3話 逃げ腰
卓球場は女子の昼休みのたまり場となっている。
メメも、そこで仲良くなったヤンニャクと卓球をしたり、お弁当を食べながら過ごしていた。
南中してきた日差しがツルツルの床に入り込んで眩しくなる時間。
室内の半分だけ自由に使える。
もちろん卓球部の男子も二三人練習に来ているが、そちらはもう半分。
「メメ、悠くんと仲良かったの?」
「うん。幼馴染だよ。最近しゃべってくれないから、あたしから行ってみたけど、入る余地ない。」
「なんでよ!まだまだできることない?」
メメは頬づえをついて少し黙った。
「もうええ……どうせニキータたちの方がいいん。」
「え?ニキータは、あのもう一人の男の子と付き合ってるよ?」
ヤンニャクは弁当のブロッコリーをメメの弁当箱に入れた。
「何て名前だっけ。ほら、あの短髪の方。」
「ああ、でもユアンって人とよく一緒に……」
「あれは双子。ユアンとニキータは双子やて。」
「待っててもしゃーないんやない?」
ヤンニャクは天井を見ながらそう言うと、おさげの片方を解いて、結い直し始めた。
「………………。」
ヤンニャクの髪は、きつめの三つ編みから、ゆるっとした一つのおさげになった。
ぶくぶく
「おーい。」
メメはプラスチックのパステルイエローの箸をゆっくりカチカチさせて、遠い目をしていた。
「あっ、ねえ、今度、映画行きたいんだけど、ヤンニャクも一緒行かない?」
「ほ・か・に・誘う人、いるでしょ……。」
「悠は最近忙しいから。」
「なにで忙しい?」
「それは、色々……。」
「昔は遊んだりとかしなかったの?」
「あ!初詣で会えるか!毎年一緒だし。来年も……!」
「じゃあ決まりだね。」
ヤンニャクは弁当をしまい、制服をジャージの上から着て、卓球場から出ていった。