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スッゲーからの妄想がとまらない

「そして、わたしだ」


 俊春の咆哮のような叫びが耳に入ってきた。


「カチンッ!」「カチンッ!」「カチンッ!」


 狙撃の第二波である。


 俊春がこちらを向き、左掌に握るくないをふるっている。


 マジか?


 狙撃手が撃った弾丸たまを、くないで弾き飛ばしているのだ。


 おそらく、であるが。


 なにせ一瞬のことなので、みえるわけがない。創作の世界では、たいていそうするはずである。


 以前、かれは刀で弾丸たま斬りをしたことがある。俊冬も同様である。かれらは弾道をみきわめることができる。

 人気アニメのほうの「石川〇右衛門《いしかわ〇えもん》」のごとく、弾丸たまを斬ることができるのである。


 おつぎは、くないで弾丸たまを弾き飛ばすという偉業をやってのけたのだ。


 敵も味方もなにをみているのか、なにが起こっているのかわかっていない。


 それほどまでに、狙撃手も俊春もすっげーことをやっているというわけである。


「さぁ、ゆくぞっ」


 さらなる俊春の咆哮。刹那、こちらを向いていたかれの姿がかき消えた。

 

 文字どおり、忽然と消えてしまったのである


 そして、またしてもおれたちは奇蹟を目の当たりにした。


 かれが姿をあらわしたのは、馬上である。といえば、なんでもないように思える。が、その馬じたいが敵軍の馬であるなら、なんでもなくなってしまう。


 伊地知か板垣か、もともとどちらの馬かはわからない。兎に角、かれはいまどちらかの馬上に立っているのである。


 しかも、両掌に人間ひとを握って……。


 厳密には、両方の掌で人間ひとの項部分を握っているようにみえる。猫の頸をもっているような感じにである。はやい話が、頸ねっこをつかんでいるってわけである。


 かれは馬上に立ったまま、両腕をあげた。大の男二人を、こちらにかかげてみせている。


「どこがよいか?望みをきいてやろう。苦しまずに逝くのなら、やはり眉間であろうな」


 俊春の声が向こうから流れてくる。さきほどとおなじく、凄みのある低い声音である。


 この声で「主計がぽちをいじめる」なんていわれれば、そのまんま頸骨でもひねりつぶされるんじゃないかとびびってしまうだろう。


 俊春と伊知地と板垣の周囲にいる銃兵や歩兵たちは、微動だにせずその場に突っ立ち、馬上をただ呆けたようにみあげているにちがいない。


 こちらから、そんな様子がみてとれる。


 敵兵のだれもが、俊春の人智をこえる動きを目の当たりにしても、まだそれを脳へ伝達できていないのであろう。


 それは、頸ねっこをつかまれている伊地知と板垣も同様である。いっさい抵抗せず、頸ねっこをつかまれ宙ずりにされるがままになっている。


 実際には、かれらもどうにもできないにちがいない。


 

 俊春がもともといた地点からいまいる馬上まで、ゆうに百メートル以上はあった。それを瞬きどころか刹那以下の間に移動し、しかもどちらかの馬から大の男をつかみ、もう一頭の馬上へと移動までしてのけているのである。


 ちなみに、世界最速の男といわれているジャマイカの「ウサイ〇・ボルト」の百メートル走の世界新記録は三十七秒十。世界最速の動物であるチーターは、百十キロの速度ではしることができるらしい。それを百メートル走にすれば、三秒か四秒くらいであろう。


 それをかんがえれば、俊春の動きは駆けるとかはしるのではなく、瞬間移動テレポーテーションにあたるのかもしれない。

 

 そうなると、超能力である。


 超能力と表現してしまったが、これもまた技術の進歩はすごいもので、量子力学の量子物理を利用すれば、微粒子レベルで瞬間移動できるらしい。


 人工知能エー・アイなども、一昔まえは創作の世界であった。だが、それらも現代では現実となっている。


 それをかんがえれば、もしかしたら俊冬と俊春は、未来から送りこまれた「ター〇ネーター」じゃないのかと、マジでかんがえてしまう。


 であれば、かれらの驚異的な身体能力も納得がいく。


 だったら?


 映画のなかでは、「スカ〇ネット」という自我をもつコンピューターにとって脅威となる男性の出生を阻止するため、その母親を抹殺するのに「ター〇ネーター」が送りこまれたのである。


 この幕末に、はるか未来のコンピューターに脅威をあたえる者の先祖がいると?

 だとすれば、それはいったいどこのだれ?


 ってか、おれもタイムスリップしている。ということは、おれも送りこまれた刺客ってこと?


 あぁ……。妄想がとまらない。愉しすぎる。


「主計っ!いいかげんにしやがれ」


 副長の怒声で、妄想からリアルへとひきもどされた。


 副長は、相棒をはさんだ「豊玉」の馬上からおれをにらみつけている。

 当然のことながら、そのイケメンの眉間には幾本もの皺が濃く刻まれている。


「す、すみません。あまりにもすごすぎてつい」


 二頭の騎馬の脚許から、相棒が鼻を鳴らす音がきこえてきた。







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