も高い安いドレスを着た女が声をかけた。

 お水の人だな、とセスは思った。もう、一晩楽しんじゃったらそれでいっかな。

 持っていた箱をスッと女の前に出して、口説き始めた。

「コレさ、遺跡で見つけたんだけど、古代のお守りらしくって。長い話になるかもだから、どう? 上でゆっくりと――」

 上、というのは酒場と併設されている安宿だ。


「ん――、でもォ…」

「いや、話だけだって!」

 話だけではない気満々で、続けるセスの手から、箱をヒョイ、と取り上げられた。背後を見ると、大柄な男がニヤニヤしながら箱を手にしている。

「ほー、()()()にくれるんだな? よかったなぁ、いいもの貰ったな」

「うん!」

 なんだそりゃ、美人局(つつもたせ)以下じゃねえか!

「冗談じゃねえ、誰がやったって!?」

 慌てて男の手からひったくろうとして、男の手から箱を弾き飛ばしてしまう。それは転がった先のテーブルの足元で開いてしまい、中から何かが出てきた。

 テーブルの下からそれを拾い上げたのは、シャムだった。



 拾い上げたそれは、古びた金属でできた。三角形のプレートだった。親指と人差し指でつまみ上げられるほどの大きさ。意味ありげな文様が刻まれているが、ただそれだけの代物である。


 ただそれだけの代物が、それを見つめたシャムを総毛だたせる。


 大きくはなく、低くはあるが殺気をはらんだ声をセスに向けた。

「この…墓荒らし――!」

昔創作漫画で発表していたものです。未完でした。

今度こそなんとか成仏させたいものです。



前に投稿しました「ガケップチPICKPOCKET」とは世界が共通しています。

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