なんてこった あんたらかよ!
「おお、服部君に毛内君ではないか」
おれが唖然とするなか、でてきたのは、なんとおねぇ派の二人だ。
「局長、ご無沙汰しております」
かっこいい無精髭の下で、服部が呟くようにいった。その隣で、毛内がLINEスタンプの白いうさぎのごとく「ペコリ」、と頭を下げている。
頭をあげた拍子に、丸眼鏡がずれた。それを指先でなおす毛内。
「主計、今宵、あの二人も死ぬのであろう?」
「ええ?」
おれに顔を寄せ、俊冬がそう囁いてきた。
どうしてそれを?とききかけたが、俊冬は男前の顔に意味深な笑みを浮かべた。
「局長、わたしたちはこれで」
服部がいっていた。
「うまくやりますよ。伝えたらすぐに消えます」
そして、毛内だ。
「すまぬな、二人とも」
局長は、藤堂を解放した。それから、二人の肩をばんばんと叩いた。
「こらえてくれ。かようなことになり、誠に申し訳ないと思っている」
「いいえ、もはや先生の思想はどこであっても取り入れてもらえるものではありますまい。世の中は、さらに大きな時流に呑み込まれてしまっています」
白いうさぎさんは、指先で丸眼鏡を弄びながらいった。
「これからどうするつもりなのかね?なんなら・・・」
「局長、そのお気持ちだけで。金子をいただきました。わたしは、故郷に戻り、道場でも開こうかと」
服部の故郷・・・。
たしか播州赤穂だっただろうか。京からさほど遠くない。
「わたしの故郷は遠いですが、そうですね、わたしも一度故郷に戻り、それから考えましょう。塾でもできればいいな、と」
白いうさぎさんは、津軽出身だったか・・・。たしかに遠い。
「服部さん、毛内さん、お気をつけて」
「あぁ藤堂君、きみもな。縁があったらまた会おう」
「みなさんもお元気で。兼定、おまえもな」
服部、ついで白いうさぎさんは相棒の頭を撫で、それから裏木戸からでていった。
いったいどうなっているのか・・・。おれはいまだわからない。
「おいおい、いったいどうなって・・・」
永倉がいいかけたところに、局長はばんと響き渡るほどの力をこめ、永倉の両肩にでかい両掌を置いた。
「新八、気にするな」
「ああ?気にするなっていわれても、気になるだろうが、近藤さん?平助は兎も角、なにゆえ服部と毛内が?」
「二人だけではないぞ、がむしん」
その一言とともに、さらに家のなかからだれかがでてきた。
「はああああ?阿部と内海ぃ?」
永倉の大音声が耳に痛い。が、おれも怒鳴りたいのはおなじだ。
なななんと、でてきたのは鳥撃ちにいったはずの「チョイ悪親父」こと阿部と、存在感薄薄の内海だったのだ。
いや、二人だけではなかった。その後ろからもう一人・・・。
さらに、さらにでてきたのである。