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5話 クイーンのF
朝、学校に行こうとすると先にメメが歩いていた。
黄色い世界の住宅街で、紺のコートを着たメメの後ろ姿に、夏服の白いシャツとアンニュイな目の光を思い出した。
白くて直線的な光の帯と青い空とが陽炎の上からでらんと大きく舞っているのだが、閃光のような映像は現実の問題と比較して悠の心を重苦しくさせた。
どうしていざ話そうとすると、胸が痛くなり、ためらってしまうのか。
虚勢を張っていたら、何も始まらないのだが。
終業式が終わり、教室に戻り、メメの横顔を遠くから見つめた。
しかし、固く閉ざしたような表情を感じて、それを視界に入れることすら、メメの気を逆なでるように思えた。
今思うと、メメは休み時間は違うクラスへ行き誰かと話していることに気づいた。
もう、昔みたいに楽しく話せないのかな。