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第11話 明日の仕込みは深夜にすることになった。

「《終わらない夢》の皆さんようそー!、そしておかえりあなた、」


外でかち合ったということで同時に訪れた人達にメリッサさんは可愛らしい笑顔で出迎えた。


ちゃんと許可は取ったし、夕飯の手伝いもしてもらった。メリッサ様々だ。


《終わらない夢》のメンバーはあの時より一人増えて五人、そしてアレクさんとメリッサさん、俺。計8人分の食事とはちょっとした大家族、いや、5人は冒険者なのだからそれよりもっと量を用意しなければならなかった。


キャベツの千切りだけで死ぬかと思った程だ。


まぁ、キャベツによく似た野菜、ベッキャーという葉物野菜だが。


主食はパンだし、中にはさめる具を自分たちで選んでもらおうと、ひたすらにトンカツや唐揚げなど揚げ物を作ったのだ。


手巻き寿司なんかをイメージしてくれたらそれでいい。


勿論、玉子マヨやベーコンレタスなども作った。この辺は女性向けだな。


そしてスープとサラダ。栄養面も考えなければな。


はさまなくても揚げ物なんかはオカズになるから、それ用の味噌ダレやタルタルソースなんかも添えて。


マヨネーズやタルタルなんてものはもちろん自分で作って用意した。かき混ぜるのしんどかった。


まぁとにかく、すごい量だ。腕が疲れた。


机にズラーッと並べると、壮観だった。


全員が席に着く頃には数が数なので冷め始めてしまっていたから、そこは温め直して、いざ、実食!


「うぉ、スープやサラダなんかは分かるが、この茶色いのはなんなんだ...?」


ハルロさんもその他メンバーさんも不思議そうにして、手を伸ばさない。


まぁ、初見だと茶色い物体にしか見えないもんな。


「これはね、揚げ料理で、中身はお肉なんだよ。パンは1人3個くらい食べれるように準備したから、そのパンに挟んで食べるもよし、そのままおかずとして食べるもよし、自由に食べて欲しいな。」


これをかけて食べてね、とタルタルや味噌ダレを前に置き、1度見本を見せようと唐揚げをフォークで刺して取る。


いつか箸を作りたいと思っているのだがなかなか実現出来ていない。


パンに挟み、タルタルをかけてはぐっと1口。


カロリーはバカ高いが、美味しい。


アレクさんもメリッサさんもウキウキしながら数ある揚げ物の中から選んで、頬張る。


「ん〜!!やっぱり、このトンカツってやつ美味しいわぁ!」


「この唐揚げというものもとてつもなく美味しいぞ!!」


メリッサさんもアレクさんもなんか凄い感動しながら食べてくれている。


その様子に刺激されてか《終わらない夢》の皆さんは1つをそろーっと手に取り、口へ放り込む。


美味しくないものを挟んでパンが台無しになったら大変だもんな。冒険者は食に困ることがよくあるからご飯というものを大切にしている人が多いらしい。


サクッ、じゅわ、


そこからはまぁ凄かった。


アレクさんとメリッサさんはほのぼのお喋りをしつつ料理を楽しんでいるが、冒険者の皆様方はもう無言。


無言で延々とサンドをつくり、感動し、食べ終わり、オカワリ!みたいな。


その食いっぷりは見ていて気持ちよかったが。


パンが足りなくなって追加で30個ほど焼いたがそれすら完食。平均1人8個。1個が結構でかいのにだ。


1番食べてたのはガタイがとてもいい、ちょっと怖そうな男の人。名前は確かスピカーと紹介された気がする。真面目でイケメン。多分パン11個くらい食べてた。


1番少なかったのは女性の冒険者だったけど、それでも6個は食べてた。美人で華奢な人なのにすごい。


「こ、これを今日の朝販売してたのか!?」


うわぁ、スピカーさんがめっちゃ前のめりでそう聞いてきて俺は若干体を反らした。


ガタイがいいだけに迫力がすごい。


「そ、そうだよ、明日もする予定だけど...」


「行く!!!!」


「あっ、はい...お待ちしてます...」


イケメンのこんな必死な顔、前世の俺だったら嘲笑ってた。


いや、必死な顔もイケメンで逆にキレていたかもしれない。


「冗談抜きでこれはうめぇな...銀貨4枚だろ?そこらの定食よりうめぇし腹にもたまる。売り切れるのも無理ねぇわ」


ハルロさんがしみじみそう言うとアレクさんたちも含めみんな頷いた。


「美味しいとは自分でも思うけど、まさか初日にこんな売れるとは思わなかったんだよ。10歳がやる屋台なんて人が集まらなそうじゃんか。現に絡まれたわけだし。」


アレクさんがガタッと立ち上がって、誰だいうちの可愛いフォードにそんなことしたやつは!!冒険者ギルドに文句を入れてやる!!!とキレたがスルーした。


余計なこと言ってしまったとちょっと思った。


「ふーん...なら明日から俺らが護衛してやろーか?俺らがいりゃ絡んでくる奴も減ると思うぜ、結構有名になったしなぁ俺ら...」


「Bランクになってからかなり知名度上がりましたよね、半壊したにしてはすごい駆け上がりだと思う」


「あー!確かに、それいいかも!この屋台ってポークリオンが普段の数まで減るまでなんでしょ?ずっとじゃないし、ウチらちょっと前の討伐依頼でかなり稼いだから、おやすみしよーかーって話してたとこだし!」


「あの時は命を助けてもらいましたしね、此処でその恩が返せるなら是非こちらから頼みたいところですね」


「俺は、ちょっと、新入りなんで前のこととかわかんないんですけど、この美味しい料理を知らずに文句をつけてくる人は、許せない、ッす。」


わぁ、《終わらない夢》全員一致でそんなこと言ってくれたけど、バイト雇う余裕は流石にないッ!!


「待って待って待って!!Bランクの人達を雇うお金、俺持ってない!!!」


話がまとまりかけている所で俺はそう叫んだ。


アレクさんまでそれいいねぇとか言ってるんだもん。


焦って話を止めると、先程、おやすみしようかと考えていたという情報をくれた娘さん...猫の獣人、ミャオさんが耳をぴくぴくっと動かしていた。驚かせてしまったのかもしれないが多分俺は悪くない。


獣人ってこの街にはよく居るのだ。

俺が住んでいた街にはあんまりいなかった。


たまにお客さんとしてくる獣人はいても、領主である貴族が嫌いだとかで基本はみんな大人になったら他の街に流れていってたからだ。


この街は本当に住みやすい街だと思う。


獣人が普通に歩いて、普通に仕事をしている。


じゃら、となったブレスレットをなんとなしに掴む。


俺は、父さんも母さんも忘れたわけじゃないし、あの街の人達が好きだった。


それなのに、その町がトラウマのように忌避するものだと思ってしまう自分が最近、すごく嫌いになる。


話が逸れた。ミャオさんは猫の獣人。それを伝えたかっただけだ。誰に?誰だろ。俺疲れてんのかな...。


「ならなら、ウチらの報酬はフォードくんが作るお昼ご飯ってのはどうかな!?」


「いい!むしろそうしてくれ!!!」


ミャオさんの意見に綺麗に声が揃うほか4人。


Bランク。それでいいのか。


「いや、えっ、さすがにそれは悪い...」


「悪くないむしろ良すぎるだろ、護衛したら確実に美味い飯が食えるなんて役得すぎる」


スピカーさんの言ったことにほか4人がまた頷く。


ハルロさんまで頷いてる!リーダーそれでいいのか!!


「えぇ...まぁ...皆がそれでいいなら...」


こうして、初日にして完売。護衛ゲット。


濃すぎる一日がゆっくりと終わっていく。騒がしい人達に囲まれて。

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