第1話
はじめまして。
誤字脱字、読みにくい部分などあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
とりあえずプロローグのような感じで。少し長くなってしまったので、2話に分けています。
冒険者ギルドには美人な受付嬢がいて、隣の酒場では男たちが昼から酒を飲んでいる、ってのは王都から離れた街でもやっぱり定番みたい。そこそこ席数はあるはずだけどほぼ満席。よく見ると商人や職人ぽい人もそこそこ混ざっているから、このへんは田舎特有なのかもしれない。外食のできる店は冒険者ギルドと宿屋のほかには数軒しかないようだし。
「悪いな、ここ、いいか?」
「ごめんなさいね」
夕方になったばかりなのにもう3人とも顔が赤くなっている男たちの席に、私たちも入れてもらう。というより返事も聞かずに座りだしたから、少し強引な感じだけどまあ酔ってるみたいだし大丈夫そう。
「俺がロッソで、こっちはカナだ。あんたら何飲んでんだ?」
身体も態度もでかいロッソが強引に話しかけていく。普段は暑苦しいと評判だけど、飲みの席だとフレンドリーって受け取られるのはなんなんだろう。
「僕がコウ、こっちがアルとリッシュ」
「飲んでるのはエールだよ、ここらで作られてるのは苦いけどそれがいいんだ」
「そんなことよりお前ら男女2人パーティか?うらやましいな」
「あと2人いるんだが、そいつらとは別行動だ。あ、おねーさん、ここにエール2つ!」
「あと串焼きと唐揚げも!大盛りで!」
「す、すげえな。女のわりに結構食うんだな…」
「ばかね、あなた達も食べるでしょ?席空けてくれたお礼よ」
お、ニヤっとしたね。これくらいで好感度が上がるなら楽なもんだなー。ほどほどの好感度なら上げといて損はないからね。上げすぎると、後から厄介な問題になることも多々あるけど。
「へー、あんたら王都から移ってきたのか。わざわざこんな田舎まで来なくたっていいだろうに」
「王都だとEランク冒険者の依頼ってないのよね。Fランクばっかりよ。魔獣は依頼が出る前に騎士団が訓練で倒しちゃうしね」
「あー、王都には王都なりの苦労があるんだな。でもそれならあんたらいいとこに来たぜ。E、Dランクばっかり出てるからな。すぐDには上がるんじゃないか」
G〜Aまである冒険者ランクは同じランクの依頼を安定してこなさないと上がらない。見習いのG、雑用や荷物運びのFは王都でも依頼はたくさんある。ただ魔獣狩りがメインになるE以降の依頼はほとんどない。だから王都出身者でも基礎だけ身につけたら修行の旅に出る。
もちろんAランクの依頼だって王都に出されることなんてほとんどない。Aランクは大抵、主要都市に数パーティが常駐していて、依頼のつど派遣されるのが一般的だ。
「お前らも田舎の街でCランクはすごいな。しかも3人だろ?」
「あー、ほんとは4人だったんだ。最近抜けて……まあそれでもこの町にCランクパーティは少ないから、仕事には困ってないよ」
アルの話をきっかけに3人とも少し伏し目がちになる。冒険者は他のパーティメンバーに命を預ける。だから命を落とすことだって珍しくない。田舎で一緒に育ってきたならなおさらのことだろう。ただそれを引きずる訳にはいかない。どれだけ辛いことがあっても、酒を飲んで忘れて、また戦うだけ。
まあ私には関係ないけど。
よし!そこそこ飲んだし、あんまり長引かせると他の客が帰っちゃうだろうし、そろそろ働きますか!
「わたしちょっと夜風に当たってくるわ」
そう言って席を立つ。少し歩いたところで、後ろからグラスの割れる音がする。
「おい!もっかい言ってみろよ!」
「ああ!何度でも言ってやるわ!この前の失敗はあんたのせいね!」
「なんだとこら」
私たちとは反対側の席で2人が取っ組み合いの喧嘩をしている。同じ席の他の4人はどうしていいか分からないような感じだ。
時間も時間、他の客も酔っているのかただ見ているだけだったり、さらに煽っている者もいる。まあ煽っているのは少し離れた席の人で、近くの席の人たちは少し迷惑そうに見ている。冒険者ギルドだと喧嘩なんか珍しくもないのもあって、止めようとする人はいないが、みんな料理だけは滅茶苦茶にされないよう警戒してるところはさすがだなあ。まあ喧嘩してる2人も他の人に迷惑がかからないような絶妙な喧嘩なんだけど。
ひと仕事終えて、私が席に戻るころにはギルド職員が喧嘩を止めたらしく、それまでのように酒場の活気が戻りつつある。ちょうど喧嘩していた2人が帰るところみたい。少し気まずそうに帰っていく2人とすれ違いながら席につく。
「あ、そこのねーちゃん!エールおかわりくれ!」
地味そうな店員に声をかけたロッソ。こいつまだ飲むのか。
「そういえばこの街でくる途中に聞いたんだけど、最近受付嬢の1人が行方不明なんだって?」
少し大きな声で話し出したし、物騒な話だから、ちょうどエールを持ってきた受付嬢がギョッとしてる。
「ああ、まあ、なんか、辛い事件だよな。田舎だとこういうのはあんまり起こってなかったからどうしていいかみんな分からないんだ。
アルがまた伏し目がちに話す。どうやら周りの席の人も会話がトーンダウンしてるから、聞いているんだろう。みんなにも聞こえるように少し声を大きくして1人に質問する。
「コウ?あなた、死んじゃった受付嬢と仲良かったらしいわね」
「い、いや、あいつとはただの幼馴染で……」
「おい!余所者が決めつけるんじゃねえ、リリーはまだ死んだって決まったわけじゃないんだ」
隣の席の冒険者が話に割って入ってくる。他の席の人の表情を見る限り、みんな死んだとは思ってないみたい。
「あ、ごめんなさい、私が間違えちゃったわ。まだ死んだって決まったわけじゃないのよね。この街にくる途中の森で、こんなのを見つけたから、死んだんだと思っちゃったわ」
そういってポーチから1枚の破れた布を取り出す。
「これ……酒場のエプロンじゃないか……。リリーの刺繍が……。」
「しかも血だらけじゃないか!どこでこれを!」
「ああ、俺たちが来るときに見つけたやつか。やっぱりここのエプロンだったんだな。この状態を見る限り、その娘の生存は無理だろうな。魔獣にでも喰われたんだろう。そのうちグールの討伐依頼がでるかも。さっそくEランクの俺たちの出番か」
グールとは、一般的に強い想いを持ったまま、魔獣に殺されたり、死体を喰われることで、モンスターに生まれ変わるというもの。
もし生前、特定の人物に怨みがあるなら、どれだけ離れていても、ゆっくりながら確実にその方向に向かって来る。生き物はグールに近づくほど生気を吸い取られ、そして死んでいき、その人間もグールになる。
野宿している冒険者や小さな村なら、気を抜くと夜のうちにまとめてグールの集団にさせられる、という恐ろしい魔物だ。
ただ、あまりにも遅い動きと、大人が武器さえあれば1対1ならほぼ負けることはない、という理由から主にEランク冒険者の取り合いになるほど簡単な依頼になっている。
「そ、そんな……」
いつの間にか完全に静まり返ってしまった酒場に、唇を青くしたコウのつぶやきが響き渡る。みんなどう声をかけていいのか分からないでいるみたいだから、例の受付嬢とコウの仲は、この村ではそこそこ知っていたんだろう。