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局長チェーーーックからのホラー展開

「おおっみなっ、戻ってきていたのか。気がつかず申し訳ない。だれも怪我はなかったかね?」

 局長は、ちかくにいる者から順に肩をばんばん叩きだした。


「みてのとおり大丈夫だよ、近藤さん」

「転んだときに擦りむいただけだよ、局長」

「腹の一文字傷よりひでぇことにはならんさ、近藤さん」

「斬られただけですので無事です、局長」

 永倉、藤堂、原田、そして斎藤だ。


「斬られた?どこだ?どこを斬られたのだ?斎藤君、無事なわけはなかろう」

 ずいぶんと端折った報告に、局長は飛びあがらんばかりに驚いたようだ。


 おおきく分厚い掌で、斎藤の頭の先からばちばちと叩きまわしながらチェックしはじめる。


「局長、局長、斎藤君は大丈夫です。怪我はありません」

 井上が止めに入らなければ、斎藤のそこかしこが腫れあがったかもしれない。


「それよりも・・・」

「おお、そうであった。わたしは、そうだな。わたしは、どうもああいうことは苦手だ。いっそ斬り合いか殴り合いでもしてくれれば、と切に願ってしまう。坂井君、否、左之、頼むからどうにかしてくれ」

 局長の悲しげな表情かお


 おれまでどうにかせねば、と思ってしまう。


「くーん」

 なんと、相棒まで局長マジックにかかってしまった。とことこと足許にちかづくと、ウエッティな鼻先をつんつんと押しつける。

「おおおおっ、兼定っ!わたしを慰めてくれるのか」

 局長の顔が、ぱあっとあかるくなった。両膝を折る。おおきく分厚い両掌が天井へと突き上げられる。


 まずい。

 このままでは、「まったく悪意のない愛犬虐待」になってしまう。

 おれは、一歩踏みだしかけた。


「局長、参りましょう。われらがおさめまする」

 その俊冬の言葉とともに、相棒の体が宙に浮いた。


 俊春が、軽々と相棒を抱えたのである。

 相棒も、「・・・?飛んでるの?」っていうような表情かおになっている。


 俊春は局長の掌の届かぬ範囲まで後退すると、そこに相棒をおろした。


 そして、何事もなかったかのように奥へと入っていった。


 もちろん、おれたちも後を追う。


「みな、なにをみてもわたしにはなにもきくな」

 町中をあるいていたときには、出勤途中のサラリーマンも驚くほどの速さであるいていた局長が、いまは亀もびっくりするほどそのあゆみは遅い。


 いや、無意識のうちにそのあゆみを遅くしている。


 いろんな意味で、最強の局長をここまでびびらせるような「もの」が、あるいは「こと」が、あるというのか?


 おれだけでなく、最強の男の最強の部下たちも固唾を呑んでいる。


 そしてついに、おれたちは最大の目的を達するべく、そこへやってきた。


 四枚の障子の向こうにいるのだ。燭台の淡い光のなか、影は映っているが、それに動きはない。


 局長は、障子の引手にぶっとい指をかけたままフリーズしている。

 いや、深呼吸だ。


 緊張がいやでも増す。


 障子が開け放たれる。


 ついに、封印は解かれた。

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