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9話

1週間、部活に熱中しつつも図書室だけは様子を見に行った。結局毎日。

どうやら、メインでやってるのは彼女と鈴木くんぽい。他の委員もいるけど、2人ほど頻繁に来ていない。

本当に諦めついたのか?だから一緒にいても平気なのか?

今まで女の子たちから話きいてるのとちょっと違う。なんだか納得いかない。


結局たまに見かける程度で終わった週末、土曜がきた。

俺の学校で部活の練習試合がある日だ。

対戦相手はU19での知り合った特に仲のいいのが2人いる。

LONEにもうすぐ着くって連絡がくる。

せっくだから迎えに行くかと部長にOKもらって、校門前まできた。

「瀬良」

「…吉田」

「試合?」

俺の格好から判断したのか、じっとユニフォーム見ながら言ってきた。

そうだ、土日も蔵書点検だったんだった。

「蔵書点検は?」

「終わったから帰るとこよ」

土日はお昼すぎぐらいで終わるらしい。

「あ、そしたらこれから時間あいてるってこと?」

「そうね」

「試合見てかね?」

「え?」

極自然に誘ってしまったけど、それ以前に問題があった。

対戦高校の友達…片方めちゃくちゃ真面目なキャラだ…。堅物って言われてるぐらいに。

鈴木くんとはちょっと違うけど真面目な奴。

真面目なのがタイプの吉田とあいつが鉢合わせたら、好きになるのか…?

いや一目惚れなんてないだろうけど、これがきっかけとか…?

それは嫌だ。

「やっぱ帰れ」

「は?」

さっきと言ったことちがうじゃないと、当然のごとく彼女はかちんときていた。

でも、さすがに俺が見たくない。

俺の勇姿を見てもらいたいっていう単純な思いはあるけど。


「お、悠斗じゃん。お迎え?」

「げ」

「久しぶりだな」

「お、おう…」

なんてタイミングできやがった。

片方は俺と同じようなノリのいい奴だからいいんだけど、問題はもう片方。

見るからに堅物感があってスポーツマンというよりは、未来ロボット出てくるアニメの勉強できる男キャラを小難しそうにした感じ。

あーやっぱり会わせたくなかったわ。

「お?悠斗、この子は?」

気付かれる。そりゃいくら俺の後ろに隠したって無駄なのはわかってた。

「はじめまして」

にこやかに挨拶始まっちゃったし。

なんだよ、その愛想のよさ。対俺と全然違う。なんだ、その笑顔。

彼女は二人と挨拶して、で、俺と彼女を交互に様子見てたのが次第ににやにやしながらこちらを見てくる…もちろん片方だけ。

「なに、悠斗の彼女ぉ?」

「いいえ、瀬良くんの友達です」

すかさず否定されたけど、友達と言われてちょっと嬉しい。

今までそんな扱いすらされてなかったし。友達ぐらいにはランクアップしてたのか。

「そうなんだー。悠斗の応援来たの?」

「いいえ今さっき見に来るなと言われたとこなので帰ります」

飛びきりの営業スマイルで言われた。

根に持ってやがる。そりゃ、確かに言ったけど、今この場でそういう言い方するか?

「いや待てって」

「さっきそう言ったじゃない」

「違うんだよ、あー、その」

「だったら、優花ちゃん、俺らのこと応援しに来てよ!」

「はあ!?」

慌てる俺を見た桶上がすごい楽しそうな顔をして彼女に詰め寄る。

彼女の両手をとって、無駄に可愛い子ぶって。

うわ、こいつあざといとは思ってたけど、ここまでかよ。

いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。

「待てよ!うちの学校応援するのが普通だろ!」

「俺の学校の子たちでお前目当てでくる子もいるんだから、別にいいじゃん」

ねー、と彼女に同意を求める。

戸惑う彼女の手を引いて連れていこうとするもんだから、待てって言うのに、今度は相方に咎められた。

「どちらで見ても試合は見れるだろう」

いやそうだけど!

お前と彼女が近くになる可能性のが嫌なんだって。でもそんなこと言ってもな…。

「くそ」

もやもやしながら試合開始だ。

彼女はがっつり、相手エリアの先頭ラインで見てる。

お、こっち見た…と思ったら険しい顔してそっぽを向かれる。

なんだよと思いつつも、彼女が試合を見てくれてることにちょっとテンションが上がった。


試合が始まれば集中してるから、彼女のことは目に入らない。

結果は引き分け…まあ俺の活躍もあったし、相手もなかなか好調だから、この結果にもなるか。

かなり悔しいけど。やっぱりやるからには勝ちたい。

試合が終われば、俺はいつも通りファン対応がある。

今日ばかりは少し焦った。彼女が帰ってしまうんじゃってとこと、あっちと仲良くなりすぎること。

ファンサービスしてる最中、ちらっと様子見ると挨拶もほどほどに帰ろうとしてる。

あわてて2人にLONEする。

引き留めてって。

それを見て、いい笑顔をこっちに向けた後、彼女を引き留めてくれた。

返事にハンバーガー奢れとかきた。くそ、足元見やがって。

あれ、でもこれだと話す機会をあげちゃった?

あれ、墓穴ってやつか?

いやいや、それは置いておこう。

まずは来てくれた子たちに答えないと。それが俺のモットーだし。


「…終わった」

「おつかれー」

ファン対応を終えて帰ったのを確認して、やっと彼女のとこへ行けた。

「なんで俺のチーム応援しないんだよ」

といいつつも内心ほっとしてる。

あちらは片方は変わらずにやにやして、片方は俺の頼みが不服だったのか眉間にしわ。

彼女は俺の言葉にいらっとしてたけど、俺以外のメンツのことを考えてか、すぐににこやかな表情。

もちろん俺に向けられる表情じゃない。

「すみません、帰る時間だったのに」

「いいのいいの!俺、優花ちゃんと仲良くなりたかったから話せて嬉しい!ね、海」

「そうだな」

「…ありがとうございます」

「じゃ、悠斗。俺達帰るから」

「おう」


ぶっちゃけ練習試合程度だと、みんな先に帰ってる。

俺がファンサービス長いのもわかってるから、先に部員集めて軽く部長が話して後は後日にーとかもよくある。

今回もそう。

だから俺と彼女が最後、あの二人は他校なのに最後から二番目で帰る。

移動もあるし普段なら早く帰ってるからな。ちゃんとお礼しとくか。

「今日も送る」

「え」

いいのに、って言うのがわかったから、すぐに送るって念を押した。

あたりはまだ暗くなってない夕暮れ、大丈夫ってまだ言われると思ったけど、そこは黙って見送られてくれるようだった。

「なぁ」

「なに」

「原尾、どうだった?」

「原尾さん?」

なんで、と逆に問われる。

「いや、真面目だし…」

「そうね、真面目でいい人ね」

「その、好きになった?」

「なに言ってるの。真面目だからってすぐに好きになるわけないでしょ」

内心ほっとするも、次に浮かんだのは鈴木くんだった。

「鈴木くんは…?」

「鈴木くんはもう終わってるじゃない」

さっきから何言ってるの?って言われる。

確かにこんなこと聞いて俺もどうかしてるって思う。

しかも彼女の返しにほっとしてるのも本当おかしい。


「心配してくれてるなら、もう大丈夫よ」

「え?」

「なんでもない」

にしても、と彼女は前を見ながら楽しそうに言う。

「今日の瀬良、いつもと全然違った」

真剣に取り組んでることがわかった。

勉強も頑張れるぐらい好きでしてることだってわかった。

そんな俺が、格好いいと。

言ってくれた。

彼女から初めて褒められて、妙にくすぐったくて、適当な相槌しかうてなかった。

褒められて嬉しい。嬉しいけど、いつもとちょっと違う。

「私、瀬良のこと全然知らなかった」

「…おう」

「…にしても、あんなにファンサービスいいのね」

本当知らなかったわと、嫌みっぽくいってくる。

なんだよ、さっきまであんな素直だったのに。

「そう扱ってほしいわけ?」

「いいえ、いつもの瀬良でいいわ」

さらっと嫌みの返しをかわされた。

あー、素でいる方がいいとかどうなんだろ。

むしろ素でいる自分がおかしいのか?

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