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事前にミーティングしましたよね?

 ってか、改造っていうのか改良っていうのか、兎に角それだけでもすごい話である。


 その上、あそこまで視力がいいなんて……。


 現代人は、双眸になにかと負担をかけまくっている。パソコンとかスマホとかもそうであるが、勉強や生活そのものや食事なんかでも負担をかけたり悪い影響をあたえ、視力の低下や病気をひきおこしてしまうことがある。


 俊冬は、現代人とはちがって視力が低下するなんてことはないのかもしれない。

 かれは、いろんな面でスーパーウルトラな男であるから。


 もしかすると、俊冬の視力は世界一といわれているタンザニアのなんとかという部族の11.0を軽くこえているんじゃないのか?


 ってか、それだけの視力があったら、のぞきとかやりたい放題なのでは?


 ってそんなこと、元刑事(でか)のおれが推測することか?

 

 もとい、それほどの視力であれば、監視とかはりこみとかに役立つにちがいない。


 とりあえず、視力のことはどうでもいい。


「綿密な打ち合わせまでして……。ぽちもたまも、おれたちを驚かせようとして。人が悪いですよね」

「だから、なにゆえそのようなことを問う?」


 俊春は、またしても斜め上をいきまくっている問いを返してくる。


 いつの間にか「宗匠」のあゆみがとまっていた。みると、まえを進んでいる全員の脚がとまっているではないか。


「にゃんこに会ったのは、さきほどがはじめてだ」


 そして、つづけられた俊春の言葉に、全員が驚きの表情かおになった。


「そんなのおかしいでしょう?遠くの樹の上から狙撃手が狙っているってこともそうですが、くないのようなちいさな的にヒット、もといあてさせたり、撃ってくる弾丸たまをくないで弾き飛ばしたり……。綿密な打ち合わせをし、示し合わさなければできませんよ。ってか、それ以前に、たまがきているってこともですし、改良だか改造だかしている銃をもっているということをしってなきゃいけません。どうかんがえても、事前に会ってなきゃ、そのどれもがあれだけうまくできるわけありません。それに、辻褄だってあいませんよ……」


『常識ではかんがえられない』


 そこまでいいかけた。が、いろんな意味で常識など通用せず、そもそも常識の範疇にない俊冬と俊春に、その単語をたたきつけても無意味である。だから、それはのみこんだ。


「えっ、そうなのか?ぽちは、にゃんこと示し合わさねばならなかったのか?」


 俊春の心底驚いたという表情かおが、こちらをみあげている。その脚許では、相棒がよりいっそう眉間に皺をよせ、こちらをにらみあげている。


「『マスト』、もとい『ねばならない』という意味ではありません。打ち合わせていなければ、フツーはあそこまで連携できないっていいたいんです。そうですよね、副長?」


 このままでは、みなが不可思議に思っていることを代表して述べているおれが、悪者っていうよりかはいじめの加害者になってしまう。

 ゆえに、副長もまきこむことにした。


「なんだと?おれに同意を求めるんじゃないよ……。だが、まぁたしかに主計のいうとおりだな」

「ええええっ?」


 俊春は、さらに驚いたようである。おれだけでなく、みなの相貌かおをみまわしてから、最終的には俊冬に視線を向ける。


「にゃんこ。人間ひととは、じつに面倒くさいもののようですな」


 それから、かれは嘆息する。


「わんこの鼻は、わんこ以上なのです。つまり、兼定より鼻がきくのです」


 俊冬が笑いながらいうと、俊春はにっこり笑って付け足した。


「にゃんこの体臭は、どれだけ消そうがすぐにわかります。もっとも、にゃんこだけでなく、一度接触した人間ひとのそれは、たとえ水中にいようとわたしの鼻はにおいを逃しませぬ」


 犬は、水をかぶられたり水に入ってにおいを消されれば嗅げなくなってしまう。


「わが鼻はぽちの鼻。この世とあの世をあわせても、一番きく鼻でございます」


 いろんな意味で唖然としているおれたちのまえで、俊春は「えっへん」って感じになっている。


 いや、俊春よ。たしかに鼻はきくかもしれないが、そこまでいくとちょっとひいてしまうぞ。


「ふんっ!耳朶がつかえぬのだ。せめて鼻なりともつかえねば、わんこは用なしであるからな」

「にゃんこ、なんですと?」


 俊春は、つぶやきにしてはおおきすぎるその内容を、俊冬の心か口許かをよんだらしい。

 ソッコー気色ばんだ。


「でっ、においはわかった。それ以降は?においでちかくにいることはわかったとしても、銃のことや、ましてやその銃で樹から狙うなどと、わかるはずもなかろう?」


 副長が、俊冬と俊春の間で喧嘩に発展するまでに問うた。しかも、副長は自分の軍服の上着を、くんくんと嗅いでいる。


 おれも、思わず上着やシャツのにおいを嗅いでしまっている。

 さっとみまわすと、俊冬をのぞく全員が、それぞれの軍服や腕や掌のにおいを嗅いでいる。


 汗臭いにきまっている。なにせ、ここしばらく風呂に入っていない。体を手拭いで拭いてすらいない。


 相棒のような警察犬が犯人を追う際、たいていは足跡臭をたどる。相棒の場合は、足跡臭だけでなく、空中に浮遊する臭いも追えるよう訓練している。いずれにせよ、犯人の汗の臭いを追うのである。


 ってことは、犬をも超越している鼻の持ち主である俊春は、おれたちの体臭がすごいって思っているのではなかろうか。

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