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6話   初詣でばったり

 初詣に出かけることにした悠だが、家を出ると、右頬に粉雪と冷風が勢いよく張り付いた。


 左のはす向かいにはメメの家があるが、今年も車がない。


 きっと祖父母の家に家族で行っているんだろう。


 追い風が背中に雪を当てたが、少しして曲がり、石塀に遮られた。


 通学路と真反対を向き、山の見える国道の横断歩道を渡った。



悠は一度、年明けの日に、メメの家族と一緒にここからすぐの大きな公園へ遊びに行ったのを覚えている。


 昔から友達の多かった悠は、数人の友達を連れていて、その仲間たちと大きな岩から一人ずつ飛び降りた。


悠は着地するときに膝をすりむいて、それからずっと屋内の家族の談話空間に座らされた。


 思い返せば、かなり浮かれていた。こういうことを反省するようになったのも、本当に……もしかしたら今日からかもしれない。


 そんな時、母がメメの家族と話していたら、メメが向かいの席に座ったのだ。


 緑とコンクリートが共存している世界に、赤い花が差し込まれた。



 頭の中が8年前に揺蕩たゆたっているうちに、ぽつんと浮かぶ紅い鳥居に着いた。


 横断歩道をまた渡り、車の世界を抜けると、そこからは石と木と、神様の住まいだけの空間になる。


 まるで、そこだけ森の中だと錯覚させられる、青々とした木々に包まれて、人もまばらな境内に入っていく。


 前を見ると、肩までの黒いストレートヘアの女性が手を合わせていた。


 曲線の美しい、丸い肩と腕の細い華奢な雰囲気がなんともメメによく似ていた。


 悠のほかに参拝を待っている人はなく、遠くからそれを見ながら立っていたら、あたたかい手が肩を叩いた。


「えっ。」

 振り返るとトレンチコートを着たメメが、悠を見つめていた。


 メメの予想以上に悠が驚き、何かしゃべろうとしたのを察してメメは、


「しっ。」と人差し指を立てた右手を、口元に引き寄せた。


 木々のささやきが、静かに止んだ。

書き納めです。2021年もメメと悠をよろしくお願いします。

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