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可愛い仔犬と可愛くない成犬

「そこでもないだろうが、ええ?それに、なんでおれが野郎おとこに抱かれるって話にすりかわる?」

「こういうのも、二次創作なんかであるあるなんですけどね。女性にウケますよ。いやマジ、ギャップがあってウケるにちがいありません。だったら、だれとってことになりますよね、ふむふむ」

「わけわかんねぇこというんじゃねぇ。それから、納得するんじゃねぇ」

「お気持ちというのは、いまから挑む勝先生との話し合いのことです」

「はぁ?」

「はい?」


「ゴーイング・マイウエイ」俊冬。自分で話をふっておいて、盛り上がりかけてるところでもどしてしまうなんて・・・。


 ってか、おれが甘えたがり?


 そこもツッコミたかったのに・・・。


 ってか、おれってそんなふうにみえるのか?

 

 BL的にはそうかもしれないが、女性にたいしては、男らしくリードしたい派なんだが。


「たま、ぜひとも勝先生にも同様のことをやってもらいてぇな」

「勝先生は、副長とはちがう意味でのおれ様系でしょう。舌先三寸で誘ってやりまくり、あちこちに子をなし、責をとらねばならなくなる。勝先生は、口は悪いが責任感は強いですから。やりまくった罪は、ちゃんと償うということでございます。ゆえに、わたしはたとえ演じるのであっても、勝先生とはやりたくありません」


 どういう意味だ?


 たしかに、勝は正妻のほかに妾が五人いる。子も、たしか九人いるはず。

 正妻と妾を同居させるという、フツーだったらあらゆる意味で地獄レベルのこともしてのけている。


 そのとんでもない所業と、俊冬が女性を演じたくないというのは、なにか関係があるのか?


「ただ単純に気がすすまぬ、というわけだ。おぬしの言の葉でいうと、ぶっちゃけチャラくてウザい、というわけだな」


 俊冬、またおれをよんだな。

 

 それは兎も角、かれがいいたいのは、勝のことが嫌いで鬱陶しいから、演技でも甘えたくない、ということか。


 ならば、副長ならウエルカムってことなのか?


「ふっ」と、俊冬の口角があがる。左脚許では、相棒があきれたように「ふんっ」を連発している。


「まぁわたしが女子おなごを演じたとて、副長は弟のほうが好みでありましょう」


 俊冬は、局長や俊春が連行された越谷のほうへイケメンを向ける。


「わが弟ながら、女子おなごみたいになよなよしていて、気色悪いことがあるからな」

「えーっ、そんなことないですって。女性っていうよりかは、仔犬みたいって思いますよ。かわいかったり、キュンとくることありますから。どんだけたまに罵られたり、兄貴風吹かれたり、肉体的にも精神的にも傷つけられたりしても、兄のうしろを尻尾振り振りついてゆく。そんな感じです。どこかの成犬にも、ぜひとも見習ってもらいたいもので・・・。いたっ!」


 どさくさにまぎれ、つい本音がでてしまった。


 なんと、相棒が左脚に頭突きをかましてきてる。


「ジョ、ジョークにきまってるじゃないか、相棒」


 後悔さきに立たず。口から言葉をだすときは、かんがえてからだしましょう。


「そういえば、副長もまんざらではないですよね?」


 って、舌の根の乾かぬうちにいってしまってる。


「忘れたって、いわせませんよ。「おれを、落としやがれ」発言。あれは、どんな有名人や著名人のカミングアウトより、衝撃的でしたから」


 おれ、なんて強気なんだ?今日のおれ、いったいどうしてしまったんだろう?


 だまりこくっている副長を攻撃しながら、自分でもいっちゃってるって感じる。

 ヤクをやってるのは、俊冬ではなくおれか?


 将軍警固の任務で、上野の寛永寺に詰めたときのこと。謹慎中の将軍を慰めるため、俊春が伽をつとめていることをしってしまった。ってか、ぶっちゃけ、表向きはあっちのほうも自粛せざるをえない将軍が、お気に入りの俊春をベッドに誘ってはやりまくってたというわけである。

 

 それをしった副長は、永倉や原田や斎藤、それからおれがドン引きするほどぶちギレた。そのときに、その台詞を俊冬と俊春に向かってたたきつけたのである。


 もっとも、俊春にはトラウマがあるようだ。かれは、こっちがドン引きするほど怯えまくった。

 副長はそれをみて、自分が地雷を踏んだことに気がついたのである。


 そこまで思いだしたとき、おれ自身も興奮がさめてしまった。


 俊春のあの怯え方は、子どもの時分ころに性的虐待を受けたトラウマである。しかも、そうとう深刻なものだ。


「申し訳ございません。調子にのってしまいました」


 なにゆえか、いまだだまったままの副長に謝罪する。しかも、眉間に皺が濃く刻まれているわけでもなく、比較的穏やかな表情かおをしている。

 

 よけいに不気味である。


 そして、俊冬も沈黙していることが、よりいっそう不気味さに拍車をかける。


「あの・・・、副長?いっそのこと、馬鹿野郎って怒鳴ってください」


 あまりにも不気味すぎて、自分から叱ってアピールをしてみる。


 っていうか、人どおりはないとはいえ、おれたちは朝イチの往来でなにをやってるんだ?

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