1話 炎と校舎とキス
年の瀬も近い 十二月の中旬あたり、私たちの高校の代理学園祭が開催された。本当の学園祭は、2020年の出来事に配慮され中止となった。
そんな寒い時期にやらなくても、と入学時にボヤく者もよく居たが、一度も雪が降らないままその日はやってきた。
高校生になって約八か月。
ここ芦野目高校は少し高い位置に建設されており、校舎の裏が山で、表にはグラウンドが広がっている。
そこに集まった学生が放課後、キャンプファイアーを囲った。
ジャージを着た教師が、歩き回り、どこかの輪に入ったり見まわったりしてて、イチャイチャする人はいなかった。
そもそも参加しないで帰る人も多かった。
焚火は真ん中に四つ置かれ、それを囲うようにグラウンドに水色の硬いビニールシートが置かれた。飲食は自由。
「こんなの縄文人なら喜んでも、現代人はつまんねとかいうんやろな……」
隣で幼馴染の悠が、眉をひそめて上を見ながら言った。
「こんなにゆっくりできるのひさしぶりや。」
つづけて悠は話すが、私は何も言えなかった。
(悠と二人でいられるなら何でも嬉しいけど)
「ところでメメさんさぁ、」
「なに?」
悠は小さいときから私のことをメメと呼ぶ。
「おう、悠、買ってきたぞーー。よおおおお!ポン!」
古典芸能のような声を出して話しかけた眉毛の細い短髪の男子と、目にかかりそうな細身の黒髪男子、色素の薄い女子が一人買い出しから戻ってきたようだ。勿論あだ名。
ニキータはスカート丈が短くて細い足だったが、陸上部で、ハードルにぶつけたアザがいくつもあった。
悠たちの話をまた聞きした情報だったが、本当だった。そして顔は見れなかった。
彼らの声は嫌でも耳に入るほど大きい。そして私の席の近くで休み時間を過ごす。
「ごめん、お友達と一緒やったんか。じゃあ私帰る。バイバイ、悠。」
私がこう言ったら、悠が引き止めようとするのを分かっていたから、あえて聞く耳を持たず、カバンを掴みながら、片方の手を膝にあて、急いで立ち上がりその場を離れた。
「!、メメ!……」
カバンを肩に堤げながら、校舎の方に翻る。悠の仲間は変わらずしゃべっている。
悠はこの時、自分の本来の居場所はここではないことを悟った。
メメは街路樹の道を抜け、校門にでると、そこからは歩き出した。
まだ枯れ葉がちらちら端に掃き溜まるのを見ながら歩き、悠と今年一年で話したシーンを思い返していた。それは片手で数えられるほどだった。
(……やっと悠の隣に座れたと思ったのに、やっぱりいつもの友達たちが一緒だった。
最近なかなか話せなくて、距離を感じていたから元に戻すチャンスだと思っていたのに。)
メメはこのままではよくない気がしていた。とにかく、モヤモヤする。
悠は見えなくなるまでその場で彼女を見ていたが、一つ咳をして、「俺も帰る。」といった。