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「そうこなくちゃな。主計っ」

「はい」


 仕切り直しである。


 あらためて「之定」を構える。


 永倉も半次郎ちゃんもそれぞれの得物を構えているし、俊春をはさんだ向こう側で、有馬と黒田も構えている。


 俊春は、おれたちにはさまれた状況でも、さして慌てることもうろたえることもない。こちらに背を向けていたが、横向きになった。垣間見えるかれの右半面がうれしそうに輝いているのは、月あかりのせいだけではないであろう。


 かれはおれたちに視線をはしらせてから、有馬たちにも視線それをはしらせる。

 それから深く息を吸い込み、吐きだすことを二度つづけた後、左掌が左腰にそえられた。それを、砂地に落とす影で確認をする。


 得物を遣うつもりなのか・・・・・・。


 当然のことなのに、なにゆえかゾクッとする。かれがおれたちを傷つけるわけはない。それはわかっているものの、なにゆえかゾクゾクする。


 ワクワクという意味でのゾクゾクと、わずかながらの怖れにたいするゾクゾクである。この両極端のゾクゾクが、体内でせめぎあっている。


「主計。あいつは、どこからどう攻めようが無理だ。八郎との勝負、おぼえているか?」

「え?あ、はい。相手だけをみるのではなく、視野をひろくする。つまり、心に余裕をもたせ、その上でなにもかんがえず、本能のままに攻めるってやつですよね」

「そのとおりだ。ムダに力がついてしまうと、つい深よみやさきよみをしてしまう。それらは、こちらよりあいつのほうが長けている。ゆえに、やるだけ思うつぼってわけだ」

「なにもかんがえぬようがんばります。っていいたいところですが・・・・・・」

「ほら、笑え。表情かおがかたすぎる。いまにも殺られそうだ、って切羽詰まっている表情かおになっているぞ」


 永倉は得物を握ったまま両肩を上下させ、緊張をとく仕種をする。


 永倉から俊春へと視線を戻しかけ、ふと副長と相棒に視線それを向けてみた。


 二人・・で並び、おなじような表情かおと雰囲気で俊春をみている。


 その二人・・から視線をひきはがすと、つぎは自分自身の手許に視線それを落とした。


 親父だったら、あんな強敵をどうやって倒すだろう。


 ってか、現代にあんなの(・・・・)がいたら、SNSで有名になっているだろう。俊冬が動画を撮影、編集し、俊春に武道家とか喧嘩自慢の素人と戦わせるのである。ときには、海外に遠征し、ライオンとかトラとかと戦ってもいい。さらには、俊冬と二人で、大人数のギャングや極道やくざやテロリストを相手にしてもいい。


『気に入ってくれたら、高評価、チャンネル登録お願いします。次回は、オーストラリアでクロコダイルとプロレスをします。お楽しみに!』


 こういう感じか?海外遠征にしろ日本国内にしろ、戦いのシーンだけではなく、ゴージャスな旅、あるいは貧乏旅行の様子を伝えてもいい。もちろん、ご当地グルメみたいなものも添えれば、さらに視聴数はアップするはず。


「YouTuber」として成功すること間違いなし、だ。


 おれってこんなときに、こんなどうでもいいことをかんがえるなんて、けっこう余裕じゃね?って思ってしまった。


 お馬鹿なおれより、黒田と有馬がさきに動いた。黒田は真正面から、単純にとんぼの構えからの初太刀を放った。

 

 これが漫画にでてくる剣豪なら、「ふわっはは!馬鹿の一つ覚えよの」とかいうんだろう。もしくは、「おぬし、なにをたくらんでおる?」って、単純すぎる攻撃に裏をよみまくるんだろう。


 って、思う間もなく、黒田の刃が途中で急停止した。その剣先は、佇立している俊春の頭上に届くには残念すぎる間があいている。


 その瞬間、有馬が黒田の脇をすり抜け、あっという間に俊春の近間へと入った。入るまでに、有馬は得物を抜き放ち、同時に斬り上げている。


 俊春からみれば、右下方からの神速の居合抜きである。それが発動した刹那、いったん止まった黒田の得物がまた動きをみせた。いや、得物だけではない。それを握る人間ひとも動いた。


 黒田はちいさく踏み込むと、ほぼ有馬と並び、腕を思いっきり振り上げ、示現流の初太刀を再度放ったのである。


 同時に上方と下方からの攻撃にさらされた俊春。しかも、この二重攻撃のタイミングはぴったり合っているうえに、はやさも半端ない。


『どうする、俊春?かれは、いかにしてピンチをきりぬけるのか?次回をお楽しみに』


 って叫びたくなった。


 顔面、汗だらけである。どんだけ汗っかきやねんっていうくらい、ダラダラと流れ落ちてゆく。もちろん、体も半端ない汗の量である。シャツは、すっかりウエッティになっている。ひかれるかもしれないが、よくある乳首が透けてみえてるって超恥ずい状況に陥っている。


 それはどうでもいい。額の汗が双眸に入ってしまい、思わず瞼を閉じてしまった。


『カチッ!』


 その瞬間、さしておおきくない音がした。

 その音を耳にとらえながら、二の腕で双眸をこすった。

 それでやっと、瞼をひらけることができた。


 な、なんと・・・・・・。


 おれは、それを目の当たりにした。

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