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おおきくて美しいモノ

「どうした?副長のめいだぞ?」


 その場にかたまっている双子に、斎藤がみあげつつ問う。いつものごとくさわやかな笑みを浮かべているが、いろんな意味でいやらしいって感じにみえなくもない。


「見苦しきものを、おみせしたくございませんので」


 しばしの間をおき、俊冬は上司からのセクハラに対し、やんわりを醸しだしつつきっぱり拒絶する。


「見苦しきもの?ならば、気にする必要はあるまい。見苦しくとも、平気でみせている者もおる。そうですよね、副長、主計?」

「斎藤っ!そりゃいったい、どういう意味だ、ええ?」

「斎藤先生。いったい、どういう意味なんです?」


 思わず、副長とクレームをつけてしまう。


「ときどき、おれにたいして暴言をはいてるよな、斎藤?」

「ええ?まさか・・・。わたしはただ、みたままのことを申し上げているだけです」


 斎藤・・・。それが暴言っていうんだよ。


「みたままって・・・。隠しているのに・・・」


 思わず、よりいっそう手拭いでガードしてしまう。


「おいおい、なにをちいさいことをいってやがる?だいたい、てめぇ自身のモノとじっとくらべるってぇほうが・・・」

「おそれながら、そちらではございません。厳密に申せば、大小の見苦しさではございません。大小のことならば、まったく問題はございませんので。お忘れでしょうか?わたしのは、あの・・おねぇが愛してやまぬしろものでございます」


 副長にかぶせ、俊冬が補足説明する。


 そういえば、あの・・おねぇは、俊冬のモノを斬ろうとしたか、彫り込もうとしたのだった。


 ってか、いまのは、でかいとうことを遠回しに自慢してたのか?


 それは兎も角、かれの見苦しいというのが、体の傷のことだということに思いいたる。

 斎藤も同様に、俊冬のいいたいことが傷のことであることに気がついたらしい。


 将軍警固の際、永倉や原田とともに、双子の鬼鍛錬をのぞき見したことがある。もちろん、かれらにはばればれだったんだろうけど。

 そのとき、かれらは上半身裸で、傷だらけの体が月明かりの下ではっきりとみえていた。


 斎藤は、それを思いだしたのである。


「裸好きのだれかさんに、惚れられても困りますゆえ・・・」


 さらに遠回しに拒否る俊冬。


「あ、ああ。まぁ無理強いはせんがな。なら、背を流してくれ」


 副長も、俊春のマッパはみたことがある。将軍警固で最後の忍びといわれる沢村甚左衛門と忍び対決したときにである。


 副長も、それを思いだしたのであろう。


「ちょっとまってください。裸好きのだれかさん、ってだれのことですか?原田先生ですよね?」


 さきほどの俊冬のいいまわしに、念をおしておく。


「原田先生は、ご自身がなるのが・・・・大好きである。それをみせるのが好きであって、他者ひとがなるのをみるのは好きではない」


 それまで静かだった俊春が、断言する。 


「ちょっ。だったら、おれってことですか?失礼な。野郎の裸身なんて、おれだってみるのは好きじゃありません。そりゃぁ、女性だったら・・・。ってか、女性でも、自分のカノジョとか、合法的かつ同意の上でみるにかぎります」


 おれは、なんでこんなにいいわけばっかしているんだ?


「ならばなにゆえ、われらの体躯を観察する?それに、いまだって、副長と斎藤先生の裸身を、こっそりうかがっておるでは・・・」

「わーっ!」


 俊冬の鋭い指摘に、つい叫んでしまう。


 いやらしい意味ではない。だれだって、他人ひとの体がどんななのか、ついみたくなるものではないのか?


「主計。自身と比較して、なにが面白いというのだ。みすみす、うちのめされることをせずともよいと思うが?」


 斎藤が、アドバイスっぽいものを送ってくる。


「斎藤の申すとおり。おおきくて美しいものとくらべることじたい、愚の骨頂じゃねぇか」

「はあ?」


 そして、副長のご高説。おおきくて美しいものって、いったいなんのことだ?

 たぶん、世の土方ファンが大喜びするモノ・・のことなんだろう。


「さすがは副長。世の(ことわり)を、よく理解されていらっしゃいます。なれば、そのおおきく美しものも含め、按摩いたしましょう」

「ならばわたしは、おおきく美しいものも含め、斎藤先生のを」


 俊冬と俊春は、自分たちが裸身をさらすのをうまくかわし、しれっと的をそらしてしまう。


 双子は、副長と斎藤を風呂の床にうつ伏せにさせると、マッサージをしはじめる。


「そういうのを、ファッションマッサージていうんですよ」


 ちょっとちがうが、嫌味をぶつけてやる。


 だが、異世界転生でマッサージ師をしていた双子の技術は、実証済みである。


 おれが、すべてをすませて風呂からでるときもまだ、副長と斎藤は至福のときを味わっていた。


 もちろん、いかがわしい行為はいっさい抜きである。

 すくなくとも、おれが風呂にいて見張っていた間は・・・。


 それにしても、おれのときには二人がかりで肌の角質をこそぎ落としまくってくれたのに、副長と斎藤に対しては、気持ちのいいことをやるって・・・。いったい、どうよっていいたくなる。


 くどいようだが、気持ちのいいことというのは、あくまでも中国の先史時代からおこなわれている手技療法のことであって、それ以上踏み込んだことではない。



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