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第1話 転生のきっかけは人違いでした

俺はただ、歩いていただけだった。


まず俺の人生について少し語ろうか。

俺の名前は桜庭 廉(サクラバ レン)といって、普通の現代社会を生き抜く32歳だ。


社畜として働いているが、俺の職業はシステムエンジニア。

簡単に言えば会社に必要なプログラムを作ったり、なにかエラーが発生した時に対処する仕事をしている。

人間関係で躓いて、暗黒だった学校生活より体力的にはキツいが、精神面ではかなり楽だ。

なんせ、パソコンが相棒。同僚や先輩は似たような境遇を持つ変人の集まりで気が楽。

今までの学校生活って必要だった?と思うほどだ。

思うに、あの狭い教室という名の箱の中で人間関係を学びましょうっていうのは陽キャにしかプラスにならないね。真の陰キャを極めた俺にしたら窒息しそうだったよ。あぁ、今悩んでいる学生がいたら声をかけてやりたいね、数年我慢すりゃ学校生活がいかに異質で窮屈で大変だったことに気がつけるってね。


話が逸れてしまった。

まぁ、ここまで来れば察して欲しいのだけど、彼女なんてものは生まれてこの方いないし、友達だって片手で収まる程度だ。

それでも、満足に生きていた。

親がいて、友がいて、職があって、健康。

物欲はヲタクな分、一般人よりかはあったと思うけど、そのくらいだ。



確かその日は雨が降っていた。

社畜な俺はサービス残業を終え、へろへろになった身体に鞭打って帰路を急いでいた。

傘なんてものは忘れてしまったから、仕方なく鞄を雨避けにして、急ぎ足で。

でも走って何かあってもいけない、そういったことくらいしか考えていなかった。


いやでも視界に入ってくるネオンのあかり。

迫り来るトラックのライト。クラクション。

周りの人の悲鳴。

それと、スマホだろうが動画撮影が始まる音に、シャッター音。

雨の音。


全てが他人事に感じた。

ゆっくりにみえた。


ドゴッ。


知ってるかい?人がトラックに轢かれる時、鈍い音がするんだ。

俺は知らなかった。


動かない体。


あぁこれ俺、死―――――。







『ねえねえ、起きて!起きてってば!』


自分が死を覚悟して、目を瞑って、開いた先には真っ白な空間。


そこで呼びかけてくるなんかふわっとした存在。


ふわっとした、もや、みたいな。


そんなやつが男とも女とも判断つかない声で話しかけてくる。


『あ、起きたァ!』


「だ、れ...。」


あ、普通に喋れるのか俺。


『うーん、僕はねぇ、カミサマ、かな。』


「神様...?俺は死んだはずだ。つまりここは死後の世界?」


そのもやは俺が認識しようとすればするほど形成されていく。

ちっちゃい男の子になった所で変化は止まった。


『ここはねぇ、あの世とこの世の境目。僕は君たち人間が言うカミサマであるけれど僕にとってはカミサマじゃない。』


男の子は小さい手を後ろに回して堂々とそう言い放つけれど、俺は全然理解できない。


でも、死んだならおかしくない出来事ではある。


ここが境目だという情報が知れただけ良かったのだろう。


「そう、か。なら俺は今からあの世に行くんだな。」


『その事なんだけどねぇ...』


途端にその小さいカミサマは申し訳なさそうな顔をする。


俺が首を傾げると、カミサマはてへぺろ、と


『君を間違えて殺しちゃった』


なんて言ってくるもんだから、俺が絶叫したのは言うまでもない。



カミサマの話をまとめるとこうだ、

俺とよく似た魂を持つ青年を不慮の事故に合わせて、あの世に連れていくつもりだったらしい。

ここでの基準はあくまで魂であって顔の作りではない。だからこんなことが起きたのだという。

俺に似た魂の奴は、とんでもない女たらしでこのまま生かしておいてもヤンデレメンヘラ拗らせた女に殺されてしまうからどうせならちょっと魂を拝借しよう!ってことであの事故が起きた。ただし、それは似た魂の俺が引き付けてしまい、ここに居る、らしい。

似たような魂のくせになんでこうも格差があるのだと怒鳴りたくなったのは仕方ないことだろう。


『魂を他の、それこそ君体が住む世界じゃない全く別の世界に飛ばして、映画のように楽しもうと思っていたんだけどねぇ...』


そう零すカミサマに恐怖は抱かなくてもちょっと呆れた。

何千年と生きるカミサマには娯楽がないらしい。だからたまにこうしてどうしようも無いいつ死んでもおかしくない様なクズの魂をちょっといじってその一生を見ることを娯楽としているらしい。


「クズの魂を送り込んだって結局クズのままなんじゃないのか?」


『まぁねぇ、でもそういう人からしか魂は取らないようにしてるし、それはそれで面白いからいいんだよ。


そんなことより、君をどうするかの方が問題なんだァ!』


真っ白な空間におじさんの俺と小さい男の子。なかなか危なげな組み合わせだと今になって気づく。


「俺のことは間違いだったんだろ?帰せれないのか?」


『肉体が生命活動をしていれば返せたけどね...即死だったから、今帰っても帰る場所がないんだよ。』


全くなんて話だと思うもののカミサマの力で何とかなるんじゃないかなぁって楽観視していた俺はもう生きれないことを突きつけられた気がした。


『でもね、このままあの世に送るとちょっと不味いんだよね。だからさぁ、めっちゃ強くてカッコイイイケメンにしてあげるから転生してくれないかなぁ!?』


なんつーカミサマだよ。そう突っ込んだら不敬罪になるのだろうか。


『不敬罪なんてならないよ、ここには僕しかいないしね』


うわ、なんで、頭の中、読まれた!?


『僕カミサマだから!』


そっかぁ、で納得しちゃいけないことだとわかっていてあえてスルーを選ぶ。


話が進まない。


でも俺にとっても悪い話ではないし、このまま魂さえどうなるか分からない状況になるよりは安泰確定の異世界へ飛んだ方がメリットが大いにあるのではないだろうか。

異世界、気になるし。


そこまで考えたら、カミサマがいい!?じゃあ決まりだ!なんて言ってきやがった。


脳内読めてもそこはじっと待つべきだろうと睨んでやるとしゅん、として大人しくなる。


『じゃあ、君を最高の場所に送ってあげる。

僕は君を忘れないし、上から見てるけど君はここでの記憶を全部なくしてしまうよ。前世の記憶は欲しい?』


「あぁ、わかった。俺が桜庭廉として生きてきた思い出は薄暗いものが多いけど中には綺麗なものもあるから...役立つかもしれないし、出来れば持って転生したい。」


わかったわかったとにこにこしながらカミサマは手を空中でなにか動かす。


彼の頭の中で色々といじっているらしい。


「カミサマを忘れないようにはしてくれないのか?」


『無理だねぇ、僕はここの空間でずっと一人でいることが仕事なんだ。


よし、君の行く先を決めたよ。すぐにでも君の魂は向こうの世界へと送られる。


僕はねぇ、あまり人と話す機会がないんだ。だから短い時間だったけどキミと話せて楽しかったよ』


身体が何かの力で下へ下へと引っ張られている気がする。このまま身を預ければ転生するらしい。


「俺も、カミサマと話せて楽しかった」


そう答えたけれど言葉として紡げていたのかは怪しい。そう言ってる最中に眩い光とともに何も見えなくなったから。


でも、心が読める彼ならきっと伝わってるはずだ。


俺は、また新しい人となりその人生を今度こそ謳歌する。


ワクワクで止まらない。


なんてったって、ヲタクが1度は手に触れる異世界転生だからな、いいことがあるはず!!!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――


あっ、彼の行先ちょっと間違えた、

僕ってドジなんだよねぇ...まぁ、彼なら上手くやってくれるよ、下手なルートに行かなきゃ順風満帆な人生になる、はず。うん、きっと!

略し方は転ハピ(ダサいとか知らない)

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