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見舞い

 会津藩の藩医は、翌朝さっそくきてくれた。


 それまでに、おおくの仲間たちがきてくれた。


 一番はやかったのが、局長。

 一番はやいというよりかは、接待でおそくなったところに副長から報告され、慌ててやってきてくれたというわけである。


 まだ眠っていた。傷のせいで、熱でもでたのであろう。瞼を閉じれば、爆睡してしまう。


 が、廊下をばたばたと駆けてくるその音で、が覚めてしまった。


 局長は、剣術のときには気配も物音もさせないが、それ以外のところではどちらも盛大に発してくれる。ゆえに、わかりやすい。


 半身を起こそうとすると、看病してくれている山崎がそれを助けてくれる。


 上半身が、悲鳴を上げる。背中に痛みがはしる。それでも、我慢して起き上がる。


 山崎が支えてくれなかったら、おれは途中であきらめたかもしれない。


「主計っ!」


 大音声と、障子があいた「すぱんっ」、という小気味よい音がかぶる。


「おお、おお、主計っ!生きていたか・・・」


 大声で喚きながら、ずかずかと部屋に入ってくる局長。

 着物袴に、大小を帯びたままのいでたちである。


「局長、おおげさです。命に、別状はありませぬ」


 座を空けながら、冷静に報告する山崎。


「ああ、わかっている。わかっているが、顔をみるまでな・・・。だが、安心した。主計、歳の生命いのちを救ってくれたのはこれで二度目。ありがとう・・・。心から礼を申す」


 局長は、それまで山崎が座っていたところにどかりと胡坐をかき、大声でいう。

 おれの肩のあたりを、ばしばしと大きな音がするほど容赦なくぶちのめす。


 背中に強烈な痛みがはしったのは、いうまでもない。


「局長っ、かように叩けば、主計が死にます」


 クールな山崎の、クールすぎる忠告。


「おお、すまぬすまぬ。兎に角、無事でよかった。誠に無事でよかった・・・」


 痛みのあまり、副長ばりに眉間に皺がよっているにちがいない。


 局長は、おなじ言葉を繰り返す・・・。


 痛みをこらえながら、がんばって微笑する。

 すると、局長もやっと落ち着いてくれる。



 永倉と原田も屯所にでてきてきいたのか、すぐにやってきた。


「主計、たいへんだったな。くそっ、おれも一緒に戻りゃよかった。河上だったらしいじゃねぇか?遣りあってみたかったぜ」


 永倉は枕元に立ってみ下ろし、文字通り地団太踏んで悔しがる。


「えっ?そこなのですか?」


 苦笑しつつ、突っ込んでしまう。

 おれの安否より勝負のことにこだわるとは、さすがは「がむしん」、とある意味感心しつつ。


「それにしても、しつこいやつだ。そうだ、三浦、三浦啓之助にやらせりゃいい。仇討ちっていう大義名分がありゃぁ、背後にいる連中も黙るしかねえだろう?」


 おお・・・。


 原田が、めずらしく正論を述べる。

 永倉も驚いている。


「だめだ」


 朝までずっと看病してくれている山崎が、このときも冷静にだめだしする。


「副長が、すぐに三浦を呼びにいかせたが、三浦は島原のひいきにしている芸妓のところにしけこんだ後だった。体調不良を理由に、屯所に戻れない、といったらしい」


「役立たずめ」


 永倉のつぶやき。

 かれだけでなく、だれもがそう思う。



 井上や野村、吉村や子どもたち、おおくが訪れてくれた後、藩医がやってきた。

 すぐに診てもらった。


 傷は浅く、数日おとなしくしていればいい、という。塗り薬と包帯を置いていってくれた。


 ひとえに、山崎の神対応のお蔭であろう。


 

 静けさを取り戻した後、あの男がやってきた。

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