表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

451/1255

What is that?

 目隠ししていながら、迷うことなく三人のまえに立ち、きっちりと一礼する双子。


 スイカ割りには、加えたくない人種である。


 原田が、威嚇っぽくタンポ槍をしごく。それから、三次元の世界でよくやるように、くるくるとまわす。

 長身の原田が、槍をまわしたり突いたりするのは、ひかえめにいってもド迫力である。


 タンポ槍が宙に軌跡を描き、空を裂く。


 そのビュオッビュオッという音が、いかにもって思った刹那、永倉と斎藤が動いた。


 永倉は腕を振り上げ上段から、斎藤は剣先を右爪先へ向けて下段から、それぞれ、間を詰める。詰めるといっても、神速の摺り足。一瞬にして、近間に入る。


 一対一さしではない。どちらも、狙うは俊春。


 そして、原田もまた・・・。


 継足でもって間を詰めると、そのままタンポ槍を繰りだす。それもまた、俊春への攻撃。


 原田の突き技は、タンポのない棒の先だけであれば、瓦五枚を突き割るだけの威力がある。タンポがついていても、当たれば痣になるほど。


 神速だけではなく、破壊力もある。


 永倉、原田、斎藤、新撰組の組長三人による連携技。それらが、まだ構えもせず立っている俊春を襲う。


「・・・」

「・・・」

「・・・」


 三人だけではない。この場にいる全員が、またしても三次元をみる。


 永倉と斎藤が放った一撃を紙一重でかわしたばかりか、真正面からくりだされた原田のタンポ槍にのっているのである。


 漫画でよくある、インドや中国の仙人っぽい恰好をした武術家や忍びがやるように、棒の上にのっている。


 一瞬である。一瞬であるが、俊春は、たしかにタンポ槍の上に立っていた。


 いったい、どういう原理なのか?そういった漫画をみるたびに、不思議でならなかったが、俊春までやらかすのか?


 きっと、異世界転生で空中浮遊もやってました、なんだろう。


「なんですか、あれ?」


 伊庭が、震える声できいてくる。


「ええ。あれが、かれらです」


 俊春は、タンポ槍を土台に、その上から後方宙返りをしてのける。その衝撃で、タンポ槍ごと原田の上半身がまえのめりになる。


 全員が、体勢を崩した原田より、宙を舞っている俊春へ視線を移す。後方宙返りは見事なもので、猫のごとく丸くなりつつ、空中で見事な放物線を描いている。


 刹那、かつんっという小気味よい音が響き、原田のタンポ槍が跳ね上がる。手許からはなれ、ながい槍もまた空中をゆっくりと舞う。


 俊冬である。まえのめりになり、上半身がらあきになった原田の掌から、タンポ槍を弾き飛ばしたのだ。


「ちっ」


 永倉の舌打ち。俊冬が、そのまま突っ込んでくる。ついさきほど、俊春へ上段から真向斬りをはなち、不発におわったばかり。すぐに体勢を整えているのはさすがであるが、それも俊冬にとってはなんということはない。


 軌跡すらみえぬ。正直、どこをどうやったのかはわからぬが、兎に角、永倉の掌から木刀が弾け飛ぶ。


「ちいっ」


 そして、ほぼ同時に斎藤の舌打ち。


 こちらも、下段からの逆袈裟が不発におわり、上段の構えをとろうとしているのはさすが。が、後方宙返りで床に着地後、すぐに間を詰めてきた俊春にとってはなんということはない。


 やはり、どこをどうやったのか。兎に角、上段に構える斎藤の掌から、木刀が弾け飛ぶ。


 子どもも大人も、しばし言葉もなく、この神業をただ呆然とみつめる。


「なんなのです、あれは?」


 伊庭が、再度尋ねてくる。


「あれが、最強の剣士ってやつだ」


 副長が、ぽつりと応じる。


 ってか、そんな場合じゃない。頼みの三人は、手首をおさえつつ、見物人たちのところにひいている。


 木刀や槍を打って弾き飛ばしたはずなのに、手首をおさえてる・・・。

 その衝撃のものすごさがよくわかる。



 みえぬはずなのに、双子はしっかりとこっちを向いている。

 小動物に狙いをさだめた獣の王のごとく、こちらへゆっくり歩をすすめる。


「ひえええっ、こっちにむかってきますよ」


 思わず、情けない声で訴えてしまう。


「ふんっ、きやがれってんだ。喰らわして・・・」


 副長のそんな悪役っぽい台詞も、途中で・・・。


「ひゃあああっ」


 と、飛んでくる。「ドラOンボール」の「孫O空」や「ピOコロ」みたいに飛んでくる。

 い、いや。実際は、それほど神速でむかってくるってことだが、兎に角、はやすぎてどうすればいいかわからない。


 パニックになってしまい、それでも体は覚えているらしく、木刀で頭部を護ろうと・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ