表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

474/1255

お話の主人公は女の子だよね

「それで、おまえがいた時代ころは、どうなるんだ?」


 局長と副長のだんだら羽織論争を横目に、原田がきいてくる。


「そうですね。歴史、とりわけ戦とか暴力がからむようなものは、どちらかといえば男性が好むものですが、おれのいた時代ころになりますと、女性も興味を抱くようになりまして」

「ほう」

「へー」


 女性という言葉ワードに反応するのは、もちろん、ナンパ野郎というのか、スケコマシというのか、副長と原田である。


「もちろん、昔を踏襲した真面目な話もおおいです。ですが、タイムスリップ、つまり時代を逆行するおれみたいな話とか、転生、これは死んで生き返ったらこの時代のだれかになっていた、とかがおおいですね。そういう話も、たいていは若い女性か男性・・・」


 いってから、はたと気がつく。


 幕末にかぎらず、タイムスリップ系や転生は、高校生の男女、もしくはそれにちかい年齢としがおおくないか、と。


「信長Oシェフ」、主人公のフレンチのシェフは、結構いってたよな。それから、「JON」。幕末にタイムスリップする脳外科医の話。あれも、主人公は結構いってた。


 だが、ほとんどが若い。すくなくとも、犬連れの二十代というのは、なかった、よな?


「そういう設定でなくっても、理由わけありで男装で入隊する女性とか・・・。うーん、真面目な話でも、たいていは、色恋がからむものですね。あ、もちろん、女性とのって意味です。創作の基本は、バイオレンス、セックス、チルドレンやアニマルですから」


 わざと日本語はつかわない。

 ふと、双子と視線があう。


 二人の傷だらけの相貌かおに、ニンマリと笑みが浮かぶ。


 意味が、わかるのか?きっと、異世界転生で通訳でもやってったんだろう。


「つまり、暴力、色恋、子どもや動物。これらが入っているほうが、ウケるのです」


 なんだか、創作講座っぽくなってる。


「それで、その男装の女子おなごというのは?どうなる?」


 意外にも、斎藤が喰いついてきた。


 そういえば、少女漫画で、男装の女の子が入隊し、そこで繰りひろげられるどたばたストーリーがある。女の子は月代まで剃って入隊するが、沖田にバレてしまう。二人は、好き同士になるが、そこはストーリー上、すれちがい、誤解、がおおく・・・。そののことを、たしか斎藤が好きになるんだったか?


 思わず、ぷっとふいてしまう。想像できない・・・。


「たいてい、だれかと恋仲になりますよね。でもほら、女性ってバレたら大変ですからね。それを巡って、筋書きがすすんでゆくわけです。斎藤先生は、クールな、いえ、冷静な剣士で、副長の懐刀として、めっちゃかっこよく描かれていますよ。女性との逢瀬もあったりして」


 斎藤の相貌かおに、照れ笑いが浮かぶ。


 いったい、かれは、いまのどこに照れているのだろう?



「おれは?おれは、どんな別嬪さんと恋仲になる?」


 うっ・・・。

 よりによって永倉か?すまない、永倉。おれは、ついぞあんたの色恋沙汰メインの創作にふれたことがない・・・。


「永倉先生は・・・。そう、小常さん一筋の愛妻家で、色恋より新撰組の最強の剣士として、かっこよく描かれることがおおいです、はい」


 ふうっ。体裁を取り繕うのも大変だ。が、まったくの嘘ではない。


「そうかそうか」


 うんうんとうなづく永倉。

 あ、それで納得しちゃうんだ・・・。


「あ、わたしは?わたしはでてくるかな?」


 うっ・・・。島田?

 正直、きつい。恋愛面では、乙ゲーですら、対象になってなかったかも・・・。


「し、島田先生は・・・。そうですね。山崎先生とともに、局長や副長、それから、新撰組そのものを支える重要人物として、描かれています」


 これもまんざら嘘ではない。ただし、山崎が前半部分を支えたのに対し、島田は後半部分、いまからである。


「わたしは、どうだ?」


 はぁーっ・・・。局長?

 恋愛面では、みてくれのわりには女にだらしない感が半端ない。

 そして、これからのことのほうがドラマチックである。


「局長は、それはもう正義感の強い、立派な武士として描かれています」


 これも、真実。かなり端折っているだけ。


「おれは?おれはどうだ?」


 原田か。これは、問題なし。


「ええ、新撰組一の槍遣いとして、かっこよく描かれてます。あと、ルックス、外見もいいので、おまささんと出会うまでは、女性との色恋沙汰がすごかったとも」

「だろうな」


 おいおい、原田よ、納得するんじゃない。


 副長とがあう。


 ニヒルな笑みが浮かぶ。


 問わずとも、副長にはわかってるんだ。かなりどころか、超絶マックスに恰好よく、女性にもモテモテだってこと。


「副長は、松尾芭蕉まつおばしょうも驚くほど句がお上手だということと、自尊心が鼻もちならないほど高いってことが、どの作品にも描かれていますね」

「なんだと?」


「グッジョブ、主計」


 以前、教えた英語を覚えていたらしい。永倉が、拳を突きだしてくる。それに打ち合わせながら、「センキュー」と返す。


「くそったれ、主計」


 副長が毒づくと、みな、笑いだす。


「ええ、副長は、一番かっこいいですよ。色恋沙汰も副長が一番。そのつぎが、沖田先生や原田先生、ですね。藤堂先生も同様です。井上先生は、色恋沙汰というよりかは、みんなを支えるお父さん的な役割でしょうか」


 しばし、いない者に想いを馳せる。


「ならば、なにゆえおぬしだ、主計?」

「え?それ、どういう意味です、俊冬殿?」


 なんの突っ込みか?


「男装の女性や、十代の男女だとすれば、おぬしは規格外ではないか?」


 はい?そこ、ついてくるか?


「そうだよなー、たしかに、女子おなごのほうが、みていて愉しいし、の保養になる」

「さよう。新八さんの申す通り。もしも、男装をしったとしても、わたしだったら、護ってやるな。主計、おぬしは、正直、護りたくない」

「なにいってんだ、斎藤。そりゃ、男装の女子おなごにたいして失礼だろうが。けなげにも、男子だんしとしてふるまってんだ」

「左之、なにをズレたことを・・・。もっとも、わたしも、女子おなごとわかったとしても、そっとみ護ってやるがな」

「かっちゃん、局長のあんたがなにいってる?隊士に示しがつかん。女子おなごが、どれだけ男っぽくふるまおうが限界があるだろうが。もっとも、おれもそっちのほうがいいがな」


 ひどい・・・。


 みんな、タイムスリップしてくるのなら、若くてピチピチのギャルのほうがいいんだ・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ