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エロとなんとか系

 メンバーは、局長、井上、永倉、双子、そして、おれと相棒だ。 


「おつぎはいったい、なにをしでかすつもりなのやら・・・」

 まえをゆく井上が局長にいっていた。


 副長は、井上にはこれまでのことをすべて話しているようだ。まぁ当然か。井上は、副長にとってはある意味、超絶信頼のできる兄弟子であり、父親的存在のようなものだろう。


 もっとも、井上はそこまでの年齢としではない。そういう感覚、という意味だ。


「そう申すな、源さん。歳がなんやかんやと一人奔走するのは、多摩にいたころからであろう?」

 局長のあるく速度は半端ない。めちゃくちゃはやい。

 まるで、出勤時のサラリーマンだ。


「そうだ、総司が勝負を愉しみにしている。ちかごろ、床から起き上がっていることもおおくてな」

 局長が突然立ち止まった。急停止、という表現がぴったりの止まり方だ。

 すぐ後ろをあるいていた俊春は、まるで局長が立ち止まることがわかっていたかのように体を開きながら歩をとめた。その隣の俊冬も同様だ。

 が、双子につづくおれとその隣の永倉にはわからなかった。


 おれはすぐまえの俊冬にではなく、一番まえをあるいていた局長のおおきな背にどんとぶつかってしまった。

 永倉は井上があるきつづけていたので、難なく歩を止めることができたようだ。


「おぉ大事ないか、主計?」

 局長のえらのはった顔が、気の毒そうに歪んでいるのが月明かりの下みてとれた。

「すみません」

 ぶつけた鼻を指先でごしごしこすりながら、おれはにやにや笑ってしまった。

 他意はない。ただ照れ臭かっただけだ。


「エロかっこ悪い、と申しておる」

「Unbelievable!」

 今回は、今回はおれも備えていた。


 人間ひとは学習する。それをいうなら、犬だってそうかもしれないが。


「エロかっこ悪い?なんでエロがつくんだよ、相棒?おれのどこがエロっていうんだ、ええ?」

 おれの左脚もとにいる相棒に、思わず問い質していた。


「病は気から、と申します。沖田殿もこれで前向きな気持ちになってくれれば・・・」

 わが道をゆく俊冬は、局長をうながしさっさとあるきはじめている。


「兄上、エロってなんでしょう?」

 そして、俊春。

「おい主計、エロってなんだ?」

 こちらは永倉。


「エロですか?身近でたとえれば、副長や原田先生でしょうか?ああ、おねぇもそうですね」

「おお、そっちか」

 永倉は喜んだ。おれたちもあるきだす。


 永倉もまた、未来の言葉に興味津々なのだ。


 新選組で一番か二番の剣士であり、大正まで自分なりの武士道を貫きつづける「がむしん」が、「おねぇ」とか「なんとか系」とかをつかいこなしている。


 はたして、想像できるだろうか・・・。

 

「それで、歳は無事なのか?」

 局長の言葉に、おれは局長もこの一件に絡んでいることをしった。


「なんだって近藤さん?土方さんになにかあったのか?」

永倉が耳ざとくききつけた。

「新八、声が高い」

すかさず、井上のだめだしがでた。


井上もまたこの一件に関して、いまではしっているのだと確信した。

 夕刻には、利三郎とともに副長を探していた。それ以降にきいたに違いない。


「いったいなんだってんだよ、近藤さん?源さんもしっているのなら教えてくれたっていいだろう?」

 永倉のでかい囁き声が通りに響き渡ってゆく。

 先をあるく局長、井上、双子に、執拗に喰い下がっている。


 がんばれ、永倉。


 おれは、相棒の綱を握らぬほうの掌で拳をつくり、心中で永倉に声援を送った。


「落ち着いてください、永倉先生。じきにつきます。じきにわかりますゆえ」

 俊冬のいたって穏やかな囁き声もまた、流れてゆく。


 いまの言葉だと、無事だと解釈していいのだろうか・・・。


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