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副長の子どもたちは人類の最高傑作

「おれたちの第一言語は英語だからね。日本語、むずかしいね。「フジヤマ、ゲイシャ、スシ、テンプラ、スキヤキ、このくらいしかわからないね」とくにジダイゲキの言葉、むずかしすぎます」


 俊冬は、おれをよんだらしい。おどけたようにいった。

 おいおい、むずかしいっていうなよ。


 この時代の人たちよりよほどうまくしゃべっているじゃないか。


 思わず、ツッコまずにはいられない。


「きみが疑問に思うであろうことを、さきに答えておこう。まず、おれとこいつは双子でも兄弟でもない。ただたんに、おなじ遺伝子からつくられたという関係なだけだ。当然のことながら、丹波にいる義母と義姉も赤の他人だ。事情があって柳生家をおわれたあの母娘を、たまたまおれたちが助けた。そこで、京での生活と安全を保障するかわりに、義理の親子のふりをしてもらうよう頼んだわけだ。松吉と竹吉が捨て子だというのは誠のことだけどね」


 う、うん……。


 創作以上に創作っぽいその裏話に、声がでないので心でうなずいてみた。


「きみと出会うまでに、この時代の主要人物に片っ端から会いにいったんだ。そして、さもおれたちが隠密や御庭番として名をはせているかのように、記憶を植え付けたってわけさ。それこそ異世界転生じゃないけど、おれたちのスキルの一つに暗示というのがあってね。チートスキルってやつかな?声の抑揚や言葉の操作で、相手を操ったり記憶を改竄することができるんだ。だから、おれたちに会ったことがある。おれたちは凄腕の密偵であり暗殺者である、と記憶を植え付けることができる。ほかにも、いろいろ下準備をしたうえできみと再会し、行動をともにするようになったというわけだ」


 う、うん……。


 もはや、心のなかでうなずくのもむずかしい。


「その間は、兼定がきみを護ってくれる。それから、副長と利三郎も。おれたちは、安心して下準備をすることができた。きみを護るための。それから、きみが護りたいと願う副長や新撰組も同様だ。坂本龍馬さかもとりょうまやおねぇ、あっおねぇはちがったかな?兎に角、それらすべてを護り抜くためには、いくらおれたちでも下準備や工作なしにはムリだからね」


 俊冬が『相棒と副長と利三郎が護ってくれる』といったとき、反射的に三人・・視線を向けてしまった。


 利三郎は、不敵な笑みとともに両肩をすくめた。副長のイケメンには、これまでお目にかかったことのないやさしい笑みが浮かんでいる。


 副長のはどれだけほれた女性にたいしてでも、こんなにやさしい笑みをみせることはないだろうっていうくらいのやさしくあたたかい笑みである。


 そして、相棒である。


 視線があった瞬間、いつものような「ふふふんっ」っていう鼻鳴らしの塩対応ではなく、どことなくやさしげな感じに口吻がゆるんだ、気がする。


「暗示にかけていたり、だましていた何名かには真実を告げて謝罪をした。会津中将、それから永倉先生と原田先生。永倉先生と原田先生には、こいつが告げた。それから、おれは丹波で沖田先生や藤堂先生に」


 深更、会津侯と別れる際にハグされた。いまの俊冬の説明で、会津侯がそのときにささやいた言葉の意味が理解できた。


 それを思えば、永倉と原田と二度目の別れの際、かれらの様子がおかしかったことが思いおこされた。そのときには、かれらも別れじたいに平静でいられないんだって思いこんでいた。

 だがしかし、その直前に俊春から真実をきかされ、かれらも混乱していたのかもしれない。


「なぜ、このタイミングで正体と真実を明かしたのか?」


 かれは、言葉がでないままでいるおれに微笑んできた。


「蝦夷に渡ったら、本格的な戦闘になってゆく。うしろめたさや心配事を抱えているままでは、おれたちも本来の力を発揮することができない。だから、いまのうちにそれらを解消したかった。そして、なによりも近藤局長との約束があったからだ」


 かれは、しばし視線を天へと向けた。


「肇君。きみに真実を告げ、その上できみや副長を護ってほしい……。近藤局長は、副長や沖田先生とはちがう意味で、きみのことを心配されていたから」


 近藤局長が?


 なんか涙がでてきた。


「おれたちは、さっきもいったとおり究極の兵器だ。現代に存在するいかなる兵器をも凌駕する、人類の最高傑作といっていい。実際、おれたちは科学者たちが想定していたよりもはるかにうわまわる成果をあげている。とくに中東では、きみもしっている人物を精神的に追い詰め、結果的に破滅させた。それ以外でも、「9.11」以上のテロ活動をいくつも阻止している。軍事規模でいえば、北朝鮮や中国やロシアといった国の基地や施設をいくつも消滅させた。こいつとおれ、二人っきりでだ。きみになら、おれがいまいったことを理解できるよね?」


 理解したくても、想像の斜め上をいきすぎていて正直できそうにない。


「いやいや。正直なところ、なにがなにやらさっぱりわからねぇが、兎に角すごいってことはなんとなく理解できた。おめぇらなにか?土方の餓鬼ってわけか?」

「おれの餓鬼ぃぃぃぃぃぃっ?」

「副長の餓鬼ぃぃぃぃぃぃっ?」


 突然、割り込んできた松本の問いに、俊冬と俊春と相棒とおれをのぞく全員が叫んだ。

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